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私のマーチンギター遍歴


 私の初めてのマーチンは1980年製のD28。
お茶の水のシモクラセカンドハウスで購入した。1998年8月のことだ。
 アコースティックギターの弾き語りのバックサウンドを担う中で、ライブ活動においては取り回しのよいエレアコが常套手段であり、それまではオベイション・レジェンド1617を愛用していた。しかし、オベイションの音色はどこか人工的であり、アコースティックサウンドというよりオベイション・サウンドになってしまうことから、狭まれたサウンドという印象があった。
 それならば、アコースティックギターを中学生から弾いてきて、やはり一度はマーチンかギブソンのフラットトップのギターを手にしたいという欲求が爆発し、購入に至ったのである。
そしてそのトリガーを引いたのは、拓郎や陽水のレコード、クラプトンのアンプラグドを聴いたからではなく、音楽仲間の弾くアコースティックギター(ヤマハやマーチン)の美しい響きだったのだ。
間近で聴くマーチンの豊潤なサウンド。オベイションでは絶対出せない深みのある音。木が共鳴する鈴のような響きが私の心に共鳴したのだ。彼の奏でるマーチンD28の響きはアルペジオもストロークも私の心を動かした。
となると、居ても立っても居られなくなりマーチンを探す日々。
当時の現行マーチンではなく、彼のD28と同様にネックにスクエアロッドが埋め込まれた時代のモデルを探していた。
 お茶の水の楽器屋を何件か探し回り、1980年製のD28を発見。表板は弾き傷がかなり多かったが、試奏した時に何本か弾いた中で一番鳴っていたもの選択。サンライズのピックアップも装着されており即戦力だったので、購入に至った。このギターは本当に良く鳴ったギターで2014年にD45を購入するためにトレードに出してしまったが、本当は残しておきたかったギターであった。ペグは1980年からシャーラ製にモデル変更となったが、このペグは非常に高性能で、狂いが殆どなかった。そこも高評価の理由。

 2本目のマーチンは1979年製のD18。お茶の水Hobo’sで購入。2004年8月。
 アコギの音をバンドサウンドの中でも埋もれないようにするにはマホガニーボディ系のアコースティックギターが必要と考えギブソンを物色していたが、J45もJ50もあまり良い個体を見つけることができなかった。そこで、マーチンD18である。
ギブソンとの大きな違いは胴の厚さ。わずかな胴の厚さの差でも出音の深みがこんなに違うものかと思うほどである。
 しかしこの個体は購入から1年半で3本目のマーチンへトレード。

 3本目のマーチンは1978年製のD19。お茶の水Wood manで購入。2006年3月。
ふらっと立ち寄った楽器屋に展示されていたD19。D19はD18をベースに表板がサテンフィニッシュされておりD18の上位機種の位置付けで、1977年から1988年までしか生産されていなかったモデル。音もD18と比べると中音域の伸びがあった。
そして、私が生まれて初めて弾いたマーチンが小室等さんのD19だったのだ。
 高校生の頃に小室等さんと吉田拓郎さんのラジオの公開生放送でいきなり弾き語りをやらされたのだが(これはこれで凄いこと!全国オンエアですぜ!)、その時に貸して頂いたギターがD19。滅多に中古市場でも出てこないそんな思い出深いギターを発見してしまったので、直ぐにD18をトレードに出して購入に至った。
 そして、しばらくはD28とD19でライブやレコーディングをこなしていた。ローズウッドもマホガニーもあれば鬼に金棒というもの。
しかし、自分の好みのアコースティックサウンドというものがどんどん確立していった時に、自分の中でマホガニーサウンドは少々物足りなさを感じていたのだ。お腹にズドンと来るサウンドが欲しいと思い、D28をもう一本購入することを考え始めた。
また、音楽活動をしている相方がD35を購入したことも新たにギターを購入したいと思った理由の一つだった。
 そのD35の音は素晴らしく、バランスの取れた中にもパワーもあり、非常にベストなサウンド。1973年製。
 私もD35を購入しようかと思ったくらいだったが一つだけ躊躇した理由として、ネックとヘッドの間のボリュートが無いこと。そんな些細なことか?と思われるかもしれないが、D28を弾いた時に感じたあのボリュートのデザインは私の中ではマーチンの重要なアイコンになっていたのだ。
だからD19を手放す理由の一つはマホガニーボディだったこと、そして、もう一つはボリュートが無かったこと、になる。

 4本目のマーチンは1976年製のD28。お茶の水Blue-Gで購入。2011年10月。
この頃はインターネットの環境も整い始め、都内の楽器屋の在庫状況がPCで確認することが容易に出来るようになった。だから70年代のD28の在庫状況は常に頭の中に入っており、暇があれば試奏しに行くという日々。
 購入したD28もネットに掲載され2時間後には訪問、購入したものだった。
1981年のD28と比べるとドンシャリ感は大きいが、高音の伸びは1976年のD28に軍配が上がるといった感じ。同じ構造のモデルでも全然キャラクターの違った音が出るところに生の楽器の面白さもあるというもの。

手前が'76年製、後が'81年製

 そして、5本目のマーチンはD45と相成る。
インターネットの普及により、簡単に在庫状況がわかるようになったことは、購買意欲が直ぐに購入に直結することもある。
ましてやマーチンプレイヤーなら一度は憧れるD45。ネット画面をじーっと眺めているとなんだか買えそうな気になって来るところがもう既に狂っている。
そう、D45なんてモデルはある程度狂っていないと購入できないもので、そんなお化けのようなモデルが一堂に4本も同じ店に登場したのだから、これに行かないでどうする!というもの。
・・・1981年のD28を泣く泣くトレードに出して1975年のD45を神保町リムショットで購入。2014年6月。
(このギターの購入については、当ブログの「マーチンD45」にありますのでそちらを参照願います)

 現在はD45(1975)とD28(1976)の2本。ベストな状態。
他に欲しいアコギは無い。しいて言うなら、サブギター代わりに70年代のD45がもう一本あってもいいかと思う。SQネックなら近年ものでもいいかなな・・・。

ネックで反っていなくて、チューニングが狂わないチューナーが付いていて、表板が波打っていなくて、フレット音痴でないもので、手ごろな価格・・・そんなのあるか!?

2021年8月3日
花形

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