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「家探しのストレスをなくし、住み替えをもっと自由に」不動産コミュニケーションクラウドのFaciloいよいよ本格始動

「五月雨式に申し訳ございません」という前置きとともに、延々と続くメールでのやり取り。
家という人生最大の買い物であるにもかかわらず、そのコミュニケーションはこの30年間あまり進化していない。情報に埋もれながら次から次にやってくるタスクをこなして何とか購入にたどり着く。もしくは、情報を消化しきれず検討をあきらめてしまう。これらの体験が「家探しは面倒でむずかしい」というイメージを人々に与えている。

Facilo(ファシロ)が目指すのは「誰もが軽やかに住み替えられる世界」。オンライン上で住み替えに関する情報を一元管理し、AIを活用しながら取引をファシリテートする不動産仲介特化型のコミュニケーションクラウドを提供し、家探しの体験向上に取り組んでいる。

プロダクトマーケットフィットの達成を目前に、更なる成長の加速を図るfacilo。その創業者であり、市川紘さんに、起業の経緯と不動産業界で目指す未来について聞いた。

PROFILE
CEO 市川 紘さん

リクルートからアメリカに渡り、シリコンバレーの不動産テック企業MovotoのCFOとしてM&Aによるイグジットを牽引。日本に帰国後、株式会社Faciloを創業し、不動産コミュニケーションクラウドFaciloを2023年2月にローンチ。休日は公園で走り回る5才と3才の子供を追いかけて奔走し、帰りに自分へのご褒美として趣味の日本酒を買うのが日課。

「0から新しいものを生み出す」という軸で、歩んできたこれまでのキャリア

まずは、市川さんのキャリアの変遷を辿っていこう。新卒でリクルートに入社した背景には、学生時代の経験があった。

「大学は法学部だったのですが、お世辞にも成績は良くなく、何となく司法試験の勉強をしてみましたが、全く楽しくなくて挫折しました。その一方で、趣味の音楽にのめり込みました。バンド仲間と楽曲を作り、ライブで演奏して、たくさんのお客さんに喜んでもらえることは、大きな喜びでした。

楽しい音楽活動とつらい法律の勉強は、一体何が違うんだろう。学生なりに考えて見えてきたのは、法律の世界は既存の枠組みを守ることが第一。かたや、新鮮な驚きを生み出すことを期待されているのが音楽の世界だ、ということ。そこから見えてきた軸が『0から新しいものを作ることが好きだ』ということでした」

0からビジネスを生み出せる環境を求めて就職活動をスタート。ピタリと当てはまったのがリクルートだった。ホットペッパーやゼクシィなど、人々のライフスタイルを横断して新しいプロダクトを作っていく企業文化を魅力に感じ、2008年に入社。住宅事業に配属された。

「人材に飲食、旅行事業など可能性は色々あり、住宅事業に配属されたのはたまたまです。当時は「住宅情報(現SUUMO)」という、不動産情報フリーペーパー及びポータルサイトの広告営業からスタート。プロダクト部門に移り、3年半SUUMOのフリーペーパーやアプリを担当した後、経営企画へ異動しました。不動産業界の中でも、新築マンション、戸建・中古流通など部門ごとに経営戦略を練り、最後は、SUUMO全体の経営企画マネージャーへ。合計4年の経営企画の経験の後、新規事業開発の部長を担当しました」

不動産テックの本場アメリカで、経営者としてM&Aを経験。それでも帰国し起業を選んだ理由

Faciloと言えば、シリコンバレーで出会った市川さんと梅林さんが創業したことでも知られている。アメリカに渡った理由とそこでのキャリアについても話を聞いた。

「最初は駐在だったんです。シリコンバレーにあったリクルートの子会社、Movotoに異動になりました。米国版SUUMOのような、アメリカ国内の不動産ポータルサイトを運営するスタートアップです。もちろん社員はほぼ全員アメリカ人という中で経営に携わりました。

ところが2年が過ぎた頃、Movotoがリクルートグループを離れることになったのです。日本に戻るかアメリカに残るか。選択を迫られた結果、リクルートを辞め、Movotoの経営を続けることを選びました」

この時の選択からは、市川さんの起業家魂とも言うべき決断力と、未来を見通す力を感じることができる。

「アメリカに残った理由は、半分意地のようなものです。Movotoの仲間と一緒に築き上げてきた事業がまだ中途半端な状態でアメリカを離れるのが嫌だったんです。自信や思い入れがあったからこそ、納得いくまで向き合いたい。そう思ったのが理由の一つ。

