見出し画像

遺影

去年、50歳を記念してプロに写真を撮ってもらった。
一寸先は闇。
自分の葬式の時に使う遺影になればいいやと、きちんとメイクして撮影してもらうことにした。
ヘアメイクの担当者と、どんなイメージで撮りたいのか、色合いはどうするか15分ほど打ち合わせた。
普段と違う自分を演出しては?ということで、セクシーでワイルドな印象で衣装は赤と黒をお願いした。

メイクブースに座ってびっくり!
ブラシやシャドウや口紅がずらりと並ぶ。
にやけながらすっぴんで記念にパチリ

こんな地味な顔がどう変わるのか?

髪をカーラーで巻いてから化粧スタート。色を重ね、マスカラを2枚がさねして普段より目が1.5倍になっていく。
眉毛もしっかり描くので「やり過ぎ?」と思ったがカメラに映るにはこれぐらいハッキリさせるべきとのこと。

メイクが終わるとアップヘアにセットしてゆく。逆毛を立て、みるみるワイルドに。

黒い布と赤黒の極太リボンを上半身に巻きつけてピンで留めて、撮影のためだけのドレスを作る。

まな板の鯉とはこのことだ。
されるがまま、どんどん自分が変わってゆく。気持ちも上がってきて鏡の中の見知らぬ自分をポーーっと見つめる。

撮影してくれるカメラマンは、言葉巧みにポーズを要求する。
顔の角度、身体の向き、手の添え方。表情や目線まで言われるがまま。

合計12ポーズ撮影して、PC画像を見ながら自分で気に入ったものだけプリント注文をする。

全部頼むとかなりの金額になるので2枚に絞った。
正面と寝てるもの。

正面

完全に別人だ。
これを遺影にしたら、参列者が間違ったと思って帰ってしまう。使えない。

しかし、化粧の力は恐ろしい。
画像処理は一切していないそうだが撮影技術も凄い。
光の当て方だけでシワもシミも吹っ飛ばされている。

明日でこの世が終わるなら、誰からも文句は受け付けない方向で、もう一枚の寝てる写真「涅槃のポーズ」を自分の遺影にしてしまおうと思う。

もう1度言う。
文句は受け付けない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?