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フラット35リノベ金利Aプラン

① 前段

「新築やりません」と宣言(2018年)して早くも5年経ちました。その間、コロナ禍があったり、新築のご相談あってもお断りしたり、いろいろ厳しいこともありました。

ではその間、新築やらずに何をやっていたかというと、個人宅のリノベーションや、空き家活用のためのプロデュースなどこれまでのスキルを生かした活動をやってました。

その中でも、個人宅のリノベーションで印象深いものがあったので紹介します。ただ、紹介といってもそのお宅の出来栄えをお見せするのではなく、タイトルにある「フラット35リノベ金利Aプラン」についてです。

② フラット35リノベとは?

住宅の所得を考えたとき、多くの方は住宅ローンを組まれると思います。大きく分けて融資の形には二つの選択肢があります。

まず一つ目が変動金利タイプ、そしてフラット35を含む固定金利タイプ。中でもフラット35はその名の通り長期間(最長35年間)金利の固定が選べる融資商品です。最近ではフラット50なるものも登場したようです。

③ フラット35リノベ

フラット35の中にもいくつか種類があり、紹介するのはフラット35リノベという商品です。詳細は↓にありますが簡単に説明すると「中古住宅の購入資金」と「リフォーム費用」をセットで申し込めるようになってます。

基本的には、物件購入とリフォーム費用がセットになっているという認識でいいのですが、フラット35リノベサイトの切り抜きで説明します。

フラット35リノベの種類

ここで2つのタイプに分かれます。❶の方がまず中古住宅を購入しリフォームを行うタイプ、❷の方はすでに不動産屋さんや住宅会社などがリフォームを済ませているものを購入するというタイプ。

それぞれのシチュエーションとしては、❶の場合気に入った地域に中古住宅を見つけた、ただそのままでは自分たちの暮らしにマッチしない。だから、その中古住宅を購入して好きなようにリフォームする。

これは戸建て住宅をイメージしていますが、分譲マンションなどの集合住宅でも利用できます。とにかく、物件購入の後でリフォームをするというパターンです。

❷の方は、中古住宅をあらかじめ住宅会社等がリフォームしていて、住まう地域とその建物が気に入った場合、リフォーム済みなのですぐに入居でき、手続き上も比較的楽にできるパターンです。

お金の動きとしての違いは、❶は中古住宅購入代金は中古住宅の売主(現所有者)に渡し、リフォーム代金はリフォーム会社等へ支払うことになり、❷の場合だと、代金の支払い先は売主(現所有者/不動産屋・住宅会社等)のみで良いということになります。

ここまでみると❶の方が面倒そうですよね。たまたま❷が使える物件と出会えれば迷わずそれを選べばいいと思いますが、暮らしたい地域内で出会える確率は高くはない、そこで❶を選ばざるえないとなるわけです。

④ 金利のタイプがリフォームの仕様の違いでで2つ?

①のパターンを選ばざるえないことが多いのですが、その中でも今回のタイトルにある金利の違う2つのタイプが準備されています。金利Aタイプと金利Bタイプです。

2つの金利タイプ、金利の引下げ割合が違う

この表にもあるように、金利引下げ期間はどちらも5年ですが、引下げ割合が違うのです。具体的な数字でその差額を計算したのが↓になります。

一般のフラット35より随分割り引かれます。

金利AタイプとBタイプではほぼ倍の差が生まれています。この80万円の違いをどうみるかでしょうが、その分性能アップも見込めるし、その分返済負担を減らすこともできます。いずれにしても、金利Aタイプがいいのは明白ですよね。

⑤ 衝撃の事実を知る!

