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小説を書きたい人はこれからどうする?実際にChatGPTと40000文字の小説を書いてみた

AIが物語を書く時代になったとき「ただの趣味」で小説を書く人はどうなるのか?

ChatGPTに最新バージョン「GPT-4」が搭載されてから二週間。その高い言語能力を話題になり、プロが書いたような綺麗な小説原稿も生成出来るようになりました。「作家は失業!」とか「これからは読者個人個人の嗜好に合わせて生成された物語を楽しむ時代に!」など、刺激的な未来も語られるようになりました。読者側の視点ですと、確かにそういう未来もあるかもしれません。

だけど、こうした議論の中で、一つ置いて行かれている存在があると思ったんです。それは、「小説を書きたい人」という存在です。

別にプロとしてでは無く、趣味として小説を書く人はたくさんいます。小説を書きたいと思っているけどまだ踏み出せていない人も含めれば、日本には何百万人といるのではないでしょうか。そこには私も含まれます。

そもそも趣味として書いているのだから、失業とかそういう観点はそもそも無縁です。私の場合は書きたいから書いているのであり、読者がゼロであろうと、書き上げた時点で目的達成であり満足しています。

趣味として小説を書く人は、このAIの荒波にどう付き合っていけば良いのか。考えるよりも自分で試してみた方が早いと思って、AIに手伝ってもらいながら二次創作の小説を書いてみることにしました。それが、以下の小説です。ChatGPTに構成を手伝ってもらったとは言え、本文44000文字はすべて私が手打ちしているので、AI生成のタグは付けていません。

二次創作を書いた理由

なぜ二次創作を書いたのかですが、それは「これからは読者個人個人の嗜好に合わせて生成された物語を楽しむ時代に」といった議論を聞いたとき、最初に読者が望むのは二次創作になるだろうと思ったからです。

AIが生成した物語が一般的になり、読者が「AI君が作ってくれた話、昨日の展開が激アツだったからさ、ああいうのもっと読みたいよ」とオーダーするようになれば、二次創作は減るような気がします。

しかし、その段階に行くまでは、読者がAIに生成してほしい物語は、完結した既存作品の続きとか、有り得たかもしれないワンシーンとか、学園パロディとか、つまり二次創作になるんじゃないかな…と。読者が様々な展開を求める基盤となる「名作」を、“まだ”AIが産み出していないからです。

なので、直近の「書くことそのものが趣味」の人がAIと競合するのは二次創作小説だと思ったので、そこをやってみることにしました。

AIに何を手伝ってもらえば良いのか

今は「プロンプトエンジニアリング」というのが流行っており、生成AIにこんな指示を出すとこんなに高いクオリティの出力が得られます、というノウハウ共有が流行っています。小説のジャンルでもそれは同じで、生成された小説を投稿サイトで発表している人もすでにたくさんいます。ちょっと古い話(GPT-2の頃)ですが、AIに書かせた小説が星新一賞に入選したニュースもありました。

つまり、プロンプトを十分に練りつつ試行錯誤すれば、面白くて読みやすい小説も生成可能というわけです。では、私のように小説を書きたいだけの人も、AIに生成してもらえば良いのでしょうか?

そうじゃないんです。そもそも「書くこと」が目的なんですから、生成させるのはあんまり楽しくない。すでに現時点で、GPT-4のほうが私より文章は上手いです。AIはもっともっと上手くなるでしょう。でも、上手いかどうかじゃないんです。下手くそだろうと何だろうと、「私が書きたい」のが出発点なのですから。

そこで、自分が譲りたくないところと、AIに手伝ってもらいたいところを分離します。私の書く文章は、小説だろうとブログ記事だろうと、以下の特徴があります。

・ディテールばかり書きたがる。小説なら、キャラ同士の会話や設定の説明は書きまくりたい(譲りたくない)
・一方で、全体の構成を考えるのはとても苦手で、できればやりたくないと思っている(手伝ってもらえるなら誰かに手伝ってほしい)

読者から見ればどうでもいいところにばっかりこだわり、全体としてまとめられない。まあよくいる下手くそ、というヤツです。趣味でやってるのだからあまり気にしていませんでしたが、せっかくなので、自分の譲りたくないことは譲らず、苦手な構成部分を手伝ってもらうことにしました。

