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薔薇戦争の終焉


さて、エドワード四世の男児二人を塔に押し込んで葬って、リチャード三世としては漸く我が王位が安泰…と、思いきや割とそうではない。
力を持たぬ少年王より、力ある王位継承権者の方が脅威だ…!ということは往々にしてある。



・王母 マーガレット

力ある王位継承権者の名前、其れは、リッチモンド伯ヘンリー・テューダー。
母、マーガレット・ボーフォートが、ランカスター家の傍系であり、母を通じてランカスター家の血を継いでいる。

マーガレット・ボーフォート


ただーし、このボーフォート家と謂うお家なんだが…、エドワード三世の三男、ジョン・オブ・ゴーントと、その妻キャサリン・スウィンフォードに由来するんだが…。
この、ジョン・オブ・ゴーントはキャサリンとの前に二人、妻がいてキャサリンは三番目の妻にあたる(キャサリン自身も二度目の結婚。)
ジョンとキャサリンが夫婦として過ごしたのは3年ほどで、四人の子供はキャサリンがジョンの愛人だったころに授かった子供だった非嫡出子…と謂うわけなんである。
つまり、ボーフォート家の興りはそもそもが、「非嫡出子」ということになるわけだ。ただ、ジョンとキャサリンの結婚によって、四人の子供達も「嫡出子」となることは認められたわけなんであるがヘンリー四世により「後々に王位継承争いが起きても困るんで、王位継承権は認めません」と、謂うことが確認されている。
つまり、ボーフォート家の血により、王位継承権を主張することはなかなか厳しいぞって謂う認識をお願いしたい。更に、母、マーガレットから、即ち女系であるが故に、更にヘンリーの王位継承権には???が付く。

さて、マーガレット自身も、息子ヘンリーの王位継承権を主張するには自分の血筋だけでは弱いぞということは理解していたのだろう。ヘンリーの王位継承権をゆるぎないものにしなければならない。
彼女は、息子ヘンリーを国王にするため、とある女性に近付くことに成功する。
その女性の名は、「エリザベス・ウッドヴィル」。リチャード三世に塔に押し込められた、二人の塔の子供達。すなわちエドワード五世とヨーク公リチャードの母親である。

エリザベス・ウッドヴィル


彼女の手元には、エリザベスと謂う名前の女子がいた。エドワード、リチャード兄弟の姉に当たる娘だ。
エリザベス・ウッドウィルは、ヘンリー・テューダーと、娘エリザベス・オブ・ヨークを結婚させることに同意する。
エリザベス・オブ・ヨーク自身も弟達が全員亡くなっており、彼女自身が長女であるため、強力な王位継承権を有していた。

エリザベス・オブ・ヨーク。ヨーク家の白いバラを持っている。


更に、上記の事情により、ヘンリー七世自身は本来であれば王位継承権を持たず、「簒奪者」であるという見解もあるが、エリザベス・オブ・ヨークは正真正銘、正統な王位継承権を持つので、ヘンリー七世以降の王は、彼女の血筋であるために、その王位継承権に疑問をさしはさむ余地はなくなっている。
さあ、舞台は整った。
次は、リチャード三世を玉座から引きずり降ろさなければならない…!!

・ボズワースの闘い

そして、運命の決戦は1485年8月22日に開かれる。
ヘンリー・テューダー軍は5000、リチャード三世軍は8000。
数の上では、リチャード三世の方が有利である。ただし、将校全員真面目に戦えばのお話だ。
リチャード三世側に裏切り者が3人、潜んでいたんである。
まずは、ノーサンバーランド伯ヘンリー・パーシー。彼は自分の軍隊を動かそうとしなかった。そして、スタンリー兄弟。兄のウィリアム・スタンリー卿と弟のトマス・スタンリー卿。弟の方の嫁はマーガレット・ボーフォート。つまり、ヘンリー・テューダーは継子にあたる。
抑々なんでそんな人が、リチャード三世側に居るのってな話だが、この兄弟は、離反を恐れたリチャード三世により、お兄ちゃんのジョージを人質に取られてたんで、うかつに寝返ることが出来ない状態だったんである。…と、謂うわけで、参戦こそしたものの積極的に参戦するでもなく最終的にはヘンリーの側に寝返っている。
うーん…、この構図って、日本でも見かけたような…、関がh……。

そして、ついにリチャードの命運が尽きる時が訪れる……。
雌雄決した後にリチャードに出来るのは、捨て身の攻撃をかけることだけだ。リチャードは少数の兵士を率いてヘンリー軍の戦線まで切り込んだ。狙いはヘンリー・テューダーただ一人!!
ただ、無念なり無念なり。ヘンリーの旗手迄は討つことが出来たが、ヘンリーまで達することは出来ず、兵士たちに包囲されて捕まった。
そして馬から引きずり降ろされ、当時の慣習により裸にされ、荷馬に乗せられてレスターまで運ばれて裸のまま晒された。

リチャード三世の墓碑

この戦いの有名な逸話がある

戦いの最中、リチャードの王冠が泥の中へと転がり落ちた。それはのちに茂みにつるされた状態で発見されたが、その前にスタンリー卿が拾い上げ、ヘンリー・テューダーの頭に厳かに置いたと謂われている。

ボズワースの戦いの逸話

こうして、リチャード三世の死により、薔薇戦争は終結した。
リチャード三世は戦いで命を落とした最後のイングランド国王であり、ヘンリー七世は戦いで王位を得た最後のイングランド国王になる。
そして、330年続いたプランタジネット朝は終わりを告げ、テューダー朝が幕を開ける……

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