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新人教育にみる個性とクリエイティビティの話

猫の手も借りたい。

どんな業種でも、殺人的に忙しい時期になると、猫の手も借りたい!と感じる瞬間があるのではないかと思う。

先週先々週の私は(一時的ではあるのだが)まさに、先述の猫の手も借りたいレベルでタスクが積み上がっていた日があった。

となると、だいたいがタスクをこなすには残業する…という選択肢と誰かにヘルプをしてもらうという二択になるものだが、残業に関して言えば、月中に月の残業が多いから注意しろやゴラァ!と注意されるメンバー上位3位に堂々と君臨している私に残された道は、HELP! I need somebody! とビートルズばりに叫ぶしかなく。しかし、現在のデザイン部には手が空いてるヤツがいるなら断りまくってる案件受注するわボケェ!!と関西弁で怒られるレベルでみんな手一杯である。

新卒さんをアサイン

家のクーラーが不調で夜に安眠できないからか、とりあえず体調もあんまり良くないところに、社外向けの方へのセミナー登壇というイレギュラーな仕事も重なってしまって、繰り返しになるが、もう猫の手を借りずには絶対にスケジュールが回せない!というレベルになり、デザイン部に配属されたばっかりの新卒研修終わってホヤホヤの新人さんたち2人に手伝ってもらうことにした。

さすがにメインのUIデザインや自分のLT用スライドなんかを作ってもらうのは無理だろうと分かっている。だけど、ほおりっぱなしのアイコンのあれこれや後手後手になりがちなチュートリアルのイメージ集め、UI設計書と呼んでいる資料作り程度なら新卒研修でやったというし、トレーナーがマンツーマンでメンターしてくれるし、サクッと終わるカンタンなお仕事だから、新卒さんに任せたら楽になるわー!

そんなことを思っていた時期が私にもありました。。

新人という劇薬

結論から言うと、自分の首を締めまくっただけだった(苦笑)のだが、割といろいろな学びや思うところがあり、最終的にはこういう劇薬も時には私自身のレベルアップには必要かも…?と考えるに至るまで達観できた。

とはいえ、自分の中でもまだ最終的に答えが出てるわけではなく、こういうことかなぁくらいのもやっとしたものをダラダラ書きたくなったので書いている。故に自分にもどこが落としドコロなのかは未だに迷走中である(つまりオチはない)

1.  指示書通り作ってってお願いしても、なんでそうなったの?ってなる問題

まず、新人さんにお願いする時に大事というか、一番苦労したのが、けっこう詳細な指示書を作らないと作業範囲を理解してもらえない点。

やって欲しかった作業としては、すでにある程度のクオリティで作り終わっているアイコンが5種類くらいあり、新規で入ってきた要件に合うアイコンを2つ作成して欲しいというもの。
さすがにいきなり完璧なクオリティは求めていないので、下準備もそれなりにし、作業タスクを箇条書き+厳守して欲しい〆切をメモとして用意。東京-大阪間というリモートでもあるので、どうにか時間も捻出してchatでテレビ電話しつつ、案件の詳細を説明。(この時点で自分でやった方が早かったかも…と感じてはいた/苦笑)
しかし、簡単な一度任せてみて良さそうだったら、次々にあふれてくる「作るのも差し替えるのも簡単だしそのうちあればいいよねー」って言って後手になりまくりのアイコン群やチュートリアルなんかの滞りを解消できる!!
よし、さっくりお任せして、手が空いた時間に他の至急対応バリバリするぞぉー!!!

と、なるはずだった。

だったのだが、
クオリティは、まあともかくとして

○意図や要件がわからないなら質問して
○〆切守れないなら早く教えて
○絵は手書きラフでいいから、意図を必ず明記して

という感じで、まずは(この先にお客様がいるから)〆切を守って、言われたことの処理を確実にする。
その上で、自分の気持ちを乗せたデザインを見せて欲しいなぁという形で、依頼したつもりだった。渡した依頼メモにもそう書いた。

しかしそうは問屋がおろさないんだよなぁと。

結果スケジュールは守れない、クオリティもヤバイ、言い訳が「要件の意図が分からなかった。」と言われる。

さすがに1回だけできないだけでは判断つかないので、同じタスクをもう一度投げてみる。

そして同じ言い訳をされる…(繰り返し2回)
しかしお客様に見せる期限は刻々と迫る…

そんな感じでタスク溢れでキレやすくなってるのもあったのか、周りに「文面だけ見ると超怖い」と言われつつも、まずはガツンと叱ることにした。そして、なぜ私が怒っているのか箇条書きにして説明。リモートなので、文字ベースになるとたしかに怖い人に見えると思うのだけれど、外国人エンジニアに囲まれて何年も指示出ししてた経験から、ここら辺ぼかしても本人が理解できないまま終わるので、とくに厳しめに対応した。