AIに構成を頼んだ手順

まずは、何を書きたいのかを考えます。この時点では構成なんて考えず、自分の妄想だけをおりゃぁっと書き殴ります。私は三角関係のラブコメが大好きなので、思いつくまま妄想します。ここで恥ずかしがってはいけません。

つづいて、これをプロットの形にしてもらいます。今回は、ハリウッド脚本術の定番である「SAVE THE CATの法則」のビートシート形式で出力してもらいました。

ChatGPT ProのGPT-4に出した指示は以下です。

以下の設定とアイデアをもとに、男性の先生、女性のミカ、女性のユウカによる三角関係を描いたコメディドラマとして、SAVE THE CAT方式のビートシートにまとめてください。最終的に3万文字程度の小説にまとめる想定です。
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ミカは、トリニティ総合学園という学校で、ティーパーティーと呼ばれる最高意思決定機関で代表を務めるお嬢様です。誰からも美人といわれる美貌を誇り、きゃしゃな体つきに反して、壁を一撃で破壊するほどの腕力を持ちます。頭もよく、話し方には品があり、たくさんの人に慕われるだけの人物です。ただ、プライドが高く、感情に流されやすく、先生に精神的に依存しています。敵と認めた人間には容赦しない冷酷さも備えています。先生が「ミカは私のお姫様」と言われたことを大切な思い出に思っています。
ユウカは、ミレニアムサイエンススクールという学校で、セミナーと呼ばれる生徒会に相当する組織で会計を務めています。計算が早く、数学が得意です。先生に対して恋心を抱いていますが、素直になれない性格です。おせっかいで、よく先生の仕事を手伝っています。基本的には人にやさしく情にもろく、頼みを断れない苦労人です。ちなみにミカとはほとんど面識がありません。
冒頭の展開は以下のようなイメージです。
先生のオフィスに仕事を手伝いに来たユウカは、ミカがやたらと先生にべたべたしていることに驚きます。先生への恋心を素直に口に出せないユウカは、風紀を乱すなどの理由で先生とミカを離そうとします。ところが、ミカは「私は先生のお姫様だもんね~」と言い張り、ユウカを挑発します。ユウカは思わず「はぁ!?」と切り返し、お互いにどちらが先生の手伝うのにふさわしい女性であるかを口論し始めます。

ChatGPT Proへの質問

キモい妄想ですが、AI相手だから恥ずかしくありません(笑)。すると、ChatGPT(GPT-4)は以下の様にまとめてくれました。長かったので実際は2回の回答に分かれています。15のパートになりました。


Title: A Whirlwind of Love and Rivalry

  1. Opening Image (1%): ミカは、トリニティ総合学園で、ティーパーティーで代表を務めるお嬢様としての日常を過ごしています。

  2. Theme Stated (5%): ミカとユウカの間に、先生への想いが生まれ、恋愛と友情の葛藤が描かれることが予感されます。

  3. Set-Up (1-10%): ユウカは、ミレニアムサイエンススクールのセミナーで会計を務める地味だが頼りになる存在。先生への恋心を抱いているが素直になれない。

  4. Catalyst (12%): ユウカが先生のオフィスに仕事を手伝いに来たところ、ミカが先生と親密に接しているのを目撃。

  5. Debate (12-25%): ユウカは、風紀を乱すという理由でミカと先生を引き離そうとするが、ミカは先生のお姫様であることを主張し、お互いにどちらが先生にふさわしいか口論になる。

  6. Break into Two (25%): ミカとユウカは、先生の心を勝ち取るためにそれぞれアプローチを始める。

  7. B Story (30%): ミカとユウカは互いにライバル意識を抱きつつも、学園内での様々な問題に共闘し、次第に友情が芽生える。

  8. Fun and Games (30-55%): ミカとユウカは先生へのアプローチを繰り広げる一方で、互いの強みを活かし、学園内での様々な問題を解決していく。

  9. Midpoint (50%): ミカとユウカは先生に自分たちの想いを告白し、先生はどちらも大切な存在だと言って決着を先送りにする。

  10. Bad Guys Close In (55-75%): ミカとユウカは先生の決断を待ち焦がれる中、学園内の敵対勢力が動き出し、彼女たちの友情にも影響が出始める。

  11. All Is Lost (75%): ミカとユウカは、敵対勢力の陰謀によって先生が危機に陥ることを知り、彼を救うために協力する

  12. Dark Night of the Soul (75-85%): ミカとユウカは、先生を救うために協力しながらも、互いの想いが交差し、葛藤が深まります。しかし、彼女たちは友情の大切さを実感し、互いに協力して先生を救い出すことを決意します。

