友達の賞味期限

・・・・・ある日の放課後・・・・・

美菜 ねえねえ! さっちー!

桜茅 なに?みぃ

この子は佐々木美菜:ささきみいな。私(蔵田桜茅:くらたさち)の幼稚園からの幼なじみ。今日はなんの話題をもってきたんだか。

美菜 さっちー、友達の賞味期限って知ってる?

桜茅 は?賞味って味でしょ?友達って味とかあんの?

美菜 そうじゃなくって!
なんかね、ずっと一緒にいる友達だといつか
冷めて、離れたくなっちゃう みたいなことを
言うんだって

桜茅 ふぅーん で、それどこ情報?

美菜 えっとね、友達情報!

桜茅 あっそう

美菜 なんか興味なさそう……

桜茅 無いもん

美菜 ひどい!
でもさ、うちらはそんなのきっとないよね!

桜茅 どーだか
未来のことは誰にもわからんでしょ

美菜 もう…ツンデレめ!

桜茅 いや、ツンデレじゃないから!

美菜 え〜

でも私もその通りだと思った。みぃといると楽しい、これまでにケンカしたこともない。だから私たちには無縁な言葉。そう思ってた。あの時までは……

美菜 さちのすけ! あのねぇ〜

桜茅 みぃ、その呼び方やめて。 前も言わなかったけ?

美菜 そうだっけ?でもさ、さっちーにピッタリな
あだ名だと思うんだよね、さちのすけって。
ってかなんで嫌なの?

桜茅 男子にからかわれたらめんどくさいでしょ。
もうそう呼ぶのやめて。

美菜 え〜 これから呼んでいこうと思ってたのに〜

桜茅 はぁ……

ほんとに困ったものだった。どうやらみぃは私のことをなんでも許してくれる人間だと思ってるみたいだった。正直、みぃには呆れていた。思えばこれがきっかけだったのかもしれない。

・・・・・1ヶ月後・・・・・

美菜 さっちのすけ〜!!

桜茅 みぃ、その呼び方やめてって何度も
言ってるよね?いい加減やめてくれない?

美菜 さちのすけ、こわ〜い

桜茅 怖いもなにも……
人がやめてって言ってるんだから、
素直にやめてくれればいいじゃん。

美菜 でも〜 私、この呼び方気に入ってるし〜

桜茅 そういう問題じゃなくて……

美菜 いいじゃん、減るもんじゃないし

桜茅 はぁ……
だから……
って、あれ、みぃどっか行ったし……
人の話は最後まで聞けって……

この時私は正直ムカついていた。なんで自分中心で考えるのだろう、人の気持ちを考えないのだろうと…

・・・・・次の日・・・・・

美菜 ねえねえ さちのすけ?

桜茅 だからその呼び方……

美菜 ん?

桜茅 はぁ…… もういいよ……

美菜 ? どうかした?

桜茅 なんでもない。で、何?

美菜 彼氏ほしい!

桜茅 は?

美菜 彼氏ほしくない!?

桜茅 私は別にいらないけど

美菜 なんでさ!?

桜茅 1人の時間がほしいから

美菜 おっとな〜

桜茅 じゃ、もういいでしょ

美菜 冷たい! まだ聞いてよぉ〜

桜茅 私、人の恋愛話、好きじゃないんだけど

美菜 聞くだけでいいから!ね!

桜茅 いやそれg……

美菜 うちね!理想が!

桜茅 人の話は最後まd……

美菜 やっぱ、かっこいい人がいいよね!
そんでもって、高身長で、優しくて……

桜茅 はぁ……
見つかるといいですねー

美菜 棒!? ひどい!
でもさ、いつかは出来るでしょ!
それでね……

いつまで話すんだろうと思っていた。みぃの自己中心的な話にはもう懲り懲りだった。私が話す隙なんかない。ただ聞いて相づちをうつだけ。いつの間にかみぃとの会話はつまらないものに変わっていた。

その時、私は気づいた。そうか、これが友達の賞味期限というものか… と。あの頃はこの言葉の意味なんてよくわかっていなかった。私たちには縁がないものだと思っていたから。でも今は、痛いほどわかっている。

キーンコーンカーンコーン

美菜 やば!チャイムなっちゃった!席戻らなきゃ!

桜茅 𓈒𓂂𓏸ああ。やっと話終わったか。
まあ、内容はあんまり覚えていないけど。

もう美菜と話すのには懲り懲りだった。だから私はみぃと縁を切るつもりだった。

・・・・・放課後・・・・・

美菜 どうしたの?さっちーから話なんて珍しいね!

桜茅 あのさ!

言葉が出なかった。「友達を辞めたい」そう言えばいいだけなのに。その一言が出てきてくれなかった。

美菜 ん?

私はバカだった。この幼稚園からの絆をたやすく切るなんて出来なかった。みぃはなんて純粋な目をしているんだろう、そう思った。昔からわかっていたことじゃないか。みぃは人の心を考えてないわけじゃない。場を和らげようとしてくれているんだ。

美菜 どうしたの?さっちー

桜茅 みぃ……
ごめん、なんでもないや

美菜 そう?

桜茅 うん。
…… みぃ
私、わかったことがあるよ

美菜 何?

桜茅 私たちに「友達の賞味期限」って言葉はないね!

美菜 うん! そうだよ!

「友達の賞味期限」この言葉は私に考えるきっかけをくれた。食品の賞味期限は味が悪くなる期限。完全に食べれないのは消費期限。友達で当てはめれば、賞味期限は縁を切るか友達ことをよく考える期限。消費期限は完全に縁を切る期限なんだ。
私は賞味期限で悩み、食べることにした。間違っていなかったと思う。だって、今でも私は元気だから。

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