私が一番困るなぁと思うのは、

1. 分からないことを分からないままにして質問してこない
2. 〆切を守れない場合になぜ早めに報告しないの

というあたり。
これが課題なんだよ!と本人に伝えるのに、トレーナーの力も借りて、口が酸っぱくなるくらい何度も繰り返すことにした。

もちろん叱っただけだとやる気なくすので、毎度フォローと案だしや指示の明確さには心を配り、かつ3ステップくらいで完了したものを褒めてあげるプロセスを毎日ぐるぐる回して、都度、多少なりとも達成感が感じられるように配慮してみたり。

あとはクオリティだけれども、完成させなくても良いから、必ずデザインした意図がわかるよう、途中経過も含めてラフと説明を載せさせるのを徹底。なんなら文字だけで表現してもいいよ!て感じで、スピード感と数を稼ぐことを意識させるようにした。

個人的な意見だが、デザインて最後にはセンスより経験(端的に言って数)がものを言うなと思っている。特に全方位に考慮したか、考慮できたか…が重要で、それをどうデザインに落とし込んでいくかという思考回路が向上するのは数を作ることではないか(シナプスを形成する上で)。完全に自身の経験則で恐縮だが、数作る訓練をこなすと自ずと上記の考慮を反射でやったり、作らなくても頭の中で一度はあーでもないこーでもないと噛み砕けるようになってくる。少なくとも私はそうだった。
この訓練はお客様に説明するときだけでなく、エンジニアに説明したりするのにも有効だと思うので、もちろん新卒さんにも数作って意図を明確に伝えるという訓練はどんどんやって欲しいと思うし、もちろん自分自身でも説明できるデザインの出し方やアナウンサーの方法は、今後も試行錯誤して行きたいと思っている。

とりあえずこういう形で、小さいデザインを回してもらうというサイクルでガンガン手伝ってもらうことにした。

できる子、できない子、あひるの子?

結局、資料作成とFB作業がさらに積み上がったので、私の多忙さはあまり緩和せず…だが、それなりに手伝ってもらった新卒メンバーからのレスポンスがこちらの要望通りに近い成果が出てくるようになって分かったことがいくつかあった。

実はここからがこのnoteに一番書きたいことになるが、やっぱり同じ仕事の振り方してても、(新卒に限らず)新人の中でできる子とできない子ってのが発生してくるもので、ではその違いを生む要素は何なのか?という点。

近くで仕事してるメンバーで同じように新卒に仕事を振ってる人も似たような悩みを抱えていたので相談しあったところ、技術がどうとか、大学のフィールドワークで慣れてるから早い・そうじゃないから遅いよねとかでは全然なくて、結論としては、想像力の欠如なのではないかという話になった。

想像力の欠如かな?という話にいたるには色々あったのだが、

1.  案件に入る前は新卒研修しか受けてないわけで、マニュアル通りに書かれたタスクをこなせば一定のレベルのものが出来上がってわーすごい!よく出来ましたね!って物だったのが、私たちが今取り組んでいるのは、お客様からお金もらって、そこからお給料が支払われてるわけで、〆切とはお客様との約束だってことが想像できてないという点
2.  要望や要件などを伝えても、それがどんな意味を持ってお客様の要望となったのかの過程が想像できないゆえに、分からないことすら分からず、なんでも「分かりました」と言って質問しない点
3.  出来上がってきたものへの赤字に対する、対応の謎さと、妙なオリジナリティの出し方

他にもいろいろ話が出たような気がするが、大きくはこの3点。

1.に関しては、新人にそれを望むなよ…と言われそうだが、私は下にオペレーターは欲しくない。まだまだ駆け出しだとはいえ、ちゃんとデザイナーになってほしいと思っている。今ラクになりたいからと私が率先してオペレーター作りをし出したら、今後も私達上司に当たる人間がマニュアル作ったり、案出ししたり資料探してあげたり、どんどん工数が増えてしんどくなるだけだ(経験済み)。そしてオペレーターはマニュアルが上から仕事として降ってくる感覚だから、私たちが日々ひねり出しているお客様に対してのサービスや利益、メリットデメリットを考えることをしなくなる。そうなるとその対価であるお客様からの売り上げに関しても意識が向かなくなるのは明白だ。
あと、私の給料のほうがどう考えても高い。なので、彼らの第1の仕事は、私たちにマニュアルを作らせてチェックされるような業務を与えてもらえるよう待つことではなく、与えられたテーマや要求に対して答えやアイデアを出して、それに伴うアウトプット(デザインデータとか仕様書とかアセットとか)を補助することだと思う。つまり私がデザインする時間を奪うことが案件にとっても会社にとってもどれだけもったいないことなのかということに早く気づいてもらいたいのだ。
これも新人に求めすぎと言われるかもしれないけど、手が遅くても考えることはできるはず。思考停止にならないで、かつ、コスト意識が高い人材になって欲しいと思ってここに書いている。