  13. Break into Three (85%): ミカとユウカは、お互いの特技と知恵を組み合わせて敵対勢力に立ち向かい、見事先生を救出することに成功します。

  14. Finale (85-99%): 先生を救出した後、ミカとユウカは互いの想いを再び告白します。しかし、先生はミカとユウカの友情が深まったことを見て、彼女たちに自分の気持ちを明かさず、彼女たちの友情を大切にするように促します。

  15. Final Image (100%): ミカとユウカは、先生との三角関係を受け入れ、お互いの友情を大切にしながら、トリニティ総合学園とミレニアムサイエンススクールでの学園生活を楽しむ姿が描かれます。彼女たちは先生のためにもお互いに力を合わせ、学園の問題に立ち向かっていくことを誓います。三人は、恋愛と友情の狭間で揺れ動くが、絆を深めていくことで新たな物語が始まることを予感させます。


良い感じですね。少なくとも私が考えるよりもずっと面白いです。

ただ、これだけだと書き始めるには心許ないので、各パートのあらすじを作ってもらうことにしました。本当は小説としてのラフ書きを頼みたかったのですが、プロンプト力が足りなかったのか何度も試行してもあらすじのような文章しか作ってくれなかったので、諦めて、あらすじをつくってもらうことにしました。

ありがとうございます。すごくいいですね! 小説として書き始めようと思います。「1.Opening Image (1%)」の小説としての原稿を書いてみてください

ChatGPT Proへの質問

すると、以下の様なあらすじを作ってくれました。

Opening Image (1%):
トリニティ総合学園の広大な敷地には、緑豊かな庭園が広がり、時折高貴な馬が悠然と歩く姿が見られる。校舎の窓からは、楽し気な笑い声が聞こえてくる。そんな風光明媚な場所で、ミカは学園の生徒たちを取り仕切る、ティーパーティーの代表としての日々を送っていた。
美しい桜の木の下で、ミカは金髪碧眼の美貌と優雅な佇まいで周囲の視線を引きつけている。彼女の品のある話し方は、聞く者を魅了し、多くの生徒たちが慕う存在となっていた。だが、その美しい外見に隠された力は、壁を一撃で破壊するほどのものであった。
ミカは、自らが先生から「ミカは私のお姫様」と言われたことを胸に秘め、彼に対する淡い恋心を抱いていた。その想いは、彼女のプライドが高く、感情に流されやすい性格と相まって、先生に対する依存心を強めていた。
そんなミカにとって、先生との関係は大切なものであり、彼と共に学園を盛り立てることが彼女の喜びであった。しかし、その美しい日常に、やがて新たな波風が立ち上ることとなる。

ChatGPT Proの回答

実際に私が書いた本文はこんな感じです。

トリニティ総合学園の広大な敷地は、虚妄のサンクトゥム攻略戦の傷跡があちこちに残っていたが、かつての優雅な庭園の雰囲気はすっかり戻ってきたように思う。ミカはテラス席で紅茶を飲みながら、タブレットに表示された復興計画のドキュメントを眺めていた。

トリニティ総合学園の最高意思決定機関「ティーパーティー」の3人いる代表という役職は解任されているものの、暫定的にパテル分派リーダーとしての任は続行されていたので、ミカが考えなくてはいけないことがまだまだ多い。

「難しいことは苦手なのになぁ。こういうのはナギちゃんとセイアちゃんのほうが…」

実は心底面倒だったのだが、ミカのあまりにも可憐な姿から、周囲からは優雅なティータイムに見えているようだった。「トリニティの魔女が偉そうに」という声や「ミカ様やっぱりお美しい…」といろいろ聞こえてくる気がする。

