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最近よく見る「KAST」とは何か?キル関与率は誤り

こんにちは、バッタです。最近VALORANTの競技シーンで話題になっているKASTというものをご存知でしょうか?

KAST自体はACSKDAなどと同じく個人の成績指標となる数値(スタッツ)です。ZETA DIVISIONのcrow選手や、DRXのMaKo選手のKASTが高い数値であることが知られており、よく「KAST=キル関与率」と誤解されますがこれは誤りです。

この記事ではそもそもKASTがどういうものなのか、具体的に見ていきたいと思います。

1. KASTとは

KASTは、Kill(キル)Assist(アシスト)Survive(生存)・Trade(トレード)それぞれの頭文字です。KASTは、これら4項目をラウンド中に1つでも達成できたかどうかが判定基準になり、試合全体を通しての達成率をパーセンテージで評価したものです。

例えば13-7、合計20ラウンドで終了した試合があったとして、KASTの基準を満たすラウンドが10ラウンドあった場合、その試合でのKAST値は50%になります。

Kill(キル)とAssist(アシスト)はそのままの意味、Survive(生存)は文字通りそのラウンドを生き残ったかどうか、Trade(トレード)は自分がキルされた直後、その相手を味方がキルすると達成されます。要するに味方がカバーできる死に方をしたかどうか(=無駄死にしなかったかどうか)ということですね。

初出は2017年、海外のCounter-Strikeニュースおよび統計情報を扱うサイト「HLTV.org」にて、Rating 2.0という新基準のスタッツ項目が発表となり、KASTはこのRating 2.0の値を算出するための数値の1つとして組み込まれました。

VALORANTは数多くの仕様をCounter-Strikeと共有する「CSクローン」とされており、多くのVALORANT統計サイトでもCSと同様KASTが取り入れられています。

ちなみに、読みはそのままの「ケーエーエスティー」か「キャスト」とされる場合が多いようです。

2. KASTは何を評価しているのか

よくKASTは「キル関与率」と言われますが実際は異なります。結論から言うと、KASTはキルに限らないその試合中の貢献度を評価するものです。

VALORANTではACS(Average Combat Score、バトルスコア)がプレイヤーを評価するのに用いられることが多いですが、ACSは基本的にキル数とダメージを基準に計算されるので、イニシエーターやコントローラーなどのサポートロールでは低い評価になりがちです。

KASTはキルだけでなくアシストも評価基準に含むことで、前線ロールへの評価だけでなくサポートロールを使うプレイヤー評価の改善を図っています。

Survive(生存)は、例えば相手がエコラウンドの時に味方がキルを取ってくれて結果的に何もせずラウンドが終了したような状況でも、生存しているだけで勝利に貢献したとみなされるようになっています。これはそのラウンドの勝利に貢献したかと言われると正直微妙なところですが、生存すると次のラウンドに使う資金を最小限に抑えられ、結果的に試合の勝利に貢献しているという評価になるでしょう。

Trade(トレード)は前述の通り、もしキルやアシストをすることなくデスした場合でも、味方がカバーキルを取れる状態で死んだかどうか=無駄死にではなかったかどうか、という点が評価される仕組みです。

3. 問題点 - Tradeの判定基準が曖昧である

ここがKAST最大の問題点なのですが、同じ試合でもサービスによってKASTの数値が違うことがあります。以下はVCT 2023 Pacific LeagueのZETA vs TLNのアセントの試合における各サイトのスタッツです。

VLR.gg (source)
RIB.GG (source)
THESPIKE.GG (source)

KASTのみを抜き出し、VLR.gg・RIB.GG・THESPIKE.GGの順番で並べると以下のようになります。

  • 【Laz】87 ー 83 ー 83.33

  • 【SugarZ3ro】87 ー 83 ー 83.33

  • 【crow】73 ー 70 ー 73.33

  • 【Dep】63 ー 63 ー 66.67

  • 【TENNN】80 ー 73 ー 76.67

このように、見事に各サイトで記載されている値が違います。これは各サービスによってTradeの判定基準が違うためだと考えられます。

Tradeの判定基準は先述したように「自分がキルされた直後、その相手を味方がキルすること」です。しかし、例えば初動で相手にワンピックを取られ、その後キルが発生せず1分後にサイトに侵入した際に味方がその相手をキルした場合、はたしてそれは本来の意味でのトレードキルと言えるでしょうか?

このような状況を制限するため、多くのサービスではトレードキルに対して時間制限を設けています。THESPIKE.GGではデス後5秒以内にトレードが発生した場合と定義されています。(source: Introducing KAST metric | VALORANT Forums | THESPIKE.GG

なるほどつまりTHESPIKE.GGよりもVLR.ggの方が基準が緩いということか!と思うかもしれませんが、実際はそうではありません。なぜならDep選手のように基準が厳しいはずのTHESPIKE.GGの方が高い数値となっている例もあるからです。

このような事象が起こる理由として、サービスによってはキルの順番も判定に含まれていることが考えられます。

例えば、以下のようなキルが全て5秒以内に発生したとします。

この場合、ログだけ見るとB3がA1をトレードキルしていることになりますが、連続したログを条件としているシステムの場合、間に無関係のキルログを挟んでいるためTrade判定が入らず、 B1にはKASTが加算されないことになります。

残念ながらこのような例が実際にあるため、サービスを跨いでKASTを評価することは控えた方がいいでしょう。

4. まとめ

  • KASTはKill・Assist・Survive・Tradeの頭文字

  • キル関与率ではない

  • KASTは「キル」「アシスト」「生存」「トレード」のどれかを行ったラウンドが試合中にどの程度あったかをパーセンテージで評価するもの

  • キル関与率ではなく、キル以外も含めた試合中の貢献度のこと

  • 基準が違うため、サービスによって数値がまちまち

  • キル関与率ではありません

この記事によってKASTを「キル関与率」とする誤解が少しでも減るといいなと思います。ありがとうございました。

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