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起業の天才!―江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男

星⭐️⭐️⭐️⭐️
【書評】『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』

起業家としての才能と疑獄事件の責任者としての罪。その両面を持つ人物、江副浩正の生涯を描いたノンフィクションです。著者の大西康之氏は、リクルートの元社員や関係者、江副夫人、そしてジェフ・ベゾスなど、多くの人々に取材を行い、江副の人となりや経営哲学、事件の真相などを明らかにしています。

本書の魅力は、江副の起業家としての偉業と、事件の背景にある社会的な問題を、バランスよく描いていることです。江副は、インターネット時代を先取りし、日本型の経営を打破し、自分では気づいていない才能を持つ社員のモチベーションを高めることで、リクルートという「グーグルのような会社」を作り上げました。その過程で、読売新聞や電通などの巨大な権力と対立し、独自のクラウドコンピューティングやコンピューターネットワークを開発し、世界のコンピューターの天才を集めるなど、驚くべき挑戦を繰り返しました。しかし、その一方で、彼は政治家や官僚に株を売って影響力を得ようとし、戦後最大の企業犯罪「リクルート事件」の主犯となりました。その結果、彼は逮捕され、リクルートは1兆8000億円の負債を抱えることになりました。

本書は、江副を単に賞賛するのでもなく、非難するのでもなく、彼の行動の背景にある思想や理念、そして社会的な状況を分析しています。江副は、日本の資本主義が社会主義的で非効率的だと考え、本当の資本主義に基づいた経営を目指しました。しかし、そのためには、日本の政治やメディアとの癒着が必要だとも考えました。その矛盾が、彼の天才と悪の両面を生み出したのです。本書は、江副の人生を通して、日本の経済や社会の歴史を振り返り、現在の問題や課題にも示唆を与えてくれます。

江副浩正の経営哲学とは、彼がリクルートの創業者として実践した、人材の活用と組織の活性化に基づくビジネスの考え方です。彼は、既存のものにとらわれず、常に新しいやり方を模索し、イノベーションを起こすことを目指しました。また、社員に自分の意志で考えて行動させ、才能や可能性を引き出すことに努めました。彼は、心理学の知識を活かして、人を惹きつけてモチベートする技術を持っていました。彼の経営哲学は、リクルートの成長の要因となり、多くの人に影響を与えました。

江副浩正が起こしたイノベーションとは、以下のようなものです。

- 求人広告の革新:大学新卒者向けの「企業への招待」を発行し、無料で配布することで、就職活動の情報格差を解消し、企業と学生のマッチングを効率化しました。
- 情報誌の多角化:不動産、旅行、転職、結婚など、様々なライフステージに関する情報誌を刊行し、消費者のニーズに応えるとともに、広告主にも新たな市場を提供しました。
- インターネットの先駆者:インターネットが普及する前から、コンピューターネットワークやクラウドコンピューティングの開発に取り組み、米国のベンチャー企業を買収するなど、グローバルな視野でイノベーションを目指しました。
- 人材育成の支援:返済不要の奨学金制度やオペラの興行団体を設立するなど、自らの経験に基づいて、若い世代の教育や文化に貢献しました。

本書は、起業家や経営者、ビジネスマンはもちろん、日本の歴史や社会に興味のある人にもおすすめです。江副の生き様は、読者に多くの感動や驚き、そして考えるきっかけを与えてくれるでしょう。本書は、歴史から葬られた「起業の天才」の真の姿を、見事に描き出した傑作です。

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