ということで、今回のお宅で起きた衝撃の出来事をご紹介します。今回のご依頼は、中古住宅を購入予定、その住宅のリフォームをうちにお願いしたいというもの。

そもそも、うちへ辿り着かれる前に、仲介された不動産会社さんや紹介された住宅会社さんへも同様の相談をされていたようです。

ところが、相談の先々で「いやこれは解体して新築した方がいいですよ」と言われ続けたとのこと。古いものを使い続けることに価値を感じるクライアントだったので、業界のそんな反応に正直がっかりしていたとのことでした。

そんな中、うちへ問合せしたところ「新築はやってません」とか「リノベーションに力入れてます」という回答に感動したそうです。築36年といえば建築基準法的にも十分補強できるレベルです。

それを調べもせず解体して新築をあっさり斡旋する業界はほんとやばいと思いますが、衝撃はこの件ではありませんでした。

とにかく喜んでリノベーションに関する契約を締結し、早速現場調査とそれに伴う計画概要を整理。耐震補強及び温熱環境の整備を含めた、フルリノベーションで行くことになりました。

住宅ローンを使われるとのことでしたので、どんなローン商品かと尋ねるとフラット35をご検討とのこと。であれば、金利優遇のあるフラット35リノベを使い、耐震化を条件とする金利Aタイプを採用しましょうと。

基礎の補修と土間コン打設が済んだところ

早速、担当金融機関へフラット35リノベ金利Aタイプの申込み手続きをと思い連絡をすると・・・

「ほんとにAタイプですか?Bタイプの間違いじゃないですか?」

いいえ、Aタイプですよと伝えると「大丈夫なんですか、あんなに古い住宅のリフォームでAが取れるんですか?」と、真面目に返事が返ってきました。

事情を聞いてみると、その金融機関では全国的にも金利Aタイプを使ったことがない、いつも床の高さがクリアできないから今回もダメだろうと、そもそも考えもしなかったそうです。

他の条件ならまだしも、床高さなんてフルリノベであれば高くすることだってできるという認識だったのですが、そんなことできるということを知らなかったようでした。

一応、僕からの解説で金融機関はAタイプでの手続きを進めてくれました。次は、今回の計画がリノベの後でAタイプの条件に適合しているかどうかを審査してもらう必要があります。

いわゆる適合検査なのですが、それを依頼すべく審査法人へ事前問い合わせを入れてみました。

「ほんとにAタイプですか?Bタイプの間違いじゃないですか?」

どっかで聞いた返事です。そう、審査法人でもAタイプの適合審査をやったことがなかったのです。誰もが知ってるフラット35の中の金融商品なのに、それをやったことがないというのです。

⑥ フラット35リノベの審査の流れ|要件整理

業界全体の当たり前にめちゃくちゃびっくりしたのですが、その審査法人へ手続きをお願いしました。ただ、検査法人側もあまり要領を得てないようなので、こちらで流れを作って共有しました。

まずは、ざっくりフラット35リノベの要件をみてみましょう。

金利Aタイプと金利Bタイプ

金利Aタイプの場合は下記1と下記3をクリアし、Bタイプの場合は下記2と下記3をクリアする必要があると。

下記1金利Aタイプの要件

確かに、築古住宅でこの条件をクリアするのは、そのままあるいはちょっとしたリフォームではまず無理でしょう。ただし、スケルトンまで考えるフルリノベであればクリアすることは可能です。

今回は、耐震性の中の耐震等級2以上の住宅ということで手続きを進めました。ほかの項目もフルリノベの中で改善するところなので、選択としてはありでしたが、耐震化が一番手続き的に楽と考えました。

下記2金利Bタイプの要件

ずいぶん緩い条件になっています。金融機関に聞いたらバリアフリー性で金利Bタイプを使うことがほとんどとの事。

下記3|維持管理要件

そしてAもBもクリアしなければならない維持管理に関する要件です。これもどの要件でも良かったのですが、瑕疵保険の付保等が一番手軽だったのでこれで進めました。

要件整理すると金利Aタイプであり

  • 耐震性(耐震等級2以上の住宅)

