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化学で未来予測

「研究者とは、世界をマニアックに探求するExplayerである」と考え、いろいろとマニアックな話を聞いてまわり、Explayするタネを見つけよう!というインタビューシリーズ。

今回のマニア(研究者)

中野幸夫先生
東京学芸大学 自然科学系 広域自然科学講座 環境科学分野
准教授

調べたいものを調べるために、器具は自分でつくる

大気環境化学がご専門の中野幸夫先生のお話を伺った。
正直、高校の化学の期末テストで10点(100点満点)をとったことがある私の理解を超えるお話ではあったが、とても面白い体験だった。
研究室に入ると学生が一人、PCに向かって図面をひいている。化学なのに、図面?
「なかったらつくるんですよ。業者さんに頼むにしても、図面で指示しないとつくってもらえないんで」とのこと。
見れば、横にサンプルのような管が置いてある。どうやら失敗作だったらしく、調べたいデータが取れなかったらしい。面白い。
研究室を出て、実験室に行くと、「これ、私がつくったんです」と自慢そうにおっしゃられる。自作のレーザー分光装置(時間分解型キャビティーリングダウン分光法)や長光路ガスセルFTIR分光計などの装置。名前も形も、つくってしまう中野先生もカッコいい!

化学で未来を予測する?

さて、カッコいい装置で何を探究しているかというと、大気の中の分子の濃度。大気中を光が通り抜ける速度や通り抜ける光の種類をしらべることで、大気中にどのような分子がいくつあるかわかるのだそうだ。大気中で5番目に多い分子である二酸化炭素ですら大気中に0.04%しかないとのことなので、大気中の濃度で他の分子を測るためには、かなり微量の分子の数を計測する必要がある。
大気中にどの分子がどのようなメカニズムで発生するのかを、仮説をたてたうえで、実験し、ごく微量の分子の数を計測し、解明していく。それがなににつながるかというと、大気環境問題のメカニズムの解明。地球温暖化問題、オゾン層破壊、酸性雨、PM2.5などが発生するメカニズムを解明し、未来を予測しつつ、どのような対策をとるべきかの方向性が示す。未来予測というと、人間社会がどう変わるかというところに焦点が当てられがちであるが、化学によって、環境の未来を予測していく。カッコいい。

子ども達に伝えたいこと

中野先生は、中高生向けに実際にPM2.5を発生させる教材を開発されている。大気は見えないので、PM2.5がどうやってできるのかを見える化することで、環境について学ぶモチベーションがあがるのではないか、子ども達の心が動くのではないかと。ちょっと怖いけれど、とても面白い。
個人的には、AIやICTを活用して、化学のデータを分析して、2030年代の大気環境を予測するPBL(Project Based Learning)などできたら、とても面白いのではないかと思う。
中野先生のたどられてきた道を子ども達が追体験する。
子ども達が自分たちの未来を予測することを愉しむ。
そして、予測できるようになる。

「面白い」から伝えたい

中野先生には諸々のお仕事で大変お世話になっているが、専門分野の話を聞くのははじめてだった。中野先生のトークの熱意は普段の仕事の話(もちろん、研究もお仕事ではあるのですが)の2倍くらいになっていた。
教育の原点がここにあるように思う。
「教える」という行為は、教えるのが上手い下手というよりも「面白いこと、もの」を伝えたいというモチベーションが先にあるべきなのではないか。化学が好きで好きでしょうないから「これ面白いだろー」と伝えたくてしょうがないというのが教育者の最初のモチベーションだったのではないか。
「私の研究室では化学の教員だけでなく、小学校の教員になる学生も多い、それでも化学の研究のレベルは絶対に下げない」と中野先生がおっしゃっていた。それは、化学が好きで、科学が好きでしょうがない人こそが理科を教えるべきという、中野先生の強い思いがあるように思う。

いや、科学者はやはりカッコいい。

やりたいこと

・化学のデータを使った大気環境の未来予測PBLの開発

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