自分だけの映画館。

ホームプロジェクター

その昔、ホームシアターという言葉が流行りだした頃、興味があってホームプロジェクターを買った。10万円くらいだったろうか。

高いと言えば高いけど、それまで業務用のプロジェクターは安くても30万円はしていたから、家庭用に出されたというだけでも当時は画期的だった。

80インチのスクリーンがセットでついていて、配送で頼めばいいのにはやる気持ちを抑えきれず衝動買いで持って帰った。車ではない。

長さ180cmもあるスクリーンをよく電車に持ち込んだものだと思う。若気の至りか。

今では小型化されたタイプや照明と一体型になっている商品もあるけど、僕のそれはもちろんそんなシャレたものではなく、机の上に本を積み重ねて高さや角度を微調節し、PS2につないだりして、奮闘の末に見られる結構手間のかかるものだった。

けれど真っ白なスクリーンに映し出された映画は、どんな駄作でも傑作に思えるほどに僕を興奮の渦に巻き込んだ。

仕事で疲れていても、家に帰れば自分だけのレイトショーが待っているという嬉しさ。

ワイヤレスヘッドホンからはドルビーサウンドが流れ、80インチのスクリーンは上下の黒い部分を拡大してスクリーンの外に追いやれば100インチ相当の映像に変わる。

当時のテレビはブラウン管で20インチくらいが普通だったので、それはそれは圧倒的な迫力だった。

実はその前にメガネ型のモニターグラスを持っていたことがある。

その上位モデルは飛行機でも使われているとかで、展示品で安くなっている下位モデルでゲームをしてみたくなって買ったのだ。

メガネのようにかけるだけで少し遠くに画面が浮かび上がり、簡単にホームシアターが出来上がるドラえもんのひみつ道具のような機械だったけど、故障してそれっきりとなったところへ前述のプロジェクターが登場したから、衝動買いとは言え、買う準備はできていたのかもしれない。

PS2からPS3へ

時代は変わり、大型液晶テレビが出始め、PS2はPS3へと進化した。

そこで現れたのがHDMIケーブルというモノである。

初めてPS3を液晶テレビにつないだ時の感動は、ビデオがDVDに変わる以上のものだった。

何だこの美しさは!

今まで見ていた映像は何だったんだというくらい進化を感じた。ホームプロジェクターには、コンポジットケーブルという、映像と音声がそれぞれ独立したケーブルを使っていたので、映像面に関してはかなり満足していたつもりだったけれど、HDMIの映像はそんなものとは比べものにならないくらい美麗で鮮明だった。

しかし、当然ながら僕のホームプロジェクターにHDMIケーブルを挿しこむ端子はついていない。

そうこうしているうちに時代は地デジへ移行する。

ここでまたしてもデジタル映像の美しさに目を奪われた僕は、あんなに愛用していたプロジェクターからしだいに距離を置くようになった。

部屋のテレビはどんどん大型化していき、現在は55インチだ。

PS3はPS4へ変化し、来年にはPS5が出ると噂されている。

新しいホームプロジェクターへの買い替えも考えてみたけど、時代はVR。

そこで2年前、なかなか入手できなかった時期にこれを買った。

そしてPSVRへ

ちなみに僕のは初代の方だ。

またここで時間を遡ると、実はこの前にソニーから出されているメガネ型のモニターグラスがあった。確か第3シリーズまで出たそれを買う寸前までいったが、8万くらいするのでやめたら、まるでそれを見越したようにこのPSVRが登場した。

しかも5万円以下だという(今はご覧の通りもっと安い)

世間ではVRでゲームができると話題だったけど、僕はこういった流れでシネマティックモードにものすごく興味があった。

説明によると、画面サイズは小(117インチ相当、視野角54度)、中(163インチ相当、視野角71.5度)、大(226インチ相当、視野角90度)の3段階が選べて、HDMIケーブルをつないで映画が観られる。

まさしくあの自分専用映画館が手持ちのPS4で実現するのだ。

ようやく入手したVRをつないだ時のワクワク感ときたら!きっと犬ならしっぽをブンブン振り回していたに違いない。

シネマティックモードを試してみた

小は結構遠くに画面がある感じで、たぶんこういう機器が初めての人なら感動したかもしれないけど、イマイチ。

つづいて中はかなりいい感じ。

でも、大があるのだ大が。

大に変えてみるとものすごいド迫力で眼前にスクリーンが現れた。これはスゴイ!

