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仕事が先、人脈は後

雑誌の編集という仕事をしていた際、人に会う機会が多かった。当然ながらメディアで取り上げられる人との出会いも多いし、業種や職種もさまざまな人と知り合いになる。それを見て「人脈が多いですね」と言われることが多かったが、それにはいつも違和感を感じていた。

そもそも、仕事の役割として出会う人が多いというだけで「人脈」と言えるのか。そのほとんどは短期的な関係に過ぎない。編集長をしていた間は、年間600枚の名刺を発注していた。それは600人の「新たな出会い」があったということに過ぎず、そこからどのくらい人脈を築いたかはまったく別の話しなのである。
また、一般的に言われている「人脈」とは、何かのお願いごとをしたら引き受けてくれる相手のことだと思われる。言い換えるなら「頼める相手」なのかもしれないが、それとて、実際にお願いごとをしてみて引き受けてくれるか分からない。こちらが「親しい相手」と思っていても、実際に相手もそう思ってくれているかは、少なくても僕はまったく自信がない。お互いの信頼関係こそが重要だが、その強固な関係を自分で確かめる術は乏しい。仕事でご縁があったときの関係も、時間が経つとどう変わるかわからない。一期一会の連続でしかないのだ。

人脈を作っておきたいと思う動機は、「いつか役立つ」というものが多いのではないだろうか。自分自身がそうだったが、その動機はいつしかなくなった。それは、「必要な時に会いにいけばいい」と思うようになったからだ。特に仕事の場合、面識がある程度で、一緒に仕事ができるほど生易しいものではない。むしろ、面識がある人と一緒に仕事をしようという発想は危険である。仕事のスケールは小さくなるし、経験の幅は広がらないし、仕事そのものの目的を達成できなくなることもある。

面識がなくても、相手にとっても面白いと思える仕事を提案していけば、一緒に仕事をしようと思ってもらえるものである。そして、仕事を通して信頼関係が築かれ、はじめてそれが「人脈」と言えるものになるのではないだろうか。人脈で仕事が広がるのではなく、仕事で人脈を広げるのである。

面白い人や魅力的な人とつながることは、確かに楽しいし、素晴らしい体験である。しかし、それだけで何かが生まれるものではない。自ら面白い仕事や魅力的な仕事をつくることで、面識も人脈もなかった人と縁ができるのである。そして、その仕事がうまくいくことで、「また一緒に仕事がしたい」という感情が両者の間に生まれる。

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岩佐 文夫

フリーランス/編集者。ダイヤモンド社にてビジネス書編集者、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集長などを歴任し2017年に独立。2018年3月からハノイに3か月在住し、6月よりラオスのビエンチャンに3か月滞在。現在は東京。

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