  • 瑕疵保険の付保等

ということになります。瑕疵保険の方は保証法人へ登録し検査受ければ大丈夫です。問題は耐震等級2以上をどう証明するかということでした。

⑦ フラット35リノベの審査の流れ|要件の証明

ここで一つ、フラット35リノベのバグが見つかりました。それは各要件の証明方法です。どういうことかというと、フラットリノベには設計審査が存在せず(フラット35の新築タイプでは設計審査があります)、要件通りのものかどうか計画段階では確認できないということ。

工事をした後で現地検査となるので、何か工事中にミスがあったら、最悪現場検査不合格ということもあり得るという設定になっていました。これはめちゃ困りますよね。

要件確認は②と⑤のタイミング

まず最初の確認のタイミングは②の工事前確認です。ここで何をみるかというと、その中古住宅がそもそもフラット35(先出のリノベ要件ではない)の要件を満たしているかという審査で内容は簡単なもの。

床の高さが地盤から40cm以上あるかとか、床下換気口の数や小屋裏換気口の設置状況などです。たいした基準ではないのですが、築古になると引っ掛かるものも出てきます。

床高さ基準確認、ギリクリアしてますが改修します
改修後、土間コンクリート設けてそこから50cm以上確保

こんな感じで、フルリノベであれば大抵の基準はクリアできるのです。ここまでで、②の事前確認(リフォーム工事前の状態)は済んだことになります。この段階で不適合があったとしても、リフォームでそこを改修しクリアすればいいのです。

しかし、この床高さみたいに実際測定できるものはいいですが、耐震等級2以上である住宅をどうやって検査するのか?検査法人に聞いてみますがよくわからないので、社内で検討してみますとのこと。

俄かに信じがたい回答でしたが、それがフラット35リノベ金利Aタイプの実情みたいです。ただただ、社内検討を待っていてもあれなんでこちらは粛々と作業を進めました。

⑧ 審査に向けて準備したこと

今回は耐震等級2以上である住宅要件なので、それをクリアしていることを証明しなければなりません。なのでまずは耐震補強設計を進めました。

フルリノベでスケルトンにするので、補強もしようと思えばかなり実施することは可能です。ただしバランスも大事なので設計で確認していきました。

必要耐力・偏心率共に狙い通り

耐震補強設計の結果上部構造評点は2.47、耐震等級という言葉は新築の場合だけで使われるものであり、リフォームの場合は上部構造評点という表現になります。この辺りも、フラット35リノベのバグってるところですね。

一般的に、上部構造評点が1.5を超えると耐震等級3相当であるといわれています。今回の補強設計では評点が2.47となり十分耐震等級2以上になってると判断できました。

ここまで確認できたので、その旨審査法人へ連絡しその補強設計内容を事前確認の補助資料として提出しました。

⑨ 審査実行とその方法

この時の打ち合わせで、この耐震補強内容+そのほかの要件を図面に表現し、現場ではその設計内容にて工事を進めましょうということに。

フラット35リノベでは存在しない設計審査(的なもの)をはめ込んで、工事完了の⑤の時に現場と工事管理写真にて審査しようということになりました。

工事中の補強状況写真

今回は、耐震性を要件として組み込みましたが、これ省エネ性とかを要件とすると現場検査どうするんだろうととても不思議になりました。このフラット35リノベ、実務的には見直しポイントが結構ありそうです。

ただ、耐震性でいく場合はこのnoteにある内容でクリアできるはずですので参考にして頂ければ何より。

⑩ 現場審査とその結果(おまけ)

現場検査も当然合格し融資実行。喜びの中で無事に引き渡すことができました。そして竣工写真はこちらです。

玄関アプローチ|洗い出しと木製建具(網戸付き)
玄関ホール|靴箱前のタイル土間は裸足でOK
LDK|杉材とラワン材そして紙障子
子供室|左手がベッド・窓際はヌック・右手スタディボックス

最後までご覧いただきありがとうございました。もし、このフラット35リノベ金利Aタイプについて質問などありましたら、ドシドシコメント下さい。より詳細にということであればオンラインでの説明も可能ですので、その際は↓より申し込みください。

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