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従業員は企業と対等な関係になれるか

「雇う・雇われる」の関係は、どうしても雇う側が強くになりがちである。多くの人にとって「雇用を失う」痛手は大きいし、お金を払う側の立場が上になるのは、世の常でもある。
雇われる立場とはいえ、一人のおとなとして組織内でも自立した存在になれないものか。そして、企業と働く人が対等な関係になることで、より創造的なアイデアが生まれ、組織内の不正がまかり通ることもなくなるではないか。

対等な関係を変えるには、雇われる側が、「なくてはならない存在」になることだとずっと考えてきた。「あの人がいないと困る」と会社から思われる存在になることで、企業と働く人は対等の関係になれるからである。

しかし事業を運営する企業の側からすると、「なくてはならない存在」をつくることの弊害は非常に大きい。社会に定着した事業は、それこそなくてはならないものとなる。企業の勝手な都合で止めると、多くの困る人がいることが逆に事業の価値でもある。その事業を、特定の人がいないと回らない状況に置くのは極めてリスクが高く、ある意味、事業の担い手としては無責任な状況を作り出しているとも言える。

実際に、スター社員と呼ばれる人が移籍しても、意外と組織は回るものである。「あの人がいなくなって、どうしよう」という話しは多いが、数か月もすると、ポッコリ空いた穴が気がつかないうちに埋まっていく。プロ野球やサッカーチームを見ていてもそうだ。大黒柱だった選手が移籍しても、意外とチームの成績は下がらない。組織はそれだけしぶとくもあり、現状回復機能を持ち合わせている。

つまり実力やパフォーマンスで、組織内で「なくてはならない存在」になることは、幻想でもある。そしてパワーゲームで上下関係を変えようというのも、いたちごっこのような気がする。では、組織の一員として、企業と働く人が対等な関係になるためには何が必要だろうか。それは、さらに抽象的になってしまうが、信頼し合えるパートナーのような関係をつくることだろう。

そのために重要なのが、働く人が仕事のオーナーシップを持つことではないか。企業と対等なパートナーとなるには企業と同じ目線、つまり経営者の目線を持つことである。「自分が経営者だったらどうする」という視点で自分の業務を担う。対価をもらっているから動くのではなく、自らことを興すために動く存在になる。このようなオーナーシップのある働き手には、企業は実力への信頼を超え、仕事を任せられる相手になるであろう。

一方で、企業と働く人が信頼で結ばれるには、企業側の姿勢も問われる。働く人をまさに事業を回す「戦力」としてしか見ない企業から卒業することである。相手が自立した「おとな」であれば、率直な対話が必要になる。企業が目指していることやビジョンをタテマエとしてではなく、ホンネで語る。現実の矛盾も率直に認め、それでもなお目指したいビジョンを語る。いわば共感から始める信頼関係の構築である。

これからますます企業は、人材の力に依存することになる。人から働きたいと思ってもらえる場所となり、働く人に存分に力を発揮してもらうには、契約関係を超えた信頼関係こそが大きな力になるに違いない。

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