スゴイけど、めちゃめちゃ近い。近すぎる!!

視野角90度とはどういうことか。

実はこの製品、使用者の位置をテレビに取り付けているカメラで検出する。

それはどういう事かと言えば、以前使っていたメガネ型モニターはメガネの視線の先に画面が現れるので、横になれば画面も横に、仰向けになれば画面は天井に現れる。

しかし、このVRは違うのだ。

画面は常に真正面に固定される。もし自分の姿勢がずれてきても画面は常に固定されているのだ。ボタンを押せばズレも修正されるのだけど、大にした場合、視野範囲にスクリーンを捉えることができないくらい画面が大きくなる。226インチはダテじゃない!

まるで画面の中央部分だけを見ているような感じだ。

映画館でたとえてみると、急勾配の、前から5列目の席が空中に浮かんでいるような感じ。

そして、このVRはVRであるがゆえに、フリーザの乗り物に乗っているような浮遊感で画面の四隅を見ることができる。

画面がついてくるのではなくて、本物のスクリーンを目の前にしたまま、自分だけが端っこを見渡せる感じになるのだ。

一見いいように思える。

しかし、これで字幕入りの洋画を見ると首の上下運動を余儀なくされる。はっきり言ってこの時ほど英語のヒアリング能力を星に願ったことはなかった。

ハリーが何か言ったら下を向き、ポッターが魔法を使えば上を向く(なんか違う)

アクションシーンが満載の映画ならいいのだけど、字幕が多くなるとゴーグルの重さも手伝って疲れる。

このゴーグルは内部に熱がこもりやすいので、部屋の温度差が激しいとラーメン屋でくもるメガネ野郎になってしまう。

またコードがいろいろあって、死霊のはらわた状態になって行動が制限される(なぜにホラー感)

またゴムベルトのしめつけのせいで、外すと髪の毛がメドゥーサのように暴発する(なぜにモンスター感)

画質は?と言えば、これが悪い。僕のPS4はproではないので仕方ないものの、4Kではなく、ゲームは文字がにじんでプレイできるものではない。

マインクラフトは元が大した画質ではないのでプレイしてみたら、逆に没入感がありすぎてこちらの世界に帰って来れないような感じがしてやめた。

ただ映画に関してはそこまで画質が良くなくても、フィルム感とあいまって個人的には気にならない。

だから吹き替えや邦画だとちょっとした映画館の座席を一人占めしているようなセレブ感がある(しょぼいな)

しかし時代は身体へも影響を及ぼす

VRをPS4にずっとつないでいてもいいけれど、テレビ周りがごちゃごちゃしすぎる。

それでなくでもHDDレコーダー、PS4、ニンテンドースイッチ、xboxが乱立しているのだ。

だから使う時だけ準備することになるけれど、配線もなかなか手間で説明書を見ないと出入力のコードをどこにどう挿していいのか分からなくなる。

ゴーグルのしめつけ具合、ガラス面のくもり、首の固定など気になる点もあって、いざ見ようとしても簡単にはいかない。

それに加えて異常に目が疲れる。

となると、55インチのテレビでいいかと思ってしまい、結局買ってから数回程度しか使用していない。

今でも部屋には80インチの白いスクリーンが吊り下がっているけれど、その前にはテレビがある。進化するデジタル機器が退化する体に優しくなるよう祈るばかりだ。

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