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自己肯定感の低い人が、「克服」しようとしなくても生きやすくなるために

「世間」はとても身勝手で、今からさかのぼること約20年、私が通っていた小・中学校では、学校内の人間関係では人と違ったり、自分だから出来る事を潜めなければ生きていきづらかった。今は多少変わっているのかもしれないし、これはあくまで私から見た印象でしかない。けれど、クラスの人気者ならどんなに目立っても良かったが、そうではなかった私は「勉強してきた?」と聞かれれば「全然!やばいよー」と言って、テストの点も通知表の評価も隠し続けてきたし、得意な事でもなるべく目立たないようにしてきた。それは、小学校の朝礼で一度に3回表彰された時に(絵画展・書道展・図画工作展、とかそんな感じだったと思う)、「目立ちすぎ」だといって上級生に因縁をつけられ軽いいじめを受けた経験が深く根を下ろしていたため、そうするのが平穏な学校生活を送るための一番の近道だったからだ。

それなのに、大人になってみれば「あなたにしか出来ない事をやれ」「やりたい事で生きていけ」「なりたい自分になれ」などと、SNSや自己啓発本で毎日のように否応なく強い言葉を浴びせられる。だけどそもそも、「差異」「他人の長所」をオープンに認めあうような初等・中等教育環境になかった人間がそのまま大人になった場合、自身が表舞台に立った時に被る不利益の方が心に深く刷り込まれているため、その価値観をアジャストする過程にもまた多くの障害がそびえたっている。

特に一番難しいのが「劣等感」。これを劣等感と呼ぶのかというとちょっと違う気もするけれど、私は常にこいつと向き合い続けてきている。上記の話と辻褄が合わないと思う方もいるかもしれないけれど、恐らく私の劣等感の根底にあるのは「他人の言葉や態度に翻弄されて、出来る事・やりたい事をやり通せなかった自分」というところにあるのではないかと思っている。なぜなら、世の中にはそうした経験のあるなしに関わらず、周囲を気にせずにひたすら自分のやりたい事や出来る事に真っすぐに向き合い続けて成功している人が沢山いるからだ。

細かな内容は個人個人で異なるだろうけれど、「あの人には出来るのに自分には出来ない」という事に何かしらの劣等感を感じてしまい、それを克服しよう、「自己肯定感を高めよう」ともがいている人は多いのではないかと思う。一時期の私もそうで、今もたまにそんな自分がひょこっと出てくる事もあるけれど、だいぶ冷静にみることが出来るようになり、「そもそも自己肯定感を高めなきゃという発想自体がプレッシャーになっているのかも」と思うようになった。なので、もしそうしたことで押しつぶされそうな人がいたら少しでも役に立ちたいと思い、おすすめの方法や考え方をご紹介します。

1、自己啓発本を読むのをやめる

これは一番最初にやったこと。知識になるような本は別として、「こういうふうにあるべきだ」といったテイストの啓発系の書籍はまったく読まないようにしている。昔はそれを読むことによって自身の意識が高まった感覚に浸っていたけれど、結局それは誰かの価値観の中の「すべきこと」が詰まっただけのものであって、私が絶対にそう「すべき」である理由はないから。

2、「~すべき」という言葉は「~っていう考え方もあるよ」に変換する

1とも関連するけれど、誰かの「すべき」を正面から受け止め続けると潰れる。多様な価値観の中で、自身の内側から「こうしたほうが良いかもしれない」と湧き上がるものを救い上げる余地を残すために、そしてそうした内側からの湧き上がりを起こすためにも、「そういう考え方もあるのね」と受け止めた上で、自分ならどうしようか、どうやろうか考えるのがおすすめ。個人個人の経てきた人生はそれぞれ違い、精神的なフェーズも異なるのだから、全ての「すべき」に確実な汎用性なんてないと思う。

3、敵わない」ではなく、相手の良い所として客観的にみて褒める

他人との比較は陥りがちな部分だと思うけれど、これも正面から比較して臨むのではなく、「その長所めっちゃいいじゃん」ぐらいに客観的になって、ファンとしてとらえてみるのおすすめ。正直まだまだ「敵わねえ…」と思ってしまってうまくできない事も多々あるけれど、例えば一緒にチームを組んだ場合を考えて「君がそこ得意なら、私はこれやっときますわ」みたいな感じで、領域を細かくずらすイメージを持てるといいのかも。

4、いいと思ったものを褒める発信をし続ける

3とも関連するけれど、結局外に対してポジティブな気持ちを作っているうちに、自分の周りをポジティブな感情ばかりが占めるような錯覚が生まれるようになって、回りまわってそれが自分自身に対してもポジティブな感覚として戻ってくる感じがある。人や物の良い所を見るようにすると、可処分精神のうちポジティブなものが占める割合がおのずと増え、自分/周囲含めネガティブな感情の存在から少し距離を置く事ができる。そのループを自分から作っていく為のきっかけ作りとしておすすめ。
(映画ブログも「面白かった作品の、いいと思った部分をしたためる」という方針に変えたら、全然視界が変わった)

5、ネガティブな感情で近づいてくる人とは付き合わない

最後に究極的な部分だけど、嫉妬、敬意のない対応、否定的な発想、悪意、そうしたものをもって近づいてくる人とは意識的に距離をとっても良いと思う。私たちの時間は有限で、相対する事のできる人の数も限られている中で、そうしたことに耐える事に時間を使う必要はないのかなと。もちろん、仕事の中での生産的な意見衝突などは別だけど、例えばそうした意見の衝突があった時に個人の人格と紐づけて攻撃してくる人とは、どれだけ付き合ってもあなたの心が消耗するだけだと思う。

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もちろん「自分を変えたい」という意思は素晴らしいことだと思うし、それを実践するべくする努力も尊いものだと思う。だけど、それが外的なプレッシャーによって形成された「変わらなければならない」だとしたら、いつかどこかで土台が揺らいでしまうと思う。だから一回外的なプレッシャーから解放して、自分の周りをポジティブなもので満たしてみること。そうしたらきっと、どうやったら自分の内側から活力が生まれるか、少しづつみえてくると思います。

こうした「自己肯定感の低さを克服しないこと」を、やる気がないとか意思が弱いとか言う人もいるかもしれません。もっと、自分も相手も世の中も動かしていこうという気概をもてないの?と。でも「自己肯定感が低いこと」ではなく、それを「克服すべきこと」と刷り込んでいる世の中が生むプレッシャーが悩みの核なのであって、無理な自己改革を強いるよりもよっぽど取り入れやすいライフハック術なんじゃないかな。

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