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真面目にデザインの話など

 道端の植え込み。古い葉を押し上げるように新しい葉が生まれる。世代的には間違いなく古葉の部類に入る私ですがもう少しもがいてみたいと思っています。悪あがきかもしれないけれど。

 デザイナーの【ナカキタ】です。デザインの話といっても、展示会ブースのデザインしかできないのでその話を。

 展示会に出展するクライアントから与えられた様々な条件をクリアしながら、出展の目的に沿ったブースの形状を図面やパース画で提案するのがブースデザイナーの主な仕事です。様々な条件には、物理的なものはもちろん、予算、スケジュール、一番大事な展示会に出展する目的などがあります。それらをバランスよく考慮しつつ具体的にまとめていきます。

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若い頃は目の前の業務をこなすことで精一杯、月の残業時間や連続勤務を誇るような当時の世間の風潮もあり、余裕の無い中、与えられた作業を終わらせることだけが自分の中でのゴールでした。今では当たり前の顧客満足などに考えは及ぶはずもなく、クライアントはただ、わがままばかりのただ面倒な存在でした。言われたことを言われたまま、当時はそれで充分でした。いや、「充分だった」気がしていました。

そして、何事も表面だけではなくその向こうにあるモノ、その影に隠れているモノがあることを忘れないようにしよう、そう考えられるようになったのは恥ずかしながら最近のことです。
クライアントの担当者からのムリめのオーダーもひと呼吸おいてその担当者の向こう側に目を向ける。彼の向こうにはムリめのオーダーを出している上司がいるし、その上司も休日の家族との時間をあきらめてPCに向かっているかもしれない。そんなことに思いを馳せれば面倒な作業にも積極的に向かうことができます。
 
デザイナーとしても、ただ見栄えの良い造形を追いかけるだけでなく、そこには意味のあるデザインコンセプトが必要で、そもそもの目的を把握してデザインすることがどれほど大切なのか理解できていませんでした。どういう意図でこのデザインになったのかを問われても明確な答えなどありません。ただ目立つからとかお洒落に見えるからという独りよがりの提案で満足していました。どんな色や形、配置にも根拠があり、その目的を達成させるための意味があります。そんなことに考えが回るようになったのも最近のことです。

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この業界はスピード感が大切です。じっくりと考える時間のない案件がほとんどです。状況の変化にもすぐに対応しなければなりません。作業のスピードはもちろん、頭の中の引き出しの多さは重要です。なので常にインプットは必要です。インプットする場所は展示会には限りません。建築物、ショップのウインドウ、電車の広告、街中のどこにでも素材は転がっています。気になったものはしまっておいてここぞというときに引っ張り出せると作業がはかどります。問題は何処にしまったか忘れてしまうことですね。

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デザインには正解もゴールもありません。必ずどこかに検討の余地は残っています。サイクルが早いのですぐに次の作業が待ち受けていて、なおざりになりがちです。でもそこを捨て置くとデザイナーとしての成長はありません。どれだけ経験を積んでいようと忘れてはいけないことです。
というわけで、古い葉っぱの私ですが、もう少し悪あがきを続けてみようと思います。

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