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UMB GRAND CHAMPIONSHIP 2015 〜DOTAMAを応援した者としての雑感

全国各33カ所の予選を制したフリースタイラーが全て観客の判断によるジャッジシステムでフリースタイルの日本一を競うUMB GRAND CHAMPION SHIPという大会の雑感でも書こうかなと。今回初めて現場で観戦したことによって大会そのものの仕組みをより深く理解したので備忘録がてらまとめておくことにする。

【大会のルール】
・8小節2本勝負
・BEST8から8小節4本勝負または16小節2本勝負+先攻のBEAT選択制
・勝敗は観客の歓声のポイントと観客の中から無作為に選ばれた15名からなる陪審員のポイントの2ポイント先取

実際に参加してみるとこのルールがいかに巧妙なものであるかがものすごくわかる。別の言い方をするとジャッジする観客一人一人の人間くささが恐ろしいほどに浮かび上がってくるのだ。

大前提として今回俺はDOTAMAを応援する為に参加した者である。彼のスキルは何度も現場で体感しているし、知ってる知らないに関わらず一回戦を全て観た限りでは彼に肉迫するようなラッパーは見当たらなかったので俺が応援するまでもなく彼がぶっちぎりで優勝を掻っさらうであろうと確信していた。

ただDOTAMA自身の調子はあまり良くなさそうだなという印象は一回戦の時点で感じていた。

個人的な見立てだと一回戦(対SOTA-LOW)はスコアの上では完勝だったけど有効打は特に出ていなかった。二回戦(対GIL)は相当詰め寄られて大接戦になったけどここはDOTAMAの持ち味も存分に発揮されていたので勝ったことに対して素直に興奮することができた。

準々決勝(対CHILL B)と準決勝(対JAKE)ではぶっちゃけ相手の方が有効打あったんじゃないかという思いがありながらもその差は大きいものではなかったので心情的にDOTAMAを優勢にとった。もとい、とってしまったのだ。この葛藤を生んでしまうのが前述した観客がジャッジするというルールの怖さなのである。

自分はDOTAMAを応援する観客であるがそれと同時に日本一のフリースタイラーを決める審査員でもあるのだ。スキルのヤバさでのみ優劣をつけなければならない立場からすれば心情点とかもってのほかである。それはわかってる。だけどそんなに簡単に割り切れないじゃんか。

また、大会全体を通してみても接戦になった試合では観客のジャッジで優勢を取った者が陪審員のジャッジでは逆にポイントを奪われて延長戦にもつれこむケースが多々見受けられた。これは推測でしかないんだけど差がつけられないという時に陪審員が敢えて延長戦を促すようなジャッジをしているようにも見えた。これは八百長とかそういう話ではなくて簡単に割り切れない人間くささがそれぞれ出ちゃってるんじゃないかなって。

決勝戦(対CHICO CARLITO)では追う者の強みによって増大されたエモさが爆発したような渾身のフロウをDOTAMAは喰らってしまった。贔屓目に見ても彼の劣勢は受け入れざるを得なかった。彼の優勝を願ってやまなかった俺もこれ以上自分に嘘はつけなかった。そして血の涙を流しながらCHICO CARLITOを優勢にとった。残酷なルールだよ本当に。

今回DOTAMAは優勝することができなかった。彼に肉迫するようなラッパーが見当たらなかったと序盤に書いたが準々決勝に残った彼以外の7選手は誰が優勝してもおかしくないほど調子を上げてきていたし多くの観客を味方につけていた。

知名度のある追われる立場のラッパーはホームランが出なくてもクリーンヒット級のパンチラインで十分に観客を沸かすことができる。知名度のないラッパーは追う者としての立場が増大させるエモさをぶつけることができる。どちらの立場にもメリットデメリットはある。

今回のDOTAMAは相当のプレッシャーがあっただろうし調子が良かったようにも思えない。知名度の高さが仇となって相手に対するディスも口汚さがユーモアを凌駕してしまった場面も何度か目にした。決勝を争ったCHICO CARLITOが相手を罵ることなく自らの純粋さを惜しみなくさらけ出していたのとはまさに対照的である。このことが明暗の差を分けたのではないかと思っている。

今回DOTAMAが優勝できなかったことはものすごくショックなことである。しかも決勝では自らもCHICO CARLITOを優勢にとったのだから。だけど今でも俺にとってはDOTAMAのフリースタイルが一番ヤバいことに全く疑いの余地がない。来年のUMBに彼が参戦するのかわからないけどこのままじゃ終わらねえだろ。一年間悔しさを溜め込んでスキルに磨きをかけて、でもユーモアは忘れない唯一無二なギャグラッパーとして華麗に優勝を掻っさらう瞬間に立ち会いたいよ。だから頑張れ。超頑張れ。来年のDOTAMAから湧き出す喜怒哀楽しっかり見届けていこうと思う。


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