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跳ばれ箱

小学校の体育館。
何の変哲もない6段の跳び箱がある。
しかし未だかつて誰も跳んだことはない。
踏切板へ向かうと箱が飛び上がるのだ。
その高さは2.5m、20段は超えている。

おまけに、喋る。

『跳び箱や言うてんのに、飛ばれたらかなんわ。跳ばれ箱とちゃうっちゅーねん』

関西の工場で作られたらしい。

『ここに住むで。居心地がええんや』

一度、不良品として返品されたが、自力で戻ってそう呟いた。

体育教師は呆れて倉庫に押し込んだが、再び出てきて体育館の中心で凛と佇んでいる。

『バスケット、がんばりや』

時には応援してくれるのだが退こうとはしない。
邪魔だ。

『何しとんねん』

隙を見計らって跳ぼうとすると、怒られる。

春樹は何としても跳んでやりたいと思った。
毎日挑み続けた。
そして5年生の最後の体育、ようやく飛ぶことができた。

「工場長、間に合いましたね」
「来夏の大会では、きっと私の甥が優勝するやろう」


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ファビアン@1分小説

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