旅のラゴス

筒井康隆の小説「旅のラゴス」を読んだ。数年前に一度読んだものの、内容がうろ覚えだったため再読した。
タイトルの通り、主人公のラゴスが世界中を旅する物語である。ファンタジーな要素があり、強く念じることで思い描いた場所にワープすることができる転移や壁をすり抜ける人物も登場する。そんな世界を旅しつつ、ある場所では奴隷とされて働かされたり、またある場所では一国の王となるなど、様々な人や出来事に遭遇する物語となっている。
ラゴスは有能な人物で、銀鉱で奴隷にされた際、採掘の効率化を提案することで奴隷使用人からの信頼を勝ち取り、出世をするなどしている。また、ある村では、過去の文献を読んで、その時点では知られていなかったコーヒーの作り方を普及させて村を王国にまで発展させている。それだけでなく、本人が意図しないところで王様にまで担ぎあげられてしまう。
こんなように数十年に及ぶラゴスの旅を追体験できるのがこの小説の大きな魅力だと感じる。特に二回目に奴隷として捕らえられたシーンが好みだった。奴隷商人は治安の良い都市でラゴスを売ろうとしたが、当然奴隷など規制されているような都市であるため買い手が付かず、最終的に売ろうとした人物がラゴスの身内であったため、罰せられてしまった。奴隷というシビアな題材にも関わらず、ウィットに富んでいるというか、つい読んでいて笑みがこぼれてしまった。
また王国で文献を読み漁ったシーンでは、政治や歴史、経済、科学など、多岐にわたって学習をしている。ここではどの分野から読むことが効率が良いか、ラゴスが考察しており、これは何かを学ぶ際の参考になるなと感じた。これは筒井康隆さんの知性を感じるシーンである。
以前読んだ時から記憶が薄れて覚えていない部分もあったが、読んでいて思い出してくるシーンも多くあった。個人的には今まで読んだ小説の中でもトップ5に入るくらいには好きな小説である。 

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