見出し画像

「JR東日本と東急不動産HDの包括的業務提携」その概要と記者発表会の様子

2023年2月14日、JR東日本と東急不動産ホールディングスは、包括的業務提携契約を締結したと発表しました。都内某有名ホテルの大宴会場で行われた、その記者発表会には多数のマスコミが参加していました。事前の案内状には、両社による「協業について」とだけ書かれてありましたので、参加した記者陣は「果たしてどんな内容なのか?」と個々に思いを巡らせながら、この日を待ちわびていたのではないだろうかと推察します。

登壇したのは、ともに代表取締役社長のお二人でした。
・東日本旅客鉄道株式会社 代表取締役社長 深澤祐二氏
・東急不動産ホールディングス株式会社 代表取締役社長 西川弘典氏

登壇者はともに代表取締役社長

具体的な提携の内容は以下の通りです。

1.住宅を中心とした開発事業
第1号開発予定案件としてJR社宅跡地「(仮称)船橋市場町プロジェクト」敷地面積約45,000m2、完成時期2026年以降。この他にも社宅跡地などを中心にJR東日本の保有資産を東急不動産HDのノウハウを活用して街づくりを行う。概ね5年で1000億円規模の売上を目指す。

2.再生可能エネルギー事業
JR東日本グループが保有する土地や建物資産に東急不動産HDの太陽光発電施設の開発・運営ノウハウを活用して再エネ事業を展開する。概ね5年で5か所程度。資金調達は東急不動産HDの宮城県を中心とした再エネ施設2~3か所をアセット(投資対象資産)としたファンドを組成。2024年度に100億円、10年で1000億円規模を目指す。

3.その他海外や国内リゾート分野での協業
アジアでのTOD(Transit Oriented Development:鉄道駅周辺での開発)など、各社の実績に基づいた協業。大手不動産では唯一積極的に手掛けるリゾート開発事業と鉄道チケットを組み合わせた商品開発等。

上記1~3の上位コンセプトは「環境共生・コミュニティ自助型の持続可能なまちづくりを通じた社会課題の解決と両者グループの成長を目指します」といった表現になるようです。

契約期間は、2023年2月から2033年2月までの10年間。

プレゼンテーションはJR東日本社長深沢氏、東急不動産HD社長西川氏の順で、上記内容を交互に説明する形式で進行しました。

なかでも、冒頭で深沢社長が東京駅前の再整備事業にはじまり、高輪ゲートウェイや大井町、新宿といった都心大型再開発や秋田、福島、新潟など地方主要都市のプロジェクトを取り上げ、同社の強みを生かした不動産事業の積極展開をアピールされたことが印象的でした。しかしながら、今般の協業の決まったものの中に、そのカテゴリーに含まれる大型駅前開発等は含まれていませんでした。

一方、西川社長は後述の質疑応答を通じて、再三「貸与資産の拡大が命題」と言及されていました。財閥系デベロッパーとは異なる路線で事業をどう伸ばしていくか。成長の道筋を探っているような印象を受けました。

プレゼンテーションは約20分。その後、質疑応答に入り、計5名の記者が登壇者に質問をしました。その中でとくに印象的だったものをご紹介し、最後に私の感想をまとめてみたいと思います。

ここから先は

1,360字

¥ 300

この記事が参加している募集

最近の学び