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膜/筋膜(Fascia)の治療での僕の視点

1.はじめに

 Fascial Manipulation®︎(筋膜マニピュレーション)の指導者として長年携わっていて,僕が一番思っていることは指導者の個人個人,思考過程に色があるということです.理学療法も同様に,仮説と考察についてはその人の持っている知識量に左右されますよね.おそらく,受講されたみなさんも,スタッフひとりひとりに色があると感じていると思います.


 それは良いことなのか?それとも悪いことなのか?

 私はどっちもあると思います.


 一人の患者さんに対して各々の理学療法士は各評価項目を行い,評価手技から得られる結果、そして結果から得られる主症状の統合と解釈までは同じでなければならないですよね.しかし,その統合と解釈に治療者の感情や経験,知識や得意分野などが追加されて、各々の考察が生まれ,セラピストによって治療アプローチが異なってくるのは皆さんのご承知のとおりだと思います.だからこそ,痛みが出ていると結論が出た部分は他のセラピストと同じ場所でも、治療する部位であったり治療の内容というのは異なってくる場合がありますよね.

 例えば)関節が問題となり,腰椎の過可動性が問題となり痛みが出ている事まではわかったとします.しかし,その症状に対して,腰椎の安定化に重点を置く人もいれば,股関節や胸椎の低可動性に対し,可動域を改善させ,過可動性関節にかかる負担を減らしたいと考えるセラピストもいらっしゃいますよね.

 それを筋膜マニピュレーションや他の筋膜の治療に置き換えてみればどうでしょうか?


 問診・観察・運動検証・触診検証に於いては誰が行っても,同じ評価結果が出来なければならない.そうですよね.セラピストが違えば、患者の痛みが変わるわけではありませんし。でも、なぜ同じ結論に到るのかというと,決められた評価内容に沿って行うからということです.

 しかし,基礎学力や教養などがなければ、同じ結論にはならない可能性はありますけどね。

 だからこそ,筋膜マニピュレーションにおいて評価用紙に沿って行う事が進められ,運動検証,触診検証については練習に練習を重ね,皆が同じ評価結果を出さなければならないのです.

 「触診に自信がなくて‥ポイントを覚えていなくて‥」

 そんな状態のまま,患者に対して治療を行うセラピストもちらほら目にするが,それは,筋膜マニピュレーションの手技に於いて,とてもリスクであることだと理解しておいた方がいいなと思います。

 触診や運動検証ではコンセプトの中で決められた内容であるため,触診や運動を見ることは最低限に求められることであり,大前提となります.その基礎的な技術を持ったという前提に,私は以下に私の筋膜マニピュレーションにおける思考過程を書いていきたいと思います.

 はじめに説明しておきますが,私はFascial Manipulation® specialist認定試験において,運動検証と触診検証の実技ブースでは,満点でした.(触診検証ではAntonio Steccoが採点者).それを大前提としてお話ししていきますね。

 また,先程リスクである…と記載ましたが,筋膜マニピュレーションは痛みを伴う治療です.筋膜マニピュレーションは治療に成功した場合に,劇的な変化を起こす治療だということは,おそらく講習会に参加した皆さんは目の当たりにしたと思います.しかし,もう強調しますが,痛みを伴う治療なのです.そして,血管や神経に近い部位を治療する場合もあるのです.だからこそ,筋膜マニピュレーションは初心者でも誰でもでき,そして劇的な効果が出る『魔法の治療ではない』ことをまず理解しておいた方が良いと思います.

 だからこそ,筋膜マニピュレーションの知識以外にも,必ず体表解剖や運動学,生理学そして他の分野の理学療法士の知識,整形外科や内科的知識,レッドフラッグなど多くの知識も併用して学ばなければならないことをご理解いただければと思います.それを理解しているからこそ,用いることができる治療です.

 だからこそ,私もFascial Manipulation®︎  specialistであると同時にOMPTのカリキュラムを受けています(今年の9月に国際認定試験を受けます)。

 また,筋膜という組織は全身を無数のコラーゲンネットワークでつなぎ合わせており,そして人間という生き物は【中枢神経系の働きにより「自動補正機能(自動姿勢調節機能)」が備わった,日々代償に代償を作り出す生き物】だという事をはじめにご理解いただきたいと思っています.
 
 だからこそ,〜疾患にはここのポイント,〜症候群には〜のCCが効く.なんていう「CCやCFの決め打ち治療」や「疾患によってパターン化された治療」というものは存在しないことを心の奥に秘めていてほしいと思います.そんなこと言っている人は,そもそも治療手技以前に人間の体を理解していない。

 最近の,筋膜マニピュレーションに参加した受講生が〜疾患の人に対して治療を続けた結果,「〜のポイントのCCが経験的に多い」などと発信している人たちを目にすることが多くなってきました. もう一度,Fascial Manipulation®のコースに再受講していただき,または全コースに参加していただき(マスタークラスも含めて),Fascial Manipulation®を何十年も行ってきているイタリア人の国際インストラクター達とディスカッションをしていただきたいです.

 私は,日本にFascial Manipulation®の講習会が開催された7年前の受講生だった時代から今日の日本のFascial Manipulation®協会の理事に至るまで,すべての来日されたイタリア人国際インストラクターが講師をしている講習会に復習参加をしているが,誰一人そんな事を言っている人はいませんでした。


すべての講師は言うことは同じ
「決まった疾患を治療できる魔法のポイントなんてない。」


 問診→観察→運動検査(自動・他動・抵抗運動)→触診検査と系統建てた検査があって始めて治療する場所が決まります.
 今ひとつ,Fascial Manipulation®は体系化された,イタリアでSteccoファミリーやその周囲の国際インストラクターによって1988年から今日まで,臨床経験や解剖学的な研究や数百以上もの論文投稿も行ない続けた結果によって体系化され,そして未だ完成されていない日々進化し続けているコンセプトであるということを思い出していただきたいと思います.

 だからこそ,数年臨床でそこそこやっているくらいで,筋膜の研究もしておらず文献もろくに読んでいない日本の理学療法士たちが,簡単に説明できるようなコンセプトでも技術でもないことをFasciaの治療に携わる人もそうでない方もみなさんで共有したいと思う.イタリアの講師たちは20〜30年近くFM®をやってきているのだから,簡単に解明できるものではないことは百も承知だ.

 話はそれましたが,以下に示すのが普段の臨床現場で患者に対し,筋膜マニピュレーションを用いる際の【私の】思考過程を記載しますね.
 

1−2.このnoteの注意事項

 ※ 下記に示す私の思考は筋膜マニピュレーションのみならず,今まで理学療法士として学んできた多くの治療体系や手技などの要素も考慮しつつ考えている視点である.また,このノートを有料にした理由としては,R指定のように閲覧に制限を掛けたかったからである.理由としては,投稿を読まれることで気分を害されたり,または自信を失ったりと不快な思いをされる表現が含まれている可能性があるため,制限を掛けております.そのため,以下の内容に関しては日本Fascial Manipulation協会の理事としてではなく,あくまでも私個人の色々学んできた視点と見解であるため,以下の内容=協会の内容ではないことを十分にご理解いただき以下に進んでいただければと思います.


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