2.に関して。
これは割とそのままの意味なのだが、共同制作アプリやWEBなどにおいては、背景やペルソナを考慮した設計は必須だ。アイコン一つ取っても、カラーリングや配色、装飾、サイズやインタラクションの全てに意味があり、それをお客様にとって一番使いやすくわかりやすく仕上げて、時には提案して「こんな問題あるけどこうやって解決しませんか?」と詰めていくのが、私が考えるデザインであると言える。
しかしながら、なぜか彼らはお客様を考慮しない。まるで私達から発注がきてるような浅慮になりがちだからか、疑問が湧かないらしい。今作っているそのアプリのその画面を自分が使う(自分がお客様になるかも)という想定もしないのだ。デザインに正解はないと言うが、正解に近づけることは出来る。その一歩がユーザ目線で考えることであり、それを考えたら一機能だけ切り取った私からの作業依頼はおおよそ疑問だらけになるはずだ(ちなみに私はヒントになる情報は惜しみなく与えるがあえて正解全部は教えないことにしている)
なので、私からのデザイン作業は質問なしではどこまで求められてるかもわからないだろうに、分かりましたとキッパリ言われると、何が分かったんだろう…と逆に不安になる。
なので、フォローとして必ず、分からないことはどんどん質問してね!と伝えるが、考慮が足りない子ほど質問しない。そして想像もしないし質問もしないので、謎の思い込みで謎の結果が上がってきて私を閉口させる。
これが私の考える想像力の欠如、二つ目。

3.は2.にも関連するところだが、出来る子出来ない子と判断されがちな分岐点なんではないかと思う、想像力の問題。
それはズバリ、誰も要求してないオリジナリティを入れてくる、ことだ。
先のユーザ視点もそうなのだが、例えば作って欲しいと依頼したUIのお客様からの機能要件が「(写真で撮ったりして)簡単に読み取りができて、読み取った結果数値が大きく出る」「健康に関するものだからナチュラルな雰囲気で」みたいなのがあった時に3案考えてもらった場合、私なら読み取りが簡単とか数値が大きく出る辺りをいかに簡単に感じてもらえるか…を軸に考えるのだが、彼らから出てくる答えはなぜか健康的なナチュラルがフィーチャーされたものになる。確かに健康的でナチュラルという要件はあるが、それはそれっぽい雰囲気が漂ってればいいのであって、機能の説明はあくまで簡単に数値が大きく出ることを表現しないといけない。しかし、謎のオリジナリティを発揮する彼らは、「お客様が本当に欲しい答えを探してみて」とヒントを与えると、さらに健康的でナチュラルな要素の作り込みをするのだ…!

謎すぎる。

やはり私には難解すぎて、新卒さん達の気持ちは計り知れない…。もうちょっと寄り添って彼らのポテンシャルを上手く引き出せる先輩になりたいものである。

という気持ちを抱えつつ猫の手などは本当はないのかもと思いながらも、この努力がいつか猫の手からトラの手になり、私を置いてけぼりにする勢いでどんどん案件を引っ張って行ってくれる人材に育っていくと信じて、今日も今日とて説明で失った時間を補填すべく、いそいそと休日出勤をしているのである。

というわけで、宣伝。

文中にもちょっとだけ出てきた私を多忙へと導いた一つの要因であるセミナーの登壇なんですが、またやります。
8/21(火)、リアル自分のバースデーに大阪のグランフロントで、プロトタイプを使ってサクサクお仕事が進む方法論をしゃべります。

フェンリルセミナー【大阪開催】アプリで”サクサク UX ”を提供する方法論https://www.fenrir-inc.com/jp/news/2018/07/10/seminar-180821/

と書いたものの、ありがたいことに第一回目の7/20とともに、即日申し込みいっぱいだそうで、また東京・大阪ともに第三回、四回と開催してほしいという声もいただいております。ご興味ある方は、当社までお問い合わせいただくか、リンク内のフォームからご連絡ください。

追記

できる子、できない子、のことをチラッと書いたが、実は私の中でできる子筆頭の子がいて、彼女は「質問する、スケジュールを守る、手が早い」と新人とは思えないほどの優秀さで、細かい設計書周りとかが苦手な私のフォローを一手に引き受けてくれていた。そんな彼女は提案周りも当然のように優秀だったため、提案をそのままそっくりイチからデザインしてもらおう!と意気込んだ。

きっと彼女ならできるだろうと信じていたのだが、ちょこっとしたアイコンならともかく、さすがに新人に4画面を3日でお客様に仕上げろというのはキツイことぐらい私にだってわかっている。ので、お客様の要望を基に、絶対いれて欲しい要素などは入れ込んだタタキをサクッと作って渡した。

ぶっちゃけると彼女にはアイコンデザイン系の制作は今まで振ったことがなかったのだが、今までの経験から、きっと謎のオリジナリティをどんどん入れて返してくれるんだろうな(どんなだろワクワク)と思いながら待っていたデザインは素直に私のドラフトをキレイにしただけでこじんまりとしていた。。

オーマイガ!できる子はできる子過ぎて、先輩のタタキデータをぶちのめすのが難しかったらしい…。しかし、提出は来週だ。
一度私の作ったものを全部枠外でばらして作り直し、もっと「ぶちかましていいよ!」とハッパをかけてみたので、残業してまで完成させたい!と意気込む彼女が一つ殻を破ってくれるのを楽しみにしている。(とか書きながらも提出間に合わなかったら怖いので、今から別案作っとこうかなーと思っていることは内緒だ)


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