大宮戦の備忘録

スタメン

前半

 442と3421のミスマッチ勝負、立ち上がりにそれを有効に利用したのは大宮。3バックと2CHの3-2ビルドアップでの横へ大きな展開から、システムの噛み合わせ上フリーになりやすい大外のWBを伺う形を何度か見せる。

 大宮の狙いとしては大外への展開から、シャドーもしくはCHをハーフスペースの低い位置にポジショニングさせて岡山の第二ラインの選手を引っ張り出してから、そのスペースの裏を取ろうとする形。

 特に前半は大宮の右サイドでその傾向が多く、大外で右WBの奥井がボールを持ったときにシャドーが右ハーフスペースの低い位置に落ちて、シャドーが右CHの大山を絡めながらボールを動かして、右サイドからハーフスペースを匂わせつつボールを高い位置に運ぶ形を作ろうとしていた。

 しかし20分頃から岡山もSBが中に絞ってスペースをケアしたり、SHが下がり気味のポジションを取って大外からの展開をケアしたりする動きをすることで、大宮の攻撃をスピードダウンさせることに成功していた。

 一方で岡山の攻撃は、ヨンジェと斎藤をサイドに流してロングボールを入れてからの起点となる形を大宮にほとんど封じられていた。大宮の最終ラインのラインコントロールがなかなか良く、抜け出そうとしたところで何度もオフサイドを取られていた。前半でオフサイド4つは多い。

 大宮の守備は541(523)というよりは532のような役割を果たしていることが多かった。ある程度岡山の最終ラインでのボール保持は自由にさせる代わりに、第二ラインを3枚にすることで中央へ絞ってくる仲間や久保田への噛み合わせをハッキリさせて、中へのパスを封じて最終ラインからダイレクトな展開を強いさせる。

 実は20分以降、岡山はボールを持つことができる時間は比較的多かったのだが、前述の形から大宮のブロックの外から後ろで動かしているだけの時間が長く、ジョンウォンや田中から仕方なくロングボールを入れて跳ね返される形が多くなってしまっていた。

 岡山もFWと縦に入れ替わってSHが抜け出しを試みるような工夫を見せるものの、大宮の全体の守備ブロックが広げられていないのでなかなか上手く行くことが少なかった。大宮のブロックがコンパクトなのでロングボールを入れてからのセカンドボールもなかなか拾うことができず。ブロックの中に入った仲間が打開する形が見られたが、単発止まりでチャンスを作るまでに至らなかった。

後半

 後半立ち上がりも前半同様、前線の動き出しが5バックに捕まえられている岡山。しかし仲間が外に開いて受けてから仕掛けてみたり、SBが前半よりも高い位置を取って大宮のWBを牽制してみたりとブロック打開のための工夫を見せる。それがあってかどうか、徐々にブロックの中にボールを入れられるようになる。

 一方の大宮、前半は右サイドでのボール循環が多かったが、後半は左サイドからのボール循環を多くしていた。大まかな狙いとしては前半と変わらず、左サイドから酒井、大山、大前でボールを動かしながら進めていく。大宮も大外の酒井がインナーラップを仕掛けてみたり、大前とのワンツーでカットインしてみたりと工夫を見せる。

 両者の膠着状態打開の工夫が先に実った(?)のは岡山。福元投入で斎藤が右SHに入った直後、上田の縦パスから抜け出した仲間が打開してクロス、こぼれ球を斎藤が詰めて先制に成功する。

 この得点の流れが2回のブロックの中に入れた縦パスから起こっている。特に2本目の関戸から福元に入れようとした縦パス、そのセカンドボールに対して福元がプレッシャーをかけてヨンジェが拾ってボールを前に運ぶことで大宮のブロックを押し下げることに成功したことから生まれた得点と言っても良い。

 失点した大宮は選手交代策で事態の打開を図る。バブンスキー、小島、シモビッチをそれぞれ投入。システムも442に変更。

 442にしても大宮の攻撃の狙い自体は変わらず。サイドのミスマッチからハーフスペースを経由して侵攻していこうとする。特に左SBに入った河面とバブンスキーの左サイドから小島を絡めて押し込んでいこうとする形が多く見られた。

 一方で岡山も下口を投入してサイドの守備強化、さらにシモビッチ投入を見るや増田を投入して541に変更してに逃げ切り策に打って出る。前節どっちつかずの展開になってしまったことの反省を早速実行している。

 結論から言うと、両者の交代・システム変更策が実ったのは大宮の方だった。岡山が541に変更して前からのプレッシャーがかからなくなったことで大宮はCB2枚でビルドアップを行うことができるように。これによって両SBが高い位置を取ることができるようになって、結果として大宮のサイド攻撃を活性化させることになってしまう。大宮の1点目は高い位置を取った河面のクロスから生まれている。

 さらにサイドに流れる傾向にあったファンマと違ってシモビッチはゴール前に陣取ることが多く、これによって岡山の最終ラインもなかなか押し上げることが難しくなり、セカンドボールはことごとく大宮が拾うことになってしまった。2014年のドログバを思い起こさせるシモビッチ。

 逃げ切りの策を打ったことでかえって大宮の圧力をモロに受ける形となってしまった岡山。結果として前節と同じような展開となって、終盤に決壊する形となってしまった。

雑感

・結果としては守備固めの采配を打ったのが不味かったということになるのだろうが、あそこでああいう采配をするのは理に適ってはいると思う。

・守りに入って圧力をただ受けるだけになってしまうのではなく、「どこを埋めれば相手は嫌がるのか」というような駆け引きを意識できるようになれるかどうか。アグレッシブに逃げ切る。

・それよりもチームとして目指す形をほとんど大宮に出すことが出来なかったことの方が敗因としては正しいと思う。出そうとはしていたが。攻撃は言わずもがな。442守備もセットは安定して中を崩されることはほとんどなかったが、本来やりたいであろうコースを追いこんで前で奪う形もあまり見ることができなかった。

・この段階で課題がたくさん出るのは良いこと。ピッチで起きる様々な事象に対する感度が高いように見受けられる(ちょっと高すぎ?)な有馬監督なので一つずつ潰していくことに期待します。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?