人形劇『イナンナの冥界下り』#1試演会

人形劇『イナンナの冥界下り』の第一回試演会を行いました。その様子のレポートです。

古代メソポタミアの神話である『イナンナの冥界下り』を、アーツカウンシル東京の長期助成を得て2015年から3年間上演して来ました。その最後は、イギリスのロンドン大学とリトアニアの国立ドラマシアターでの上演でした。

その詳細はこちらにありますので、ごらんください

3年間の長期助成も終わり、『イナンナの冥界下り』は新しいフェイズに入りました。ひとつは人間が演じるものから、人形が演じるものへの変化、そしてもうひとつは「プロジェクトちゃら」という新しいプロジェクトを組み込む形での上演になりました(「プロジェクトちゃら」に関しては、まだまだコンセプトを固めている段階なので、詳細はいつか~)。

この形での初演は8月19日(日)に凱風館(内田樹さんの道場:神戸)で行います。

が、それまでに東京で何度か試演会を行います。その第一回の試演会が2018年4月7日に某マンションの集会室で開かれました。そのときの模様をレポートします(といっても僕も出演者でしたが…)。

※note、使い始めたばかりで、映像を上手に埋め込めませんでした。お見苦しさ、ご寛恕を。

▼開演

会場はふつうのマンションの集会室です。8畳の部屋に通された30名ほどのお客さん。「え、こんなところで本当に上演が?」と半信半疑だったに違いありません(笑)。

やがて客席(というかお客さんがいる部屋)の電気が消えると、隣の部屋からシュメール語の歌が聞こえてきます(山本紗由)。その歌とともに襖が開くと、ハンガー(笑)に吊るされた人形が現れます。

これが女神イナンナの人形です。作ったのは山下昇平さん。

歌が終わると今度は能の謡でシュメール語が謡われます。

「an gal-ta ki gal-še3 ĝeštug2-ga-ni na-an-gub(女神イナンナは大いなる天より、大いなる地へと、その耳を向けた=心を向けた)」

その謡が何度も繰り返される中で役者(安田登)にイナンナの人形が装着されると、イナンナは役者に憑依し、ここから『イナンナの冥界下り』の神話が始まるのです。

▼冥界に向かうために「メ」を身に付ける

イナンナは、天も地も統治する最強の女神。ただ、ひとつ統治していないのは「冥界」です。イナンナは、その冥界にも「耳を立てた(心を向けた)」のです(当時は「心」という文字がないので「耳を立てた」と表現します。ほかに「心」と訳されるのは「šag4 (ša3)」=inner bodyが原義です)。

冥界に向かうために、イナンナは地上のすべてのものを捨てていきます。天を捨て、地を捨て、彼女を祀るさまざまな神殿を捨て、神官としての地位を捨てて冥界に向かいます。

その代わり彼女は7つの<メ>を身に付けます。

<メ>というのは「目」ではありません。強いて訳せば「神力」。スピリチュアルなパワーです。具体的には、ラピスラズリとかターバンとか衣とかそんなものを7つ身につけて冥界に向かいます。

それをすべて身に付けた姿がこれです。ちなみにひとつ前の写真は裸の状態のイナンナです(スカートだけはいています)。

▼大臣に後事を託す

しかし、やはり冥界は何が起きるかわからない。そこで、信頼する大臣、ニンシュブルを呼びます。これがニンシュブル(金沢霞)。大臣ですが女性です。

もし自分が3日経っても戻って来なければ、いろいろな神様のところに行って泣いてお願いしなさいと命令をします(下はムービーです)。

ニンシュブルに後を託した女神イナンナは冥界に向かいます。

▼冥界の門番ネティ

冥界には冥界の女王がいます。イナンナの姉である女神エレシュキガルです。

冥界に着いた女神イナンナは、冥界の門番ネティ(大島淑夫)にエレシュキガルへの取次を頼みます。

ちなみにネティも門番とはいいながら神様です。でも、今回は酔っ払いという設定。セリフを言い出すと、嬉しくなって謡い、踊ってしまいます。お客さんもノッて、一緒に手拍子をしてくれました(笑)。下はムービーです。

▼エレシュキガルの命令

門番ネティの奏上を受けた冥界の女王エレシュキガル(金沢霞)は、イナンナの来訪が許せません。

そこでネティに命じます。

「冥界の7つの門を閉じ、それをイナンナ自らに開けさせよ。そして、開けるたびに7つの<メ>をひとつひとつ剥がせ」

▼<メ>は剥がれ、裸にされる

イナンナは冥界の門を通るたびにネティに止められ、<メ>をひとつひとつ剥がされてしまいます。

そして、とうとう衣裳までも脱がされてしまうのです(もう片方で脱がせているのは後見役の大金智)。

▼女神イナンナと冥界の女王エレシュキガルの死

すべてを脱がされ跪くイナンナに冥界の裁判官たちは<死の眼(まなざし)>を向けます。それによって<弱き肉(死体)>となった女神イナンナ。

イナンナは、冥界の釘に吊るされてしまうのですが、同時に冥界の女王エレシュキガルも死んでしまうのです。

▼出演者等

神話は、これからイナンナの救済、そして復活と続くのですが、試演会はここまででした。

終わってからドミニク・チェンさん(情報学研究者)、ヲノサトルさん(音楽家)、大島淑夫さん(精神科医:ネティ)、そして安田登で座談会をしました。

その内容はまた後日に。

◆◆◆出演◆◆◆

女神イナンナ:安田登
冥界の女王エレシュキガル、大臣ニンシュブル : 金沢霞
冥界の門番ネティ:大島淑夫
後見:大金智

電子楽器:ヲノサトル
太鼓:森山雅之
歌:山本紗由

人形制作・美術・照明:山下昇平
シュメール語監修:高井啓介

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イナンナの冥界下り