町田戦の備忘録-2周目-

 勝負事だから負けることはあります。でも、いざここからラストスパートだ!という時期にこういう負け方をするのは正直厳しいです。なぜこういうことになったのか、強い気持ちで振り返ってみたいと思います。

前回対戦

 前回対戦の記事はこちら。

スタメン

岡山のゲームプランとはなんだったのか

 ロングボールをサイド奥に入れる⇒陣形をボールサイドに圧縮させてセカンドボールを回収⇒高い位置まで運んでセットプレーを獲得ないしはニアゾーン(ペナ内のボールサイド方面のハーフスペースだと解釈しています)からクロスを入れる、というのが町田のボール保持における基本プラン。ボール保持率・パス数にこだわりの無いチームにボール保持という言葉を使うのも何かとは思うが、この試合でも開始からそういうプランに則ってロングボールを入れていた。

 一方の岡山も立ち上がり10分辺りまでは、その町田のやり方に合わせた形でゲームを進めていたように見受けられた。意図的に密集を作ってくる相手に対して、まずは密集でセカンドボールを回収するところからゲームの主導権を掴んでいきたい、という意図を感じた立ち上がり。密集でセカンドボールを回収した後のトランジションはオープンサイドに素早く展開するというのが前回対戦の岡山であったが、この試合では町田のロングボールのターゲットが右サイド奥(岡山にとっては左サイド)が多かったことと、右SHが上田であったということもあり、オープンサイドへの横の展開というよりは、町田の最終ラインの背後をダイレクトにヨンジェや山本に狙わせる縦に速い展開が多い立ち上がりとなっていた。

 なぜそういうことになっていたのか。左利きの上田が右SHに入っていると、中を向いてプレーした時に縦パスを出しやすい。6:17、中央でセカンドボールを回収した上田から山本に縦パスを入れてそこから仲間のドリブルでCKを獲得したシーンは、第三のCH(偽SH)の役割を与えられているであろう上田の良さを活かせた展開であった。

 このように、立ち上がり10分ほどは両者ともに、ボールサイドの密集から縦に速くボールを前進させてセットプレーからゴール前に迫る展開が多かった。

 立ち上がりの10分を過ぎたあたりから岡山がボール保持の色合いを強めていく。CB(濱田・ジョンウォン)がダイレクトに放り込むというよりはショートパスを使って町田の出方をうかがう振る舞いを見せていた。自分たちは町田とは違うんだ、ということで相手の土俵でゲームを進めるのではなく自分たちの土俵に町田を引き込もうとしたのだろう。

 岡山としては、442ゾーンでセットする町田のボール非保持時に対して横への展開を増やすことで、岡山横展開増やす⇒町田に横スライドを強要⇒横ズレした部分から中にパスを通して前進させていきたい意図があったのだろう。13:15からのシーンでは、左サイドで回収したボールを右SBの田中まで広げ、中央で空いた喜山から再び左サイドの仲間に展開する形からボール前進に成功した。①まずは密集でのセカンドボール合戦に競り勝つ⇒②そこからこういうシーンを増やしていくのが有馬監督のゲームプランだったのだろう。

時間と共に曖昧になっていく岡山のプラン

 前述したように町田のボール非保持時は442ゾーン。第一ライン~最終ラインまでの3ライン間をコンパクトにして中央を閉じて、ボールサイドへのスライドを徹底する。14:15の田中⇒上田へのパスに対して佐野が詰めに行ってカットからのトランジションというシーンに代表されるが、10分以降の岡山のボール保持に対して、ハーフスペースでビルドアップの出口になろうとする上田と仲間に対して最終ラインの選手(特にSBの奥山・佐野)はかなり意識してボールを入れさせないようにしていた。仮にボールが入ったとしてもSH(平戸・森村)を中心に素早くプレスバックすることで展開を許さない。
 そして岡山がヨンジェや山本をターゲットに前線へロングボールを入れた場合でも、CB(小林・藤井)がほとんど空中戦に勝っていた。

