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ユーザビリティテストのススメ

ユーザの行動や発言は偉大

いまさらユーザビリティテストのことを書くのもどうかと思いつつ、最近の取り組みについて書いてみたいと思います。
HCDの各プロセスや手法の中で、とりわけユーザ参加型のインタビューやユーザビリティテストはクライアントの意識に大きく影響します。
実際に見学されたクライアントや関係者はほぼ満足して会場を後にします。稀にショックが大きすぎて落ち込んで帰るクライアントもいます。
我々が同じことを伝えても響きませんが、一般ユーザの行動や発言であればすんなり受け止められます。それほど一般ユーザから得られる事実はクライアントや関係者にとって有益な情報なんですが、私が最も期待するのは、見学後に”ユーザ”という存在を意識した議論が増えることです。この点については、期間やコストを全くかけずに同じ効果を得るのは不可能だと思っています。ビジネスにおいて期間やコストは遵守すべきものであり、どのような状況においても絶対必要とは言いませんが、ユーザビリティテストの実施について検討する価値は十分にあると思います。

ワークショップで体験してもらう

実際に私がユーザビリティテストをやるときは予算と期間をもらってやることがほとんどですが、全ての案件でというわけにはいきません。もっと自分たちで気軽にできる文化ができるといいなと思っていて、社内でユーザビリティテストのワークショップを実施しています。

参加者には思いのほか楽しんでもらえているようです。私が初めてユーザビリティテストをやったのが18年前。会社の中にユーザビリティ専門部隊ができ、そこに突然配置転換され右も左もわからないまま必死に勉強して実施したのを思い出します。今ほど情報もなく、そもそも会社の中にユーザビリティという言葉が全く浸透していなかったため、被験者として協力してもらう社員探しや製品の手配など全てが大変で、苦労した記憶しかありません。
私には楽しむ余裕なんて全くなかったので、ワークショップを楽しんでいる姿をみると羨ましい限りです。楽しみながら学んでもらい、この文化が根づけばいいなと思っています。

細かいことは気にせずにやってみる

ユーザビリティテストを実際にやってみると、テストするときや終わって分析するときになって、ああしておけばよかったというのがたくさん出てきます。私の場合は、分からなければ本を読み漁りセミナーにもあちこち参加し、試行錯誤を重ねました。なんかどれも似たような情報だよな、と感じ始めた頃にはそれなりにできるようになっていました。
勉強して理解しているつもりでも、実際にテストをやってみるとタスク設計は大事だし、そもそもテスト計画が大事だということに気づきます。さらに、それらを考える上でサービスそのもののコンセプトやターゲットなどにたどり着き、もっと上流から考えなければならないんだなという考えを持てるようになります。HCD(私はUCDという表現の方を使っていましたが)のことは知っていたものの、最初のうちは意識せずユーザビリティテストをやっていました。使いやすくなればいいんでしょ、くらいな意識です。それが、回数を重ねていくうちに上流を意識するようになり、”HCDって大事だな”と思うようになりました。
余談ですが、HCDとUCDは厳密に言うと異なります。が、正直言葉の定義はどうでも良いです。どっちが正しいだの主導権争いには興味はありませんし、これらをこだわっている人たちは理論的なことばかりでサービスに触れることは少ないですね。何のためにHCDやUCDが大事かと言うことを考えると、議論するなら違うところに時間を使いたいものです。

失敗こそ貴重な経験

ワークショップでは基礎的なことは教えますが、それよりも自分たちでタスクを考え、テストを実施し、問題点をまとめて、という一連の流れを体験してもらうことを重視しています。ワークショップという限られた時間ということもありますが、うまくいかなかったことを振り返ることで学べることはたくさんあります。今は初級編として広めることを目的にしていますが、中級編ではもっと具体的に実演を交えたスキルアップの場を作ろうと思っています。

まずはやってみることです。誰にでも1回目はあり、最初から100点が取れることはそうそうありません。そこで失敗したことを次に活かせばよいだけです。テストすることが目的ではなくサービスを向上させることが目的ですので、多少テストを失敗したってやらないよりはよいです。事前に勉強することも重要ですが、慎重になってテストを躊躇するよりは、さっさとトライして失敗し、失敗した時に自分で考えたり本やセミナーで情報を得ることの方が有意義で、その経験は確実に身につきます。
サービスのクオリティが向上するだけでなく、サービスへの向き合い方も変わるので、ユーザビリティテストをやったことのない人はぜひトライしてみて欲しいと思います。

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