もう一つは、アメリカで僕を支えてくれた、仲の良い同僚からの言葉です。『もし日本に戻ったら、絶対毎日”Movoto”をGoogleで検索して、今どうなってるかってずっと気にするだろ。だったらその未来を一緒につくろうよ』と」

リクルートを離れた時点で、手元の資金は9億円、年間赤字は17億円。あと半年で潰れるというところで出向ではなく現地社員としての再スタート、そしてCFO就任だった。そこから市川は事業や組織の改革を重ね、1年で黒字化を達成。全米第4位の不動産ポータルサイトにまで成長させている。

「事業も好調な中で、より規模の大きな不動産テック企業と縁があり、2020年6月にM&Aで事業を売却。アメリカのスタートアップ業界では、ゴールの一つにもなっている、イグジットという形になりました。事業や組織を統合する1年間のPMIを経て、2社の合併後の成長戦略策定と基盤整備も完了。Movotoが完全に手を離れたことで、自分のキャリアにも区切りがつきました」

シリコンバレーのサクセスストーリーのお手本のようなキャリアを築いた市川さん。次のステージで目指したのは起業だった。

「『0から新しいものを生み出す』という原点に立ちかえると、永続的に社会に価値を発揮する仕組みを作る「起業」はその究極です。Movotoでは自分で経営に参画しながらも、創業者ではありませんでした。いつかは起業したいという思いがありました。

一方で、この先も不動産業界に身を置き続けるのかという迷いもありました。自分で選択したわけではなくリクルートでの配属がきっかけだったので、もっと他にやりたいこと・向いていることがあるんじゃないかと、踏ん切りがつかない部分もありました。

そんな中、何気なく始めたアメリカの不動産テックの情報を日本語で発信するブログがじわじわと人気に。とてもマニアックな内容のブログでしたが、『シリコンバレーの日本人が、最前線から生の情報を発信している』と、日本の不動産業界の方々に喜んでいただきました。それをきっかけに日本で志を持って働かれている方々との接点が増え、微力ながらお役に立てた経験をして、『ああ、これが自分の生きていく道なんだろうな』と、腑に落ちたんです。

まるで川下りのように、日々の激流の中をもがいてきた結果、不動産スタートアップの経営に流れついたイメージですね。本当に色々な縁が重なり、日本とアメリカそれぞれの不動産テックの最前線で働くという貴重な経験をさせてもらいました。こうして学んだことを、日本の不動産業界の進化のために還元していくこと、これが自分のなすべき役割だと。そう考えて、2021年に帰国し、起業の道を歩み始めました」

Photo in San Francisco

中古住宅にシフトしようとする日本の不動産市場

Faciloが向き合う日本の不動産業界を市川さんはどう見ているのだろうか。世界では、欧米の不動産マーケットの主な商材は中古住宅だ。一方で、インドネシアやマレーシアなどの新興国では新築住宅が多い。発展途上国から始まり国が成熟するにつれて商材が新築から中古にシフトしていくのが不動産マーケットの一般的なセオリー。その中で日本の立ち位置とは。

「日本の不動産市場は、まさに中古住宅へシフトしている途上にあると捉えています。国の政策で高度経済成長期以降、新築住宅が中心の業界でしたが、近年は着工数が年々減少。少子高齢化が進み、空き家問題もある中、中古住宅やリフォーム住宅がこれから主力になっていくでしょう。

3回vs12回。これは日本とアメリカの一生のうちの住み替え回数です。

日本人は、一つの家に長く住み、一生賃貸という人も珍しくありません。対して、アメリカ人は暮らしに合わせてもっと柔軟に家を住み替えます。中古住宅でも、きちんと手入れがされていたり立地が良かったりすると、価値がどんどん上がって物件の流動性が高まります。その結果、日本とアメリカの住み替え頻度に4倍もの差が生まれるのです」

日本で不動産の売買が広がらない要因を、市川さんはこう分析した。

「不動産の売買が広がらない要因は、複合的に絡み合っています。人口動態や国の法律や政策、業界全体の構造。そうした特性を踏まえると、黒船のように旧来の仕組みを壊すディスラプティブなアプローチはうまくいかないと考えています」

そして、Faciloを提供する意義をこう続ける。

「Faciloの役割は『不動産テックスタートアップとして、テクノロジーでイノベーションを加速させること』だと考えています。ですから、政府にはトップダウンで制度見直しを継続してもらいながら、私たちはビジネス面からボトムアップでアプローチしていく。それもスタートアップに閉じるのではなく大手企業とも連携しながら。不動産業界全体で、政府、大企業、スタートアップが三位一体となり、大きな歯車が噛み合って回り始めれば、複合的に絡み合った課題も解決できるはずです。これはディスラプティブなスタートアップが多く既存勢力vs新興勢力という構図になりがちなアメリカにはないアプローチですし、かえって日本型の方が大きなインパクトを実現できると信じています」