 つまり前述した有馬監督の考えたゲームプランはほとんど上手く行っていなかった、というのが現状であった。時間の経過につれて岡山のボール保持時の振る舞いが、後方から運んでいきたい(地上戦メイン)なのかダイレクトに蹴っていきたい(空中戦メイン)なのかが曖昧になっていた。もちろん悪い意味で。
地上戦にしては町田のライン間を使う意図が乏しく(特に第一ラインの背後を使う意識が低かった)、中央への展開を町田に意識させられないので町田の442を広げる形を作れない。空中戦にしてはセカンドボール隊の人数が整っておらず、蹴ってからのセカンドボールを回収できない。困ったときの仲間とヨンジェの質的優位を活かそうにも、仲間にはボールがなかなか入らず、ヨンジェはそもそも小林とのマッチアップで質的優位になっていなかった。

 このように徐々に曖昧になっていく岡山のボール保持時の展開に対して、20分辺りから町田は第一ライン(中島・土居)からのプレッシャーを強めていく。CBにはもちろん一森にもプレッシャーをかけることもあり、岡山に意図しないロングボールが増えるようになると、陣形のコンパクトさもあってセカンドボールを町田が拾う頻度がきわめて高くなっていく。セカンドボール回収からの縦トランジションでゾーン3まで運んでいく町田に対して有効な止め方を見付けられない岡山であった。

 そして26:45からの町田の先制シーン、町田の左サイドスローインからセカンドボールをロメロフランク(以下フランク)が回収⇒土居のポストから逆サイドオーバーラップしてきた奥山に展開⇒奥山ペナ内に侵入~森村、平戸と経由して平戸がゴール。
    岡山は、流れの中でトランジション対応で町田に後手を踏んでいたが、そのままスローインからのトランジションでも後手を踏んでしまう形となってしまった。

 先制されてからの岡山のボール保持時の曖昧さは全く変わらず、後ろでボールを動かしても第二ライン(主に喜山・関戸)から縦に展開できる形が作れない。我慢できずに中盤が下がりすぎて町田の第一ラインを引き出せない⇒結局最終ラインから前線にダイレクトに放り込む⇒町田CBに跳ね返される展開が多かった。その後のセカンドボールも町田にほとんど回収されており、仮に岡山が回収しても、町田の素早いネガトラによって簡単にマイボールにできない状態となってしまっていた。岡山は中途半端に選手間の距離が広がっており、町田の陣形を広げられない上にセカンドボールを拾えないという悪循環に陥っていた。

 逆に言うと町田は、岡山が無理に前にボールを入れた所を潰してそこから早い縦トランジションの攻撃をしていくことでボールを敵陣に運ぶことができていた。442の陣形を無理に崩すことなく前進できていたので、ネガトラ時もスムーズに移行することができていた。密集⇒セカンドボール合戦の展開が多かった立ち上がりは五分五分も、終わってみれば町田の会心の内容だった前半ではないだろうか。

曖昧さの末路は最悪手

    後半立ち上がりの岡山は再びロングボールメインとする形に戻したようだった。ただ前線をターゲットにするロングボールというよりは、町田のSBの背後にヨンジェと山本を走らせる意図を感じるロングボール。まずは町田の442を縦に広げて、そこから主導権を奪い返そうとしたかったのだろう。一森が最近にしては珍しく迷わず前線目掛けて蹴っていたのが印象的。これに対して町田はCBがしっかり付いていくことと、リハンジェを中心に第二ラインがプレスバックやカバーリングを徹底することで対応。岡山の思惑に反して、町田は縦に間延びすることなく守っていた。

    50分を過ぎると前半同様にセカンドボールを町田が回収する頻度が高くなる。後半になってからの岡山のボール保持時はサイドへのロングボールが増えて、セカンドボール隊としてSB(田中・椋原)が高いポジショニングを取ることが多くなっていたので、町田は岡山のSBの背後をシンプルに使う攻撃が増えていた。SB(佐野・奥山)が起点となり、早めに前線に当てて前進を図って思惑通りにゾーン3~ペナ内に侵入、セットプレーの機会を増やしていく町田であった。一方で岡山は56分に、アクシデントで仲間→三村の交代となってしまう。セカンドボールが回収できず、質的優位を使える選手が代わってしまったのはかなり厳しい情勢。

