ワンバウンドを挟んだコミュニケーション

キャッチャーにボールを投球するのではなく、観客にそれとなく投げている

例えばラインの会話。グループラインで先輩から「以上の点、よろしくお願いします」なんて来た時、他の人が〝かしこまりました。よろしくお願いします〟と返信していたら、〝確認いたしました。よろしくお願いします〟〝承知しました、よろしくお願いします〟なんて言葉をスライドさせて返信する。

例えば誰かがグループラインで「○○誕生日おめでとう!素敵な一年にしてね」なんて送信しようものなら、『素敵な一年にしてね』という言葉はなんだか絶対に使用しちゃいけない気がしてくる。他人の言葉を採用してるだけで、心がこもってないと思われてそうで。浅はかな誕生日祝いのコメントをしていると思われそうで。だから、それ以降のメンバーは「今年もたくさん思い出作ろうね」や「またすぐにでも飲みに行こうね」なんていう他人とは異なる下の句を添える。返信相手は先輩のはずなんだけど、気にかけているのはメンバーたちからの見え方。

インスタにもあてはまる。

最近、外出自粛期間でインスタのストーリーにお絵描きリレーなるものが流行っていた。自分がドラえもんを書いたならば、次の挑戦者を3,4人指名しバトンパス。指名された人は代々回ってきたドラえもんの画を添えて、また次の挑戦者へ。しりとりお絵描きリレーなんてものもあったね。ここにも冒頭の概念が存在している気がする。キャッチャー(次のお絵描き挑戦者)を指名しているようで、実はフォロワー達(観客)に〝自分はこの人達と仲良し〟と暗示する顕示欲がにじみこんでいる気がする。

別にこのことを悪いと指摘したいんじゃない。

だって今までも、誰かにバウンドさせてから多数へ伝えるコミュニケーションは行われてきたから。学校の先生が宿題をやってこないA君に「これから宿題を忘れた生徒は居残りをする。クラスの決まりにしましょう」。僕がカフェバイトをしていた時にレジのお客さんに向かって「只今満席となっております。お席お取りいただいていますか?」と少し声を大きくいっていた。あれは並んでるお客さん達にも向けて言ってた気がする。いや、てか確実に言っていた、来客数を減らすためにも。(笑)

あらためて会話を見渡してみる、よくある話なんだなと思った。誰かをバウンドさせて不特定多数へのメッセージを伝達することは今まで頻繁に行われてきたのだ。その方が、効率的であったり、当事者にとっても省エネだったりする。





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