仲介取引のストレスを減らし「暮らしに合わせ、軽やかに住み替えられる未来」へ。

最後に、創業者の市川さんから改めてFaciloについて語っていただき、このインタビューを締めくくろう。

「Faciloは、社名の由来でもある、オンラインで住み替えに関する多種多様な情報を一元管理し、AIで取引をファシリテートする、不動産コミュニケーションクラウドを提供しています。不動産取引の現場では、まだまだ電話やFAX、メールでの連絡が主流です。

『五月雨式に申し訳ございません』という前置きで、物件提案、日程調整、書類手配といった重要な情報がバラバラと送られてくるのが現状。不動産に関する情報は、ただでさえ専門的で複雑です。この情報が整理されていないなか手探りで人生最大の買い物の意思決定をするのは、消費者にとって大きな不安。その不安に耐えられず途中で検討をやめてしまう人も多い。その五月雨式の煩雑なコミュニケーションへのストレスが、人々から不動産を縁遠いものにしている大きな障壁の一つです。

だからFaciloは『不動産仲介の顧客体験を良くしていくこと』を掲げます。

そのために、消費者と仲介会社の間のメールやLINEでのコミュニケーションデータを約2万件分析しました。煩雑に見えた顧客とのやりとりは、いくつかのカテゴリーに集約できることがわかりました。それをもとに開発したのが、オンライン上で物件情報・スケジュール・タスクなどを一元管理し、顧客とのやりとりの共通プラットフォームとして活用するコミュニケーションクラウドです。

フリマアプリのメルカリが、中古品の売買を劇的に増やしたのは記憶に新しいですよね。スマホ一つで完結する気軽さで取引の摩擦をなくすことで、市場における中古品の流通が活性化しました。Faciloも不動産コミュニケーションの摩擦をなくし、なめらかな仲介取引を実現することで、中古物件の流通自体を活性化していきたいです」

なめらかな仲介取引。その先には、どのような未来が待っているのだろうか。

「『家』に『暮らし』を合わせるのではなく、『暮らし』に家を合わせて、柔軟に住み替えられる未来を目指しています。

私たち日本人って、どこかで家に妥協していると思うんです。リクルート時代に実施した累計400人ほどを対象にしたユーザーインタビューでよく耳にしたのは『広い家に住むために、大変だけど郊外から1時間以上かけて通勤している』とか、『子どもが産まれて手狭になったため、収納を工夫して何とか対応している』といった、家を持つ喜びと同時にどこかに不満を抱えながら暮らしている人の声でした。

アメリカでは皆、家を愛していました。ライフスタイルに合わせて住み替えを重ね、暮らしにフィットしている自分の家に自信があるんです。だからホームパーティーで大々的に人を招いたりして、家に対して圧倒的にポジティブです。

今の暮らしにどこか妥協や我慢をしながら暮らすのではなく、100%家に満足して自分らしく暮らせる未来を作りたいのです。自由な住み替えが実現できれば、暮らしはもっと豊かになるでしょう」

創業メンバーとして、一緒に事業と組織を創っていメンバーを募集。

Faciloでは、その劇的な成長に伴いさまざまなポジションで採用を行っている。募集中のポジションはそれぞれの要項を詳しく見ていただくとして、ここでは共通のやりがいを伺った。

「この仕事の一番の喜びは、ダイレクトにユーザーである不動産会社さまの声を受け取れること。さらに、その先にいるユーザーの暮らしを根底から支えられることにやりがいを感じていただけるはずです。また、数あるスタートアップの中でも、Faciloは2021年に創業したばかりで、いわば黎明期にあります。自分たちで組織やカルチャーを形にしていけるフェーズ。まっさらな状態とはいえ、資金調達にも成功し、今後の可能性が大いに感じられる事業です。創業メンバーとして、不確実性を楽しみながら、一緒に事業と組織を創りあげていける人に来てほしいと思います」

アメリカの経験をもとに日本の不動産業界を見据え、その課題をテクノロジーで解決する。今のFaciloにジョインし、そんな市川さんと共に働くことは、これからのキャリアに多大な影響を与えてくれるはず。そのFaciloが変えていく日本の不動産業界が明るいことは市川さんの話を聞けば明らかである。

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