自分の起こした罪、残された責任。理屈よりも感情に流されやすいミカとしては、正直なところ居心地の悪さもあった。だが、そんな彼女を支えていたのは、先生の一言。

「私のお姫様になにしてるの!」

今でもこの一言を思い出すだけで顔が赤くなってしまう。「私を信じてくれる先生がいる」ということが今のミカの支えになっていた。

「今日はシャーレの当番じゃないけど、先生のところ行っちゃおうかな」

少し微笑んでミカは立ち上がった。今日、シャーレのオフィスに足を運ぶことが意外な運命の幕開けとなることは、まだミカは知らなかった。

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19575501

他のパートについても、それぞれ同様に、あらすじを考えてもらいました。たまに同じことを二度描いたり、元の作品の設定とは離れたことを提示したりするもするのですが、そういうのは無視すれば良いので、とりあえず出力させます。

続いて、各パートの目安の文字数を出してもらいます。構成が苦手な人間にとって、各パートをどれくらいのボリュームにすれば良いのかはいつも手探りだったので、ここもAIの力を借りることにしました。

全体で35000文字くらいにしたいのですが、もう一度各パートの文字数を考えてください

ChatGPT Proへの質問

全体で35,000文字を目指す場合、各パートの適切な文字数は以下の通りです。
Title: A Whirlwind of Love and Rivalry - タイトル自体に文字数制限はありませんが、短く印象的なものが望ましいです。
Opening Image (1%): 約300-500文字
Theme Stated (5%): 約300-500文字
Set-Up (1-10%): 約2,500-3,500文字
Catalyst (12%): 約500-700文字
Debate (12-25%): 約3,500-5,000文字
Break into Two (25%): 約500-700文字
B Story (30%): 約2,500-3,500文字
Fun and Games (30-55%): 約6,000-7,500文字
Midpoint (50%): 約500-700文字
Bad Guys Close In (55-75%): 約6,000-7,500文字
All Is Lost (75%): 約500-700文字
Dark Night of the Soul (75-85%): 約3,000-4,000文字
Break into Three (85%): 約500-700文字
Finale (85-99%): 約5,000-6,500文字
Final Image (100%): 約300-500文字
合計: 約35,000文字程度で、バランスよく構成された物語になると思われます。ただし、これはあくまで目安であり、物語の内容やテンポによって調整が必要です。

ChatGPT Proからの回答

基本的に提示された構成とあらすじの通りに、文字数を守って書きました。どうしてもズレた部分はありますが、あくまでもAIには助けてもらっているだけなので、目をつぶります。

こうしてできたのが、冒頭でご紹介した二次創作小説です。もう一度リンクを貼ります。

せっかくなので、何かの参考になるかもしれないので、私とChatGPT Pro(GPT-4)とのやりとりのログも貼っておきます。どんなやりとりをしたのか、そして私がどの程度AIの作った構成を守ったのかなどがわかると思います。

出来上がった二次創作小説を読んだ方がどう評価されるのかはわかりませんが、構成が上手かったらAIのおかげ、文章が拙かったら私の実力不足です。こういうのが可視化されるのは怖いですね!

ちなみに、ChatGPTとのやりとりを始めて、実際に完成するまではちょうど一週間でした。AIが自動で物語を生成する時代に対抗しないといけないと思ったので、早く書き上げることが目標でした。3~4万文字なら、本当は2日くらいで書き上げたいところです。

AIは格差を広げるかもしれないが、上達のきっかけにもなるかもしれない

出来上がった小説を読んでみて思ったのは、構成がなまじそれっぽいのに、肝心の表現力が乏しいのですごくアンバランスだな、と感じました。一言で言えば、下手くそはより下手くそであることが際立つという悲しい現実です。格差が広がる感じがします。

私は過去に超短編小説を公開したのですが、文章も拙ければ構成も拙かったので、逆に「素人が書いた下手な小説」としてまとまりがあったようにも感じます。以下は個人的には好きな自作です。

ただ、今回のようにAIに苦手な部分をサポートしてもらったことで、自分の弱点も見やすくなりました。

まずは構成に見合う文章力の向上です。私の癖として「何を書きたいか」は迷いがない一方、「どう書くか」には無頓着なところがあります。情景とか情感とか、映像的だったり詩的だったりといった言葉選びとか、そういうのが苦手なのだと気づくことが出来ました。

苦手なことに気づけたのなら、そこを練習して強化していけば良い。

きっと私が上達する速度よりもAIが名文家になるスピードの方が早いでしょう。でも、そもそものモチベーションが「自分が書きたいだけ」なので、AIのほうが上手いことは大した問題ではない。むしろAIに文章を添削してもらいながら、自分の表現力を高めていくように使っていけたら良いなと思いました。

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