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音楽素人のライブ後記 vol.09

『全感情に告ぐ』
toitoitoi
shibuya WWW ワンマンライブ
~過ぎし獣道~
2019.3.18
(2年6か月ぶり14回目)


これを書くにあたって、
改めて数えてみたら、
回数が凄い。
大ファンの数字。
そんなに通っていたとは。

 でも本当に好きな人達であることは、
間違いない。

 ライブハウス初心者に、
最初にお薦めしたいライブを訊かれたら、
toitoitoiのライブと答えるほど、
素敵な人達だ。

 今でも6年前に、
初めて出会った衝撃を、
思い出すことができる。 

お客さん全員と視線を合わせながら、
感情の赴くままステージを、
さらにはフロアに降りてまで
跳び回る、
ボーカルのまきさん。

 一寸の違和感なく、
まきさんの奔放な身の振りに呼応する、
ギターの村越さん。

 ああ。
こんなにもライブハウスは、
音楽は、
自由なんだと、
教えてくれた人達だ。

 ライブハウスが抱える、
怖さ、
怪しさ、
閉塞感といったイメージを、
あっけからんと塗り替えてくれる。

 しかも、
たった2人で。

 だからこそ、
音楽好きにはもちろん、
ライブハウス初心者にも、
お薦めできる。

 (ちなみに初めて行ったライブはこちら↓)




そんなtoitoitoiのライブ。
今回、
2年半越しに行くことができた。
自分にとっては、
本当に久しぶり。

 それも、
東京屈指のライブハウス、
渋谷WWWでのワンマン2デイズ。
これは見逃せないと思い、
2日とも参戦してきた。



さて、
ここから先は、
初日について。

初日はバンド編成でのステージ。

正直に言って、
今まで何度もバンド編成を観てきた中で、
バンド編成のtoitoitoiは、
2人編成のtoitoitoiを、
越えられないイメージがあった。 

バンドサウンドよりも、
2人で創り出すサウンドの方が、
はるかに豊かだと思っていたからだ。

2人編成の時、
存在している楽器は、
人とギターだけ。
(曲によっては他の楽器も使うが、
メインではない)

 にもかかわらず、
あらゆる「楽器」を使い倒し、
ステージ上での表象や、
雄大な詞の世界観が、
サウンドを一層鮮やかに彩る。
(詳しくは2日目のレポで)

一方バンドになると、
2人の個性を目立たせるために、
どうしてもバッキングは陰となって、
後ろで支える役割に徹してしまう。

そのスタンスは、
決して間違っているとは言えない。
けれども、
toitoitoiでそれをやると、
時として陰ではなく、
影になってしまうことがある。

 それだけ強い個性と、
独特な質感を持っているのだ。

そう。
生音では2人に勝てない。



だけどこの日は、
2人に勝るとも劣らない出来栄えだった。

その立役者が、
今回より加わったマニピュレーターだ。 

たしかに今思えば、
2人のフィールドと全く別次元で、
音の世界を構築できるマニピュレーターは、
理に適っている。  

クロダセイイチさん(Mani)の音創りからは、
2人へのリスペクトが溢れるほど伝わってきたし、
スケール感が痺れるほど絶妙で、
見事に別世界を表現していた。

一方でバンド側も、
クロダさんの音を最大限活かすために、
お客さんを巻き込むステージから、
曲によっては一歩距離を取り、
魅せるステージへと振り切っていたのも、
大正解だった。

まきさんも、
コンテンポラリーな表象を交えながら、
あえてナチュラルではなく、
演じるように歌う様子は、
新鮮とはいえ、
とてもはまっていたと思う。

バンド編成で鳥肌が立ったのは、
初めてだった。 

ようやく真の、
toitoitoiバンドサウンドに出会えた気がして、
何とも感慨深かった。



そんなバンドサウンドに、
さらに拍車をかけてくれたのが、
まきさんだ。

この日の彼女は絶好調に近くて、
 身体の力が程よく抜け、
ピッチも、
ファルセットも、
ロングトーンも、
安定していた。

 声の響きも、
前よりずっとパワーアップしていたし、 
 感情を吐き出すような場面でも、
刺々しさを含めずに、
歌い上げることができるようになっていた。



それに、
MCも良かった。

思うに、
年々、
まきさんの言葉は、
根源的になっている。

 お客さんに対する想いと、
ライブに臨む姿勢は、
出会った頃から変わっていないけれど、
より深い想いの丈を、
言語化できるようになっているのだ。 

あなたがそのままでいられるように
私は歌を歌いたい
あなたがそのままでいれば
私は歌を歌えます
みんなもtoitoitoiです
toitoitoiでいてくれますか?

「みんなもtoitoitoi」という概念は、
昔からずっとあった。
「一緒にバンド組もう」とか、
良く言っていた気がする。
今でも言うかもしれない。

でも私は、
この言葉の方が好きだ。

 たくさんの出会いと、
経験によって、
削がれて、
磨かれて、
辿り着いた言葉だと思った。 

とても美しく、
素直な言葉だった。

 もう1つ、
ファンとして嬉しかったのは、

一生ライブを辞めない

と高らかな宣言をしてくれたことだ。

 これも似たような発言は、
過去にあっただろう。 

 でも私が知る限り、
今までで一番力強く、
シンプルで、
自然だった。



今日のまきさんの言葉たちを聞いて、
何だか安心した。

 6年前に勝手ながら、
強いエンパシーを感じた価値観を、
今日までブレることなく、
2人は守り育て続けていた。
それは、
とても幸運なことだ。

これからもtoitoitoiは、
私にとって、
かけがえのない存在であり続けるのだろう。
そう確信させてくれた。



 最後にもう1つ、
触れておかなければならない、
ハイライトを。

 この日の最後の曲は、
「アンセム」だった。

 6人の「アンセム」が終わり、
演者がステージを去った後のこと。

 アンコールの手拍子が鳴る中、
おもむろに1人、
「アンセム」のコーラスを歌いだす。

 それに呼応して、
2人、
3人と、
歌う人が増えていき、
最後には、
お客さん全員での「アンセム」が完成した。

 しかも最初に歌いだしたのは、
2人のホーム「稲毛K’s Dream」の店長だ。

偶然にしては、
なんと甘美なストーリーだろうか。

この瞬間について、
まきさんはこうツイートしている。

アンコールが拍手から
皆が自然発生させてくれたアンセムの合唱へ変わったとき、
痺れました。
音楽の力ってこんなに人の感情を揺さぶるんだな、
って心から思って。

嬉しいね。
良いライブへの、
良いお返しができた。

そして、
感極まった2人は、
ステージに戻ってきた。

「泣かせる気かよ~」
子供のように無邪気な表情を浮かべるまきさん。

でも結局アンコールはやらなくて。

代わりに応えた、
まきさんの言葉が見事だった。

アンコールは、みなさんの「アンセム」です。

逆に泣かされそうになった。

たった一言で、
「みんなもtoitoitoi」にしてしまう。
かっこ良すぎる。
これ以上ないエンディング。






のはずだった。

なのに、
なのに、
平気で2人は言う。
「今日より明日の方が凄い」と。

バンド編成より、
2人編成の方が凄いと。

クレイジーだ。

でも実際そんな気がするから、
不思議だ。
これ以上はないと思いながらも、
やっぱり2人が最強だと、
思ってしまう。

そして、
案の定、
そうだった。

ということで、
2日目に続きます!


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