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連載小説 奪われし者の強き刃      第3章1話 「復帰 政府からの調査依頼」

悠が目覚めてから2か月が経過した。悠は驚異的回復力で怪我を完治し、リハビリも完了したが念のため前線には出ずに後方支援に努めていた。

 氷室:
 「あれ?彩音、悠はどうした。パトロールか?」

この日は悠にある報告をしに氷室が第1の基地へとやってきていた。

 彩音:
 「いえ、私も詳しくは知らないのですが何やら上層部部に呼び出させたらしく。」

 氷室:
 「あの爺さんたちの所か。大丈夫かな?」

その頃悠は、総理官邸の会議室にいた。会議室には梅谷総理に草薙総司令さらには、防衛大臣や環境大臣など各大臣が勢ぞろいしており、悠を囲うように座っていた。

 総理:
 「今日は急に呼び出して悪いな、第1師団長殿。怪我の具合はいいのか?」

 悠:
 「はい、すでに完治しております。うちの治療班は優秀ですので。」

 総理:
 「そうか。ではまず、今回の陸王討伐の件よくやってくれた。皆の代表として礼を言うありがとう。」

 悠:
 「ありがとうございます。他3師団の師団長の手助けあってこそです。」

 千代:
 「本当に快挙よ。敵幹部の三王の一角をおとせたのは大きいわ。でも、あなたにも多大な代償を負わせたわね。」

 悠:
 「総司令が気にしないでください。たったの2年です。何十万、何百万という市民の一生に比べれば軽いものですよ。」

 防衛大臣:
 「その通りです。」

すかさず声を上げたのは長年防衛大臣を務めてきた大臣である紫宮心太郎(しみやしんたろう)。新師団長の育成と称して悠に非人道的な訓練させていた張本人だ。

 防衛大臣:
 「その子の言う通りです。その子の存在意義は魔物から市民を守り、魔物を殲滅すること。それなのに、市民のピンチにたかが自分の命の損失を気にするようじゃ最強の地位にある第1師団長失格ですよ。そうだろう第1師団長殿。」

紫宮防衛大臣は悠の方を見てにやりと不敵な笑みを浮かべた。

 総理:
 「少し言葉を慎んでいただこうか、紫宮防衛大臣。」

紫宮防衛大臣が梅谷総理の方に目をやると、梅谷総理は紫宮防衛大臣のことを睨みつけていた。

 総理:
 「あなたは最初の侵攻の際にここ東部の市民を守るために多大な功績を残し、市民の皆様から多くの信頼と支持を得た。だが、私たちはあなたが第1師団長殿にしたことを許したわけではないぞ。」

梅谷総理の発言によりその場の空気がピりついた。だがその直後、紫宮防衛大臣は悪びれる様子もなく

 防衛大臣:
 「またその話ですか。確かにあれはやりすぎたかもしれませんが、おかげでここ東部の魔物被害が大幅に減ったのも事実でしょう。それに、今までのやり方じゃ被害が減らないのは他の師団長で実証済みでしょう。だったらもっと強くなるように育てるのは必然です。」

 防衛大臣:
 「私だって鬼ではありません。彼がやめてと言えばやめるつもりでしたよ。ですが、彼はやめてとは一言も言っていない。何の問題もありません。」

 千代:
 「それはあなたが彼の心に漬け込んで!・・・。」

 悠:
 「紫宮防衛大臣。」

草薙総司令は紫宮防衛大臣に反論しようと椅子から立ち上がった。その時、悠が草薙総司令の発言を遮るように言葉を発した。

 悠:
 「あなたが自分に施した訓練のおかげで東部の皆様を守ることができたのも、『夜行』たちを使えるようになったのも事実です。ですので、自分はあなたを恨むつもりはありません。ですが・・・。」

 防衛大臣:
 「?」

 悠:
 「他の師団長を侮辱した発言は取り下げていただきたい。彼ら彼女らも突然未知の相手と戦わされて現在まで勇敢に戦ってきた。今回の戦いも2・3・4師団長の助けがなかったら勝てるかどうかも怪しかった。そんな人たちのことを馬鹿にするのはいくらあなたでも許しません。だから、彼ら彼女らを侮辱した発言は取り下げていただきたい。いや、取り下げろ。」

悠は紫宮防衛大臣に向かって気を抜けば気絶してしまうほどの威圧感を放った。

 防衛大臣:
 「ふん。育ての親同然である私に向かって反論か。ずいぶんと立派になったもんだ。いいだろう、先程の発言は取り消そう。」
 
 悠:
 「ありがとうございます。総理本日の本題をお願いいたします。」

 総理:
 「あぁ、そうだな。本日君を呼んだのはある仕事を依頼したいからなんだ。」

 悠:
 「ある仕事?」

 総司令:
 「そのことについては私から説明させてもらうわ。」

 総司