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プラットフォーマーの背中に乗る、先鋭化がベンチャーのあるべき姿

マイケル・ポーター、経営の神様みたいな人。

このポーターが、競争戦略の類型として以下の3つの基本戦略があるとして挙げている。すなわち、・コストリーダーシップ戦略・差別化戦略・集中戦略なのだが、まぁそんな難しい話は置いておいて。

そこを議論したいわけではない。

AI時代の企業の戦略としてはこれらが決定的にどうなるか?ということだ。

企業が狙うのはプラットフォーム戦略である。これは間違いない。周辺の時間をコントロールし、莫大な利益の源泉となるのがこのプラットフォームだ。GoogleやFacebook、Amazonといった企業が思い浮かぶ。世界の覇権を握る企業だ。日本だけ見ると、規模では世界には見劣りがするものの、ラインやメルカリがそうだといえるだろう。

しかし、このプラットフォーム、狙ってできるものでもない。GAFAが狙って作れるかというと、そんなことはない。半分以上、いやほぼ100%、運みたいなものだ。前世代に作られたインフラの上に乗り、数ある候補の中から結果ユーザーに支持され残っているものがプラットフォームとなる。競争の産物だ。

プラットフォームはインフラとなる、インフラの上には次のプラットフォームが構築される。しかし、プラットフォームを狙って作れるかは運だとすると、果たしてこれは企業が戦略ととして取るべきものなのだろうか。

もう一つ、プラットフォームとなりうるものは汎用的である必要がある。つまり、ポーター先生の差別化とか集中戦略とは別の方向性だ。ポーター先生の理論からプラットフォームは生まれてこない。

色々見ている中で、このプラットフォームを取りに行く戦略をとるべきなのかというのが私には疑問に思えていた。プラットフォームは結果としてなしえるものであるとすると、そこに向けた戦略を取るのは間違いである

一方で、現在はあらゆるものが汎用化しモジュール化されて提供されている時代である。センサーや通信機器だけではない。例えば翻訳システムや画像解析といったソフトフェア的な物、AI的な物もAPIというインターフェースを通してモジュールとして提供されている。

つまり、モジュール化されて提供されているものは、一般的に誰でも利用可能になってしまうのだ。特にソフトウェア的に実現している物は無限に複製が可能である。だからスマホやイヤホンや専用機まで、あらゆる機器にGoogleの翻訳APIが繋がり、そして翻訳機能を提供できるようになる。

ポケなんちゃらという翻訳専用機が売られているが、これも原理は同じだ。汎用の翻訳APIを介して動く。だから通信環境がないと機能しない。ネット上で提供されて動く部品を集めて組み合わせたインターフェースだけの機械なのだ。インターフェース以外の機能は全てスマートフォンで実現できる。第一翻訳システムをゼロから作っていたら莫大なコストがかかりすぎる。

だから、ポケなんちゃらは本質的にはこの仕組みを理解しない情報弱者向けのデバイスであり、語学というコンプレックスに依存したビジネスともいえる。裏側の仕組みが分かっていない人が、スマートフォーンのアプリで実現できる機能を切り出して単機能デバイスに仕立て上げられたところで飛びつくのだ。

ということは、だ、

モジュール化された部品を集めて、先鋭させたサービスを提供することがビジネスになるのだ。つまり、ここでいかに成功しても多角化を志向するビジネスモデルではない。先鋭化していることに意味があるサービスである。

今後、プラットフォーム化はあらゆるところで進むだろう。汎用的な物はすべてプラットフォーム化し、限界コストが限りなく下がる。そして、一握りのプラットフォーム企業がこの覇権を握り、多くの企業はそこで勝負することができなくなる。それも狙ってできることではなく、結果できたという運である

そうなると、普通の企業の戦略はいかにこのプラットフォームから提供される部品を集めてきて組み合わせていかにユーザーに近いところで勝負するか、いかにユーザーに特化した先鋭的なサービスを提供するかが勝負ポイントになるのではないか。

ポケトーク(あ、言っちゃった)は、つまりスマホの一類型である。しかし、翻訳だけに特化してサービスを提供しているゆえにわかりやすい。それに惹かれる人が飛びつく結果となっている。

これらの先鋭的なサービスは、本質として横展開をして多角化していくような性質ではない。なぜなら、他には使えないサービスであり、他に使うものはまた別のモジュールをを使えば組み合わせて作っていけるからだ。だから隣のマーケットに同じ商品を提供する必要すらない。

モジュールを組み合わせて作り直せばいいだけだ。なのでデジタルな世界では横展開は無意味であり、企業の戦略として成り立たなくなる。もし既に顧客がついているのであれば、その顧客に対してモジュールを組み合わせてサービスを提供すればよい。

どこにあたりがあるかわからない新たな市場を探してサービスを行うのであれば、それは、最初からプラットフォームを志向するのではなく、標準化されたモジュールを利用し、試行錯誤の回数を無限に増やしていくという戦略が有効だ。

これは、根本的に横展開とは別の戦略だ。なぜなら企業のコアがあってそこの周りにビジネスを配置していくのとは違い、別の物になってしまうこともありえるからだ。尾根の繋がった隣の山に移るのではなく、全く別の山を登るのと同じだ

その際に取りうる戦略は多角化とは違い、試行の回数を無限に増やすことだ。その際に本体に影響が及ばないようにしなければいけない。だとすると、一番良い戦略はリスクを切り離し、プロジェクト毎に会社を作っていくことかもしれない。

これからは究極に差別化したプロジェクトをガンガン生み出し切り出していく戦略が有効であろう。コングロマリット的発想は時代遅れだ。

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