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ICTによるインクルーシブ教育の可能性(学校の新しい価値の創造)

国立大学法人東京学芸大学 附属小金井小学校 鈴木秀樹教諭と佐藤牧子養護教諭とお話をさせていただいた。お二人ともとても積極的にインクルージブ教育におけるICTの活用に取り組まれている。

インクルーシブ教育って?

「インクルーシブ教育」とは「障がいのある者と障がいのない者が共に学ぶ仕組み」、私はそう考えていたし、一般的にもそう認識されているように思う。
が、冒頭から「ガラガラポン」である。(個人的には「学び」とは「ガラガラポン」、つまりこれまで知っていると思っていたことが、ガラガラと崩れ落ち、ポンと新しいものが出てくるということだと思っている。蛇足です)
インクルーシブ教育とは、「障がいの有無に関係なく、誰もが異なることを前提としたうえで、すべての子どもの多様なニーズに応える教育」のことだと教えて頂いた。よく考えれば当然のことだ。

ICTを活用した国語の授業の実践

鈴木先生は「天気を予想する」の単元において、ICTを活用した授業実践を行ったとのこと。
主眼に置いたのは、「考える時間」をどれだけ確保できるか。「考えること」がメインの単元だったので、それ以外の、音読、板書、ノートへの書き取りなどはできる限り効率化し、ストレスのないようにする。
文字を読むのが苦手な子ども、文字を書くのが遅い子ども、誰もが「考えること」に集中できるようにICTを活用する。
実は、これは大人の会議にも同じことが言える。私の周りには大半の時間が報告事項と承認で、何かを協働で考えるということがまったくできない会議ばかりである。
確かに、大人の世界でもICTは会議を変えていっている。授業も同じだということだ。

ICTによる効率化のその先へ ~小学校1年生のクラスでのSNSの活用

さらに鈴木先生は、小学校1年生の学級にSNSを導入されていたとのこと。保護者をしっかり口説き落としたうえで、親子で協働してSNSを活用できるようにされていた。
これはSNSのネガティブな部分から子どもを守るうえでは大変大切なことだ。小学校1年生の段階からSNSを体験させることには賛否両論あるとは思うが、個人的にはとても面白い取り組みだと思う。
鈴木先生は、ICTやテクノロジーによる学びの効率化ということでなく、拡張を目指しておられるように思う。これまで人類はテクノロジーを労働の効率化のために活用してきた。(ルンバは掃除をしなくてもよくしてしまった)
これからは、効率化のためではなく、新しいテクノロジーを活用して、人間がより価値を高める、より面白いものを創造していくという段階に入っていくべきなのではないかと個人的には考えている。
鈴木先生はまさにそれを実践されようとされているように思う。

新しい「学校の価値」創造

鈴木先生は、I.イリイチが『脱学校の社会』の中で指摘した「私は『学校』を、特定の年齢層を対象として、履修を義務付けられたカリキュラムへのフルタイムの出席を要求する、教師に関連のある過程と定義する」を「学校とは「いつ」「どこで」「だれが」「だれから」「なにを」「どうやって」学ぶかが決まっているところ」と解釈し、SNSによって「いつでも」「どこでも」「子どもが」「友達と」「思ったことを」「伝え合って」学ぶ場を提供するところに変えていく必要があのではないかと考えられている。
ICTによる学校教育の効率化という視点ではなく、最先端技術で可能なことが増えたのだから、学校の新しい価値を創造していく必要があるという発想に立たれている。

ギフテッド

現状の学校のシステムの中では、子どもたちが持っているそれぞれの子どもたち固有の素晴らしい能力(ギフテッド)が埋もれてしまうと佐藤先生は考えておられる。
この点はインクルーシブ教育の原点だと思う。短いスパンでみれば、学校というシステムからはみ出してしまう子どもたちの素晴らしい能力を支え、伸ばしてあげる場を学校外につくるということになる。が、ICTによって学校の新しい価値を創造していくという発想に立てば、ギフテッドを埋もれさせない学校の在り方を考えていくということもできる。
学校、学校外にこだわらず、新しい「学びの場」について、継続してお二人の先生と話していきたいと思う。

やっていきたいこと

・インクルーシブ教育において、子ども達とAIを協働させたらどうなるのか?(AIとの対話体験が、コミュニケーションに困難を抱えている子どもへの支援にならないか)

・ICTを活用して、子どもたちの「ギフテッド」を伸ばす学びの場について検討する。(附属小金井中学校から出てきた「不登校生の学びの場」と協働でき、広く「インクルーシブ教育の研究をしていくラボにしていける可能性もある」

                            (ジンズー)

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