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インスタント

映画館の大画面と音響で臨場感のある映像を楽しみたい時もある。
特に動きが多い映画は、
それが活かされている。
初めて見た時に私は彼が嫌いだった。
映画泥棒の彼が。

最初は「私を泥棒扱いするのか?」と不快な気持ちに。
ファスト映画なんて麺抜きカップヌードルみたいな動画もネットでは見られている。
情報にスピードを求められる時代に、
抜き取られた情緒に、情景。
心はいらない。
概況さえ分かればいい。
そんなインスタントな理解の動画。
そこに作る人の生活や苦悩は無視されて、
動画の作り手のエゴだけが流されている。
そんな時勢に理解しながら
感情を止められない自分。
映画を見るたびに目にする彼に
心理学の単純接触理論。見て、触れて、言葉になるたび人は愛着を覚えていく。
これは危険なものではないと刷り込まれていく。
次第に彼の姿がないことに寂寥(せきりょう)の気持ちが芽生えてきそうだ。
取り締まりが擬人化された彼に親しみの視線を投げるようにすらなりそうで。
でも、更に時間を深めれば、
人は慣れるものだから無関心になっていく。
彼は心理の妙を知らずに、
冷たい取り締まりの仕事に従事し続ける。
記号的で、機能的な営みの中にある彼の
退屈な日常に飼い慣らされる。
それでも、映像への感銘は捨てられない。
映画が伝えたいことは、
あらすじなんかじゃ
伝えられない。
盗撮なんかで伝えてほしくない。
盗撮に関係さえなければ、
記号でしか無い彼に敬礼を。

お題『映画館』深夜の2時間作詩様
#深夜の2時間作詩

【後書き】
なるべく、映画そのものに対する感じにしようかなと思い、こうなりました。
眠い時に書いたので、最初に投稿した時は、
もっと誤字がすごかったのは内緒です。

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