KIKIAU KOTONO ENERUGII #25

         蝶々


娘の希望で
蝶を捕まえに山へ行きました。

長く伸びた、イタドリのトンネルを
かき分けるように車が進んでいきました。

しばらくいくと
視界が開け
ちょっとした広場に着きました。

娘が今日ここに来るのを待っていたかのように
色とりどりの蝶が
ひらひらと優雅に飛んでいました。

娘は首に虫かごを下げ
車のドアを開け放し
シートに腰掛けたまま、飛んでいる蝶を眺めていました。

夫は網を構え
「どれがいいの?」と聞くと
娘は
「モンシロチョウ」と答えました。

夫は一目散に走り出し
一瞬でモンシロチョウを捕まえて
首から下げたカゴに入れました。

娘はじっと蝶を見た後
「次は黄色」
紫、アゲハ、ヒョウモン・・・・
夫は歩くことが難しくなった娘の
手となり、足となって蝶を追いかけ続けました。

蝶を追いかける夫の姿が無性に可笑しくて
娘も私も大笑いしました。
甲斐あって、たくさんの蝶が
カゴいっぱいに集められました。

しばらく、その蝶を眺めながら
そこの場所で昼食を摂る事にしました。
娘は大好物の焼きおにぎりを
とても美味しそうに、口いっぱい頬張っていました。

来年の夏には
娘はいないかも知れない
ふと、そんな気持ちが湧きました。

帰り際、娘は虫かごを開けて
蝶を逃してあげました。
次々に飛んでいく蝶を、娘は満足げに見つめていました。

切なくて、可笑しい虫取りの一日でした。
私の記憶に残っている家族の一日です。








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