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クロイアキマツリ雑感(The くそGIGY、猛毒、おいおい教バンド)

この日は行きたいライブが何本かあった。

SuiseiNoboAzは新体制になって初めてのワンマンだから観たいし、モーサムのキネマ倶楽部というのも場の妙味もあわせて非常に楽しいに違いない。新宿ピットインの渋谷毅さんによるデューク・エリントン縛りも優雅な時間が約束されているだろう。とりあえず当日の気分で決めようと考えていたが前日に飯能の奥地までU-zhaanのインド古典ライブに行っていて帰宅するのが遅くなってしまった。結局のところ起きるのも考えるのも後手に回ってしまった。

とりあえず日中の予定をこなしながら改めてどのライブに行こうか考えていた時にたまたま見つけたのが今回行ったものである。猛毒以外のバンドを観たことはないので終演後にハッピーな気持ちになれるのかどうかは全く未知数である。当初考えていたライブのどれかに行けば確実にヤバい体験ができるのだけど、いくつか候補がある時にどうしても知らないほうに魅力を感じて突っ込んでいくという自分の社会不適応な感じはなんとかならないものだろうか。

開演時間を少し過ぎたあたりでフロアに入ったのでちゃんとライブを観たのはおいおい教バンドからである。

●おいおい教バンド

笑いの宗教「おいおい教」の教祖である元氣安によるバンドスタイルの儀式活動。教祖のソロは昔サマソニで見たことがある。休憩スペースも兼ねていたお笑いステージが一瞬にして阿鼻叫喚の地獄と化していたことを今でも覚えている(その時の教祖のブログはここ)おいおい教バンドのギタリストが四谷アウトブレイクの佐藤店長ということもあって楽しみにしていたライブのひとつである。

疾走感のあるロックサウンドな楽曲も披露しつつ全体的には教祖による儀式を軸に展開された。主な儀式といえばおいおい教の祭祀用具(脱ぎたての靴下でできたお祓い棒、口に含んでから投げつけられる鈴など)を使いながら観客に対してほんのりイヤな思いをさせるものがほとんどである。

1曲目からいきなり曲にあわせて振り付けを強要された。ひとつ前に出ていたバンドは少ししか見れなかったけどバイオリンとキーボードにのせて綺麗なお姉さんが歌っているような感じだったので音楽性のギャップといい、フロアもそんなに暖まっていないような状況での振り付け強要は組み立てとしてあきらかに雑である。前列はポッカリあいているし熱心な信者をのぞけば俺を含めて賛同しかねる連中が多かったように思う。ここで佐藤さんが口を開いた。

「振り付けを一緒にやってくれないと教祖がいじける→観客にとって悲惨な儀式が敢行される→教祖に対しての不快感が増す→教祖がいじける→以下略」

「誰にとっても不幸な負の連鎖を断ち切るには一緒に踊るしかない」

巧みすぎる誘導が功を奏したのかきちんとステージとフロアに一体感が生まれてしまった。前述したような祭祀用具を用いて行われる儀式もそのたびに佐藤さんから「有難がりなさい」と諭されるため妙に神聖な気持ちになってしまったりもする。人はこうして宗教に傾倒していくのですね。

教祖は昔見た時とほとんどかわっていなかった。おいおい教の布教活動というものをそれだけ長いことやっているのかと思うと頭がくらくらしてくる。語弊をおそれずに言えば穢れを知らない純粋なバカが懸命に世界と繋がろうとする美しい儚さでお馴染みのThe Flaming Lipsにもどこか通じるような謎の感動体験。

終演後に佐藤さんと喫煙所でお話しさせてもらったんだけど、ここには書けない面白すぎるエピソードをたくさん聞くことができてチョー楽しかった。

●猛毒

芸能人の名前や誹謗中傷をトップスピードで叫び倒すハードコアパンク。数分にも満たないファストチューンを矢継ぎ早に繰り出してくるほか、ステージ上にはシェフ(ジークジオン)やロボット(マグマくん)がいるし、ベーシスト(サンダー杉山)は手品を繰り出すし、謎の外人(イアン)に至っては終始けわしい表情で歯みがきしている。セラチェンさんのVJは絶えずモチーフになっている芸能人をレーザーで映し出している。とにかく情報量が多い。ともすると音楽性よりもビジュアルのインパクトだけと思われがちかもしれないが演奏がなにげに熱いことは特筆すべきことである。なによりぐしゃ人間やリアル3区でも活躍している亀さんのギターが素晴らしい。コードをかき鳴らすたびに生み出される熱量の高さとバカ社長の叫びがあればこそ猛毒が成立するというか。

