ものまね番組はテンポと保険が命?

フジテレビ「爆笑ものまね紅白歌合戦」を観た。微力であるが、自分が他のものまね番組に携わった経験があったので、こんな演出があるのか、演者さんの自由度が広いな、など勉強になり、あらためて「ものまね番組」について考えてみたくなった。

まず、大前提として「ものまね」を行うには、演者と客の間に〝本家のイメージを掴んでいる〟という基礎共通認識が必要になる。さもないと、〝誰、よくわからない〟と速攻で客の関心を遠ざけてしまう。そのため、番組としてものまねを披露するには誰でもわかるような旬な芸能人や旬な話題、レジェンドクラスの人物じゃないと成立しえない。(ものまね館キサラとか行けば、コアなのも見れるヨ)仮にちょっぴりニッチなネタを披露する場合、そのネタは番組冒頭に来ることはまずない。番組の入口として間口が狭いと、ついていけなかった視聴者が〝ずっとこの調子かも〟と離脱してしまうからだ。それにニッチなネタを〝純粋に似てるのを見てくれ!〟と勝負することは不可能。代わりに保険として、完全なものまねでなく、笑いの要素を追加して〝身構えないで安心して観てね。お笑いですよ〟とおふざけ感を押し出し大勢の心を遠ざけないようにしないといけない。

ものまね番組は大きく3つのブロックで構成される。実力ものまね芸人のネタみせ、駆け出し芸人の瞬間芸、素人の顔そっくりさん。他にもコーナーはあるが、この3つは常に混ざっているといえる。

ものまね番組はテンポが特に重視される。なぜなら、人気者のものまねをしてテレビに出ているということは「似ていて当然」というハードルが上がった状態からスタートするため、その期待値にそぐわない場合は飽きられて別のチャンネルにまわされてしまうという危険性があるからだ。だから、爽快なテンポを生み出し、似ていないときはスーッと通り去ることが出来るように駆け出し芸人の瞬間芸、素人の顔そっくりさんのコーナーは欠かせない。構成として実力ものまね芸人のネタみせを一貫してみせていても長々しく飽きられてしまうので、視聴ストレスを減らせるようにと駆け出し芸人の瞬間芸、素人の顔そっくりさんコーナーを分断して織り込む。それによって、あるネタが〝似ていない!〟と視聴者に感じられてもテンポよくやってくる別のネタたちが視聴者に引っかかり、〝これは似てたな。次のはどんなのだろ〟と心理的にリモコンの別のチャンネルを押すことを妨げてくれる。

そして瞬間芸(30秒以内のネタ)の締めくくりについて。これらは短時間で笑わせにかかっているものが多いので、出演者が速攻で消える締めくくりが好まれる。地面が開いて落ちたり、幕が閉じるなどの強制終了を感じさせるもの。「細かすぎて伝わらない」や「ものまね紅白」「ものまねグランプリ」などで行われている。ウケたなら、もっと見たいという物足りなさ感が生まれて良いし、スベったならば、さっきまで変なことをしていた人が急に見えなくなるという現象笑いに繋がるので、消失の締めくくりは好まれる。


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