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#イールの千字百本ノック 51日目 ローソン万歳!

 このなんの変哲もないローソンは、わたしにとって、きっと、一生忘れられない場所になる。

 親元を離れ、初めてのひとり暮らし。その頃住んでいた大学のシェアハウス。その近くには100円ローソンがあった。

 わたしはその頃ひどいうつ病を患っていた。街が寝静まった深夜に、何日も着まわしたパジャマを背負って、100ローへと向かう。100円のクリームパンと、100円のメロンソーダを買って、それで1日の食事を済ませる。当然、体重は落ちる一方で、48kgしかない時もあった。今はというと、50kg台後半である。大体10kgの増量である。

 むろん体調が良くなったといえば聞こえはいいのだが、丸みを帯びた輪郭と、醜いおじさんのように太ったビール腹は、とても恥ずかしい。友人たちと銭湯に行った時などは、もう、全身から恥が出てくる。痩せたいものである。

 体調が良くなったのは、本物のひとり暮らしを始めたからと、薬が効いてきたからであった。

 前述の通り、わたしの初ひとり暮らしは、シェアハウスだ。当然他人との共同生活を強いられる。その頃とても攻撃的で、今では考えられないような加害行為を、息を吐くようにこなしていたわたしは、共同生活に耐えられるはずもなかった。シェアハウス暮らしが1年を迎えた頃、隣人との対立が限界を突破し、アパート暮らしを決意した。

 そうして引っ越した先にも、またローソンがあった。しかも、徒歩3分の好立地に、である。わたしはこの店に、来る日も来る日も通い詰めている。講義前に、講義後に、夕食を買いに、朝食を買いにと、生活の全てをローソンに依存する状態だ。

 しかも、このローソンには、灰皿があった。広い駐車場があった。直射日光が降り注ぐ夏も、身が痛いほどの冬も、友人たちと共に、このローソンで語り合った。まるで田舎の中学生みたいだなと、申し訳ない気持ちにはなるのだが、これが気持ちいい。なかなかやめられないのである。

 コンビニで駄弁ることの利点はいくつかある。まずは、24時間使えることである。友人たちの各々バラバラな生活習慣が一致した時に、すぐ集まれる。そして、コンビニには食べ物もたばこも売っている。話せば喉も乾くし、生きていれば腹も空く。しかしコンビニがあれば、欲望をすぐに満たせるのだ。この利点、プライドさえ捨ててしまえば、カフェよりも快適なこと極まりないのである。

 そういうわけで、ローソンには、これまでも、これからもお世話になる。

 だから、このローソンは、わたしの恩人なのだ。

 いつもありがとう、稲葉さん。

 ローソン万歳!(1063字)

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