見出し画像

専業主婦はラクそうだ

「専業主婦はラクそうだ。憧れる」なんていう20代女子のゆるーい願望にマジギレする主婦のニュースをやっていた。

https://news.careerconnection.jp/?p=17800

はっきり言ってこんなことマジレスしていること自体がもう「羨ましい」し、真面目に取り上げている情報番組もどうなんだとも思う。

何が癪にさわるんだ。主婦ってマジで暇なんだな、と思った。まあ、自分こそ今はニートだから暇なんだけども。

 結局、今の日本という社会で、外で1日仕事もやって主婦業も母親業もやらなきゃならん苦労ってのは想像を絶するわけですよ。

 今日びの結婚てのはそういうもんだし、少なくとも今の男ってはおよそそういう女を求めている。

 子供も一応欲しいから家事や育児も当然分担はするが、でも基本そういうのって母親の仕事で、妻の仕事だろと思っているメンズ。それでいて妻や母にはいつも小綺麗にしていて欲しいと思っている夫。家の中は整理整頓されて綺麗であるべきだし、当然自らもそうあるべきだ。つまりーー女であることも忘れてはいけない。そうして外にも出て、自分の給料プラスαの稼ぎを持ってくるのがマストとされている。

 ここまでしてやらなければ今日びの男には結婚というものが有益だとはおよそ感じられないらしい。何故なら、結婚相手に専業主婦という生き方を望まない男はおよそ8割を越えているとも言われている。

 考えれば考えるほどに、今の結婚てのはハードルが上がってやいないだろうか。主婦業と仕事とを両立するために残業せずに働ける環境は幸福だが、現状日本の職場はそうしたホワイトな環境ばかりではなく、子供を産んでも子育てと仕事の両立は母親や夫婦二人の多大な犠牲の上に成り立っている。そもそも保育所さえ充分にないエリアだってあるわけで。

 だから当然結婚なんてのは早い話が苦労をすることが前提のような契約関係になってしまっている。困難があってこそ共に絆を深めてそれを乗り越え、いつかその反動でやってくる(かもしれない)幸福に胸躍らせると言うのが結婚の醍醐味としても、そもそもの先立つ苦労や実利の見え難い先行投資を良しとしない連中達からは総スカンを食らっている。

 この番組に登場した主婦は周囲の無理解や偏見に悩まされている、と憤っていたが、もっと憤っている人たちは多分たくさんいると思う。

《お昼なんかは結局残り物で、家事が終わってからやっと昼過ぎなんかに食べて、その後、幼稚園とかだと子どもを迎えに行ったりーー》とのことだが、実際社会に出れば今日は昼飯を食う暇もなかった、などということはブラック企業なんかじゃなくたってざらにある。だいたい、残り物なんてのは主婦でなくたって、弁当に詰めて持って行って食っとるわい。

 保育園に迎えに行く時間ギリギリのデッドラインに退社するために、自分の昼の休憩を削ってミーティングをし、後輩にフォローや指摘をして慌てて毎日タクシーで帰っていくマネージャーを現場でいつも見た。

 営業目標を落とさぬため、営業成績を死守するため、出産の本当にギリギリまで働き続けて緊急入院していた営業がいた。

 そうして産休に入るメンバーの分まで仕事が回され、増員もされずに若いメンバーばかりが「お前は結婚もしてないんだからバリバリ働いても大丈夫」とばかりに深夜近くまで残業をさせられていた。

 そんな現実を目の当たりにするつけひどく暗い気持ちに囚われたものだ。

 世の中は今空前の《ブラック企業》ブームだが、もはやそういう問題じゃないとも思う。1社2社の異常じゃないのだ。

 この日本という社会全体の構造を何とかしてほしい。

 人よりも1分1秒でも多く長く働いたことが美徳とされる世の風潮、苦労の多さこそが勲章とばかりに褒め讃えられる日本の空気、個人のマンパワーに頼らざるを得ない謎の自己犠牲精神がどうして必要とされるのか・・・・・・十年以上社会人をやってきた身の上でもやっぱりまだまだしんどい。

 日本の会社の1割がブラックで2割がホワイトとするなら、残りの7割は全てグレーであり、労基上の問題はなくても社内は上記の様な空気で満ちている。そうしてたった2割のホワイトをかけて壮絶な就活戦争が繰り広げられている始末だ。

 2割に漏れた哀れな負け犬どもよーーようこそ残り1割の地獄と7割の煉獄へ。ブラック企業は言わずもがなだが、グレーゾーン企業の闇も本当に暗くて、深い。残業代もでない変なイベントの準備とかを深夜までやらされたりするぞ。しかし頑張れば煉獄から天国へは這い上がれるかもしれない。中途採用や転職で一発逆転を狙おう。ただ、地獄から天国へ行くことだけはおよそ難しいことを付け加えておく。

 よく話題にもあげられるが、ベビーカーの多くが満員電車に歓迎されないのは、働く多くのサラリーマンやサラリー女性にそれだけの心のゆとりがないからではないだろうか。少なくとも仕事を辞める前の自分はそうであったように思う。奴隷を満載したすし詰め状態の貨物車にカワイイ王子様乗っけて無傷無事でなんか済むわけがない。自分が降りて一本電車を見送ってスペースを作る・・・なんて簡単に言われたって出来る人ばかりではないだろう。1分1秒の遅刻でさえ決して許されない辛い現場で働く奴隷だっているんである。

 子育てママや片親家庭はもちろん応援してあげてほしいが、誰かののりしろを増やすために他の誰かのそれを削るようなことはやめてほしい。出産や子育てや介護、あるいは特定の条件下にある誰かだけではなく、どうか均等にのりしろやゆとりを持てる社会に出来ないだろうかと切に願う。

 そうでなければこの先の人生が長い若者たちは特に後の世に希望など見いだせない。だから結婚も面倒だ、メリットもない、恋なんてマンドクセーと思うんじゃないだろうか。

 それは「どうせ何も変わらない」と、選挙に行かないことより更に深刻な事態だと思う。

 何の欲求も叶えられなくていい、何もいらない。誰を呪うこともなく、ただ光だけを糧に心穏やかに生きていけたらどんなに楽で幸せかとーーそんな植物のような行く末を望んでいたのは、仕事にくたびれ果てていたかつての自分である。

 誰かを妬み、誰かを呪い、「自分だってこんなに苦労をしている」「どうして自分ばっかり」と、不幸だ苦労だという自慢ばかりが繰り返される世の中にはもうくたびれた。

 無償で家事を担っている苦労が報われない、と嘆くならさっさと離婚でもして外で働いた方がいい。外で働いたって苦労が報われないことなんてざらにあるが、それでも最低限の対価は保障されている。

 下界がかくもさように辛い世界であるという現実を鑑みれば、うら若い乙女たちがそうした僅かな夢を見ることくらい、専業主婦の方にはどうか許してあげてほしいと思うのだ。

 いずれ今のままでは辛い現実を嫌でも眼前に突き付けられる時は必ず来るわけだし。

 成功に全く繋がらない、大したオチもなく終わりもない不幸自慢や苦労自慢はいい加減ほどほどにしてほしい。

 それは結局聞いていても面白くないし、誰も幸せにしないように感じる。

 

 いま少しかくあれかしーーそう感じるところの重要性は、今ニートという限りなく自由な存在だからこそ思うことなのかもしれないけれどもさ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?