父が死んだ。

癌の転移が見つかって、いろんなところに溜まった水を抜くと聞いていたけど
結局そのまま緩和ケアに移って、誰も思ってなかったくらい長くお世話になって
案外元気じゃん、と思っていた矢先だった。

その日は出社の予定だったけど、天気も悪くて調子があがらずテレワーク。
そろそろ終わってご飯でも行こうか、と話してたら母から着信があって
「あー、ようやくきたか」
と、ちょっと思った。

毎週末行ってたのに、その直前の週末は台風で行くのをやめていて
結局そういうタイミングで行っちゃうんだよな、と今までのお別れをついでに思い出した。

ゆっくり最期を迎えるところなんでしょ、くらいのイメージだった緩和ケアは
どこまでも特別扱いで、人の最期をただ待つのが、思ってたよりも精神的にしんどい場所だった。
母は毎日通っていて、もはや情だと笑ってたけど、だんだん疲れてきてるよなと感じていたし、常に電話を気にしている自分もやっぱり疲れてた。

うちら来るたびに格好つけて無理してたよね、とか
片付けちゃうともう終わりって言ってるみたいで進まなくてさ、とか
悲しいっていうより寂しいよね、とか
愛してるとか最期に言わなかったんだよねあの人、とか
今まで話したかったけどなんとなく喋ってなかったことを母と喋りながら、いろんな支度を緩和ケア病棟の待合室で待った。

準備期間が長かったから、泣き喚くとかめちゃめちゃメンタルやられるってこともないんだけど
上司と相談して次の日だけ出社して、その後１週間休むことにした。

ずっとやりたかった衣替えをして、ついでに冠婚葬祭用のバッグをだす。
いつかやろうとしてた雑誌の整理をして、同じ部屋にあるブラックフォーマル用のワンピースを用意する。
思いのほかいっぱいでたゴミを片付けながら、昔からの友人にLINEで報告する。

特別なことではあるけど、これも生活の一部だなと思いながら
いっぱい寝てあったかいご飯食べて、いつも通りを維持してるところ。

病室入るといつものクシャって顔で笑うのとか
帰るときにはいつまでも手振ってたところとか
最後の最後までお父さんだったな。

どういう感じだったのか、なんとなくこっちの方が客観的に残せるなと思って
記録用の日記。