    62分に岡山は上田をCH、関戸を右SHにポジションチェンジ。さらに65分には山本→中野とカードを切る岡山。上下動の運動量のある関戸をセカンドボール隊に加え、上田を砲台役に充てて、セカンドボールでゴチャついたところで背後を中野で狙うのかと思ったのだが、CBとCHの4枚は一旦後方でボールを落ち着けようとしているようであった。一方SHとSBはビルドアップのヘルプに入るのではなく、ロングボールからのセカンドボールを待っているようでどうにもボール保持時の曖昧さが後半も拭えない岡山であった。

    そして65:55~、町田に2点目が入る。これもスローイン後のトランジションから。セカンドボールをフランクが競った後、森村に対して全く有効なプレッシャーがかからずにあっさりドリブルで運ばれペナ内で中島のシュートを許し、こぼれ球を森村が詰めてゴール。トランジションがあまりにあっさり過ぎてもう…。

    0-2となったあとの岡山、シンプルに蹴ったところで町田のハイラインを保つ最終ラインの前にオフサイドにされるだけだと、一度ボール保持して落ち着けたい後方(CBとCH)に対して、早くゴールに迫らないといけないと町田の最終ラインに張り付く形となってしまう前線。そしてどちらに付くべきかはっきりしないSHとSB。結果、間延びした状態で無理に縦にボールをいれようとしてパスミスが増える、対町田に対しての最悪手を取ることになってしまった。

    間延びした岡山に対して町田は、セカンドボール回収⇒即時縦トランジション攻撃で岡山ゴールに迫り続ける。この試合で良く見られた流れであったが、その中で効いていたのが小林・藤井のCBとリハンジェの中央3枚。町田はここで潰すことで岡山の展開を封じることができており、攻撃で持ち味を発揮するCHの一角であるフランクを高いポジションに置いて攻撃することができていた。

    74:17からの町田の3点目の流れはまさに象徴的な流れ。ジョンウォンの放り込みに対して佐野がセカンドボールを回収~ドライブでペナ内まで侵入、平戸のクロス⇒フランクは一度クリアされるも、このセカンドボールを小林が回収してフランクに縦パス⇒フランクが自ら決めて試合を終わらせた。

    その後77分にヨンジェ→赤嶺でターゲットを明確にして放り込みに走る岡山だったが、特に町田を焦らせる展開はなかった。岡山は、21:30のヨンジェのヘッド以降決定機はおろか満足にシュートの形を作ることができないゲームとなってしまった。

雑感

・2試合連続のクリーンシート、そしてこの試合では3得点と、ほぼ完璧なゲームを演じた町田。本文でも触れたようにCBとCHの中央4枚が非常に固く、ボールサイドへのプレッシャーの強度、そこからのトランジション攻撃を含めて、遅ればせながら良かった頃の町田を思い出したようである。これからも平戸に祈り続けて、どうか上位陣を喰いまくってくださいお願いします。

・まごうことなき今季ワーストゲームをしてしまった岡山。何がワーストって、攻撃で相手のどこを狙うのか、そのためにどういう攻撃をしていくのかという意図が非常に曖昧だったところ。442ゾーンでボールサイドをコンパクトにしている相手に対してSBを起点に横に広げていくといった今季やっていたはずの工夫がほとんど見られず、非効率なボール保持に終始。正直昨季や一昨季を思い出させるようなゲームだったように思う。

・前述のようにSBを起点にした横への展開を増やして町田の横スライドを増やして終盤疲弊してオープンになったところを突くとか、あえて町田のロングボール⇒密集の土俵に上がり続けて球際勝負に徹底するとか、ベストの出来だった町田相手でもやりようは十分にあったはず。有馬監督は球際勝負と横展開の良いとこ取りをしようとしたが、結果的にどっち付かずで曖昧なゲームプランになってしまったのかなと思う。

・試合後のコメントを見る限り、問題点はチーム内で共有できているように見える。挽回のチャンスは後12試合ある。


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