隅田有_クロッシング

隅田有 挿画とともに自作を語る4:「スライドショー」

バレエ作品のイメージが加わっている詩は他にもいくつかあります。「スライドショー」を書いている時は、バレエ・リュスの代表作の一つ『ペトルーシュカ』が頭の片隅にありました。魂を持ってしまった藁の人形の悲劇が描かれるシュールな作品で、ストラヴィンスキーの音楽が使われています。

「スライドショー」

藁の人形が燃えた
白ペンキの家が燃えた
裏庭は海に続いていた
夏至の夕暮れ
突風はスパイラルを描き
風見鶏は炎を逃れて
空高く飛んで行った
扉はついに解錠された
藁の人形が燃えながら語り始める
スライドショー
藁が頭から火を噴いたくらいで
笑うんじゃない
映写機に灯が入る
私の話を聞いてくれ!


投影されるのは
ショートした警報機


投影されるのは
使い潰された安全装置


スライドの中に追いやられた
私の数々の残骸たちは
もうじき一山の灰になるだろう
ご覧
この灰全てが私の目方
私は私をさらう風を待つ
コップ一杯のソーダ水で
すでに通夜は独り済ませた

隅田有 第一詩集『クロッシング』空とぶキリン社
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