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棺桶営業

 眠りたいがドローンのアラームが鳴っている。騒音はひどいが長く住むと慣れた。営業二週間目。狭いので仰向きながら栄養ゼリーを流し込む。

 ドローンの改善と法整備により、誰でも超安価で搭乗用機体を買えるようになった。車以下だからカネがない奴はドローンを買う。安い会社ではドローン営業が当たり前になった。通称が棺桶だが、これはドローン内で餓死遺体が発見されたことに由来する。

 と、ドローンが衝撃を検知。他機衝突。嘘だろ、保険どうすんだよ。

 パネルにかじりついて前方ドローンと通信する。ケチって旧式を買ったのだ。ウチの機械が壊れていないことを祈るしかない。画面の向こうには通信手がいた。何か叫んでいるが聞こえない。

 と、画面がノイズに埋め尽くされて消えた。代わりにアニメキャラとともに『純粋悪夢』の文字。

 あ、これウイルスだ。ニュースでやってた。

 ノイズはこっちの機械にも伝搬し、ドローンの動力と高度が落ちる。

【続く】

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