見出し画像

母の巻き寿司

2月3日節分
お寿司屋さんはもちろん、
とんかつ屋、焼き鳥屋、いろんな店でありとあらゆる恵方巻きが並んでいる。

母のちらし寿司や巻き寿司は美味しくて、私の夫や息子らも大好きだ。

私が実家から埼玉に帰るとき、久しぶりに巻き寿司を作ってくれた。
正確には、自宅に帰る私に持たせてやるように、父の執念が母に作らせたというところか。

帰る日にちは何度も言ったのだが、

「え?あんた今日帰るん?」
と驚きの表情で言う。

私は母が巻き寿司を最後までコンプリートできるかどうか心配だった。

「わかこ(私のこと)に持って帰らしたるんやろ〜」父の一声でスイッチが入った母だ。

出汁をとり、椎茸、干瓢、高野豆腐を煮る。
卵を焼いて、焼穴子をほんのり焼きなおす。
ちくわときゅうりを切り、
すべてを切り揃えて、
七種の具材をパットにずらりと並べた。

「手伝おうか?」
と声をかけても
結構ですと言う。
座って休憩しながらやるからと。

私はおそうじウーマンとしてやり残したことがあったので、そちらに集中。

次にキッチンを覗いたら、寿司桶にツヤツヤご飯が盛られて、母がどんどんお寿司を巻いていた。

おお巻き寿司が完成してる。
父がパットの高野豆腐をつまみ食いして、つまみ食いにあらずというほどに食べて、怒られている。
父も大好きなその巻き寿司としょうが漬けをパックに詰めた。
我が家の夕食だ。

巻き寿司は私が切ったので切り口がきれいじゃないが、味は変わらぬ美味しさだった。

母に習ったことはある巻き寿司だが、自宅で作ったことはない。
こんなおいしい海苔やら穴子が手に入らへんから、を言い訳にしている。
今はまだ母の巻き寿司を食べたい。

次はちらし寿司を作ってもらおうかな。
母の認知障害を認識してちょうど一年になる。
巻き寿司を持たせてもらってバイバイだ。
がんばりまっさと父が控えめに笑っている。
「頑張るぞ、オーッ!」
とこぶしを衝きあげ、掛け声したら、
「オオーッ!」
と母が猪木並みのダァーッを見せてくれた。

福はうち、鬼もうち。
なんでもこい。
かかってきなさいの心境だ。
今年も頑張れますように。
今日で53歳、節分生まれです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?