「エビフライを食べに帰省したんです」――岩手県久慈市にて

気仙沼ニッティング「東北探検隊」5日目。岩手県の久慈市へ。
居酒屋で食事をし、そろそろ帰ろうかとしていた頃、隣の席に二人組の男性がやってきました。30代の男性とそのお父さんくらいの年齢の方であった。最初は親子でいらしているのかと思ったら、甥っ子さんと叔父さんでした。甥っ子さんは、ふだんは群馬県に住んでいるのですが、いま帰省中だそうです。

僕は素朴な疑問をぶつけてみた。「叔父さんと仲がいいんですね?お父さんとは呑みに行かないんですか?」と聞くと、甥っ子さんは「昨夜は父と呑んでたんです。で今日は叔父さんと。明日には帰るんです」と答えてくれた。すかさず叔父さんもフォローする。「こいつ、いつも野菜とか果物とか送ってくれんだ。だから好きなもの食わしてやるからって言ったら、この店がいいって」(方言をうまく再現できませんが)。
地元の方からも愛されている店だったようです。こちらは観光客で、たまたまこの店に入ったと告げると、甥っ子さんは「ここチョー当たりですよ!ほんと、旨いんです。特にここのエビフライめちゃくちゃ、旨いですよ。僕はこのエビフライ食べるために戻ってきたんです」と、どこまで本気か冗談かわからないことを言います。(久慈と言えば、雲丹じゃないんですか?、本当に美味しかった)。

久慈の話しになると、甥っ子さんは手厳しい。「バスとか電車とか、なさすぎですよね!」「地元の人は海とかあまり行かないですよ、近過ぎて」「昔は駅前に喫茶店も多かったのに、いまはほとんどない」「復興が終わったら、ますます景気悪くなりますよ」「いまやネット通販で、なんでも揃うし」などなど。スポーツ店を営む叔父さんは、そんな甥っ子さんを放し飼いのように、好きにしゃべらせてあげています。

甥っ子さんは群馬で仕事が忙しいようで、出張も多いし休日出勤も珍しくない。だから、この夏は帰省できないかもしれないと思っていたら、仕事の合間ができ、急に二泊三日の予定で久慈に帰ってきたそうです。当然、新幹線の予約なし。大宮から乗ったら「超満員で、山手線のような込み具合でデッキにずっと立っていましたよ」と。聞くと、高校から地元を離れ、大学時代は東京に過ごし、群馬で働くようになり、そこでご結婚もされた。今回は、急な短い帰省でもあり、奥さんとお子さんを自宅に残して、おひとりで戻ってこられたのです。そして、お父さんと呑んで、叔父さんと呑んで。昼間には馴染みのお魚屋さんで魚も買い込んで。明日は3時間かけてバスで盛岡まで行って、そこからまた新幹線で群馬に戻る。「エビフライが食べたいから」はどこまで本当か?

このお二人のお話しがあまりに面白かったので、ついつい長居をしてしまい、最後は、甥っ子さんと一緒にエビフライを注文しました。もうお腹一杯でしたが。一口食べたらすぐに「美味しいでしょ??」聞かれました。まだ噛んでもいない・・・(笑)。「この店来られたの、ホント当たりですよ。超運がいいですよ。こんなエビフライ、他じゃ食べれないですよ」と自分のお店のように自慢されます。エビフライは確かに美味しい。大振りのエビが三匹。実がぷりぷりで薄い衣がさっくさく。「頭の中身も旨いんですよ!」と食べた方指導までしてくれました。

お腹も一杯になり、お店を先に失礼することにした。僕が東北を旅したブログを書いていることはすでに話していたら、「東北はどうでもいいけど、久慈のことはよく書いてくださいね」と笑顔の甥っ子さん。最後まで、どこまで本気でどこまで冗談かわからない面白さだが、「地元愛」は隠しようがないようです。

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岩佐 文夫

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