1トンのウンチと向き合った日々 ②

~続き~

朝4時半。こんな時間に起きるのは大学生には毒だ。

1000頭もいるため夜中でもウシ達の鳴き声が止むことはなかった。慣れないマクラ、ふと鼻に漂ってくる獣の匂い、眠りに落ちそうなときに蠢く鳴き声。全く寝れなかった。それでも酪農家の朝は早いため、疲れの取れていない身体を起こし、つなぎ服に袖を通す。

牛舎に向かうと30歳くらいのお兄さんが雪かき用のスコップを僕に差し出す。「おはよ、じゃあまずここら一体のウンチをこれで一か所に寄せていこうか。毎朝この仕事から取り掛かってもらうね」

寝起きいきなりウンチはなかなかハードだった。固体というより水分が多く含まれている液体状?ゲリに近いイメージ *気分悪くしたらごめんなさい

雨の日や風の強い日は最悪だ。ウシが動くたびにペチャリ、ペチャリとウンチが飛び散る。つなぎの作業服もブーツもあっという間にウンチまみれになった。時折、顔にハねてくるときもあり、その時は早く東京に帰りたい、神様お願いしますと目を閉じて祈ったものだ。匂いはそこまで臭くなかったが、それでも無臭というわけにはいかず、口呼吸に切り替えたことは多々あったと思う。膝に力を入れて、腰を据えて一生懸命スコップを動かす。

すごい印象的だったことがある。それはウシが相手を見て自分の態度を一変させるということだ。〝見ない顔だな〟そんなことを言われているかのような視線で新人の僕を見つめてくる。女社長たちがお腹をポンポン叩いて「いけー!」と搾乳に向かわせる。言うことを聞かなかったり、ノロノロしているときは足を蹴って進ませる。そのことが怖いためなのか、ほとんどのウシが女社長が近づいただけで素早く逃げていく。しかし、僕が近づいても動かなかったり、邪魔すんな、俺は今水を飲んでいるんだと尻尾を振ってあしらう。明らかになめられていた。ウシ達もコイツは大したことがないと分かっていたのだと思う。でもその通りだとおもう。大声を出して、ウシを威嚇している目の前の若者は本当は怖くて怖くてしょうがなかった。いつこの巨体が突進してくるのか、内心ビビっていた。

こうして毎日早朝から1トンのウンチ掃除をすることが僕の日課になった。

それでは昼間にどんなことをしていたのか、それは次回にするとしよう。

続く

#1トンのウンチ  #酪農 #ウシ #大学生





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