終盤はステージから大量のドラえもんがフロアにばら撒かれるというカオスな展開。バカ社長は猛毒に限らずいろんなバンドで何かしらばら撒くことが多いんだけどいつもこちらの想像をこえてくるところがすごい。ここ数年、いろいろなバンドがライブで様々なものを投げることって多いと思うんだけどたいていは想定の範囲内で収まる。そもそもなんでも投げればいいってものでもないし。まさかライブ中に大量のドラえもんを投げつけられるなんて思わないもんな。

そういえば以前、流血ブリザードのライブを観ていた時には白菜、白滝、もやし、かつおぶし、ピーマン、食パン、焼きそば、さんまなど投げつけられたことがあって普通に鍋とかできそうだなと感心したことがあった。ちなみに彼らもバカ社長率いる殺害塩化ビニールの所属である。



●The くそGIGY

The くそGIGYはThe Prodigyのコピーバンドである。
コピーバンドに対しては趣味でやってるアマチュアをのぞけば原曲を忠実になぞりながら演奏者自身と懐古厨を喜ばすためだけに存在するものというあまり良くないイメージを少なからずもっていた。なので声を大にして言っておく。

The くそGIGY大ヤバい…Σ(゚д゚lll)

福岡在住のミュージシャンであるボギーさんは「熟練したミュージシャンが本気でコピーバンドをやったらどうなるか?」を合言葉にコピーバンド大会を定期的に開催していて、俺もいつか行きたいと思いつつも場所が場所なだけに動画でしか見たことがなくて。やっぱりこれってめちゃくちゃ面白いことだなって実感した。

まず大前提としてThe くそGIGYは楽曲の再現度もフロントマンによるステージパフォーマンスも極めて高い水準を満たしている。そのうえで彼らならではの味が足されているのだ。

キース・フリント


マキシム

終盤に披露された2曲のマッシュアップ(Smack My Bitch Up/MCハマー、Voodoo People/富士山)はナードコアな文脈を感じさせる超ゴキゲンなキラーチューンでフロアが大爆発した。

♪富士山 富士山 高いぞ 高いぞ

ブードゥーピーポー ブードゥーピーポー

Voodoo Peopleの素材の良さ感がここでも立証された。
関係ないけど俺が一番好きなVoodooマッシュアップも貼っておく。

The くそGIGYを見に来た観客のノリの良さも最高で、前線はとくに踊り狂っていてチョー楽しかった。これは俺の想像なんだけど彼らはプロディジーが好きなことはもちろんだけどそれを忠実に再現するコピーバンドがどうとかではなくThe くそGIGYという本物が好きなのだろう。そしてそんな期待を上回るThe くそGIGYのパフォーマンスもまた圧巻だった。

俺はフジロックや単独公演はもとより三か月前にソニックマニアで本家プロディジーのライブを観たばかりだしそれが楽しかったことは間違いないんだけどぶっちゃけThe くそGIGYのほうがぶっ飛んだし筋肉痛にもなった。だって高円寺HIGHにプロディジーなんか絶対きてくれないだろうし。あれだけの至近距離で喰らったら誰だってそう思うぞ。

今までThe くそGIGYのことを知らなかったことが非常に悔やまれるんだけどこれからは可能な限りライブを観たいと思っている。いかんせん情報がなさすぎて泣けてくるんだけど。いっそ自家発電や秋葉原三丁目などのイベントや四谷アウトブレイクがブッキングしてくれたらいいのに。対バンにはNATURE DANGER GANGとかHave a Nice Day!とかHONDALADYとか切腹ピストルズとか呼んで観客全員死ぬまで踊り続けるとか楽しそうなんだけど(他人任せ)

最後にThe くそGIGYの動画をどうぞ。
フル視聴を強くおすすめしたいが40分強あるので時間のない方は終盤だけでも是非(30:21頃~Invaders Must Die~Smack My Bitch Up)



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