優秀な人より、必要な人を探そう

メンバーを選ぶ時の加減乗除の考え方

チームに新しい仲間を加えるとき、一番大事なのはチーム力が上がることである。
その発想は、足し算や引き算もあれば掛け算や割り算もある。
足し算的発想では、メンバー一人ひとりの力の合計を大きくしようとする。その場合、既存のメンバーの力はあまり考慮せず、とにかく新しいメンバーの力を見極めることで、一番大きな値が得られる。

引き算的発想とは、チームに欠けているマイナスを埋めるメンバーを探すことである。ボーカルとドラムとギターがいてもベースがいないとバンドは成立しない。候補者にどんなに凄いボーカルがいたとしても、ベーシストとして相応しい人を選ぶのがいいことになる。

掛け算的発想とは、新たにメンバーが加わることで、既存のメンバーの力も引き上げてくれるような人を選ぶことである。僕の知り合いに自分の強みを「一緒に仕事をする人を楽しませることができる」と表現する人がいる。彼女は確かにいつも明るく、きっと仕事の仲間となれば困難でも乗り切れそうな雰囲気を作ってくれる。相乗効果、あるいはシナジーという言葉もあるが、要はチーム全体に刺激を与え、全体の力をぐいっと高めてくれる存在だ。

割り算的発想とは、それぞれのチームの力を集約し最大限にしてくれるような存在である。100の力を、5で割ることで20の力に集約される。メンバー個々の力を効率的に使えるよう、重複する業務やスキルを束ね、それぞれが個々の力を発揮できるような余白を作ってくれる力である。いわば従来の労力の流れをシステム化して効率化してくれる人材である。

足し算、引き算、掛け算、割り算。この4つの発想はどれか一つに絞るのではなく、状況に応じて大切にする重心が変わってくる、ということでだろう。

新しいチームには、スキルより熱量が求められる

新しいチームの場合はやるべきことも明確ではなく、試行錯誤の中で、無駄なことと重要なことが浮き彫りになる。一方でそれぞれの得意・不得意も見えてくる。やるべきことが見えてくると同時に、誰がどうやるかも決まり始める。ただし、そこに至るプロセスは決して理路整然と計画できるものではなく、ある程度のがむしゃらさが結果的に近道を見つけることになる。

この段階のチームに引き算も掛け算もましては割り算もほとんど必要ない。新たに加わるメンバーにもっとも求めるのは熱量であり、ひよこが卵の殻を破るような突破する力をチームとしても最大化したいのだ。

チームとしてやるべきことが見えてきたら、自分たちに欠けているものが浮き彫りになる。スタートアップ企業で事業が立ち上がり始めると、人事や経理のプロがいないことに気づく。何かが回り出した時に、それまでどうにかあると思っていたことがボトルネックになる。こういう時は「チームに欠けている人材」を探す引き算が必要になる。

チームが機能するためのメンバーが揃い、役割分担もある程度できて組織の形を整える必要に迫られるようになる。ただし、そうは言ってもチームの目的は組織づくりではなく、あくまで事業なりプロジェクトの推進である。その場合、チームの勢いをつけ全体としてのパワーアップを図る必要がある。この段階で新しいメンバーを探す際は、チームの機能から見たスキルではなく、全体に与える影響力である。勢いがあってもチームのメンバーが同質化してきたら、慎重な視点で意見を言う人が貴重になるかもしれない。一人加わるだけで、チームが明るくなったり、あるいはチームの視野や視座が広がったり、そういう人材はいるもので、一人の存在がチームの多様性をグッと引き上げてくれる。これが掛け算の効果である。

逆に一人の存在がチームの仕事を劇的に減らす役割を果たすことがある。10人の営業チームを強化しようと11人目のマンパワーを確保しようとする発想ではなく、11人目が割り算的視点で募った人材であれば、10人での営業活動を2人で実現できる仕組みやツールを作り上げる。それによって、残りの8人が、またゼロから新しい顧客探しに専念できれば、こういう人が一人加わる効果は計り知れない。僕の知人でも、様々な業務を経験していて「専門性が言いにくい」と言う一方で「どんな業務でもシステム化するのが得意」と言う。こう言う強みのある人は、その強みが言語化されてこなかったことも含めて、市場で相当取り合いになる人材であろう。

「人材」と言う言葉を容易に使ってしまうと、「優秀かどうか」という役に立たない議論になりがちである。そもそも、人を評価しようとする際に、物差しが1つであるかのような発想はあまりに単純すぎる。

人を探す際には、それによって実現したい何か、前進させたい何かがある。その「何か」は、いわばビジョンである。この事業やプロジェクトを将来こうしたいというビジョンであり、そこに今のチームの状況と今のメンバーの構成をきちんと把握することで、加わってもらいたいメンバーのイメージが明確になるはずだ。

新しいメンバーを加える際に重要なことは、優秀な人を見抜く力ではなく、プロジェクトのビジョンを描く力であり、チームの状況を正確に把握して、いまチームとして何を最大化すべきかを見定める力である。


PS.これを書いていて、仲山進也さんの著書『組織にいながら自由に働く』の中の「加減乗除の法則」がヒントになりました。

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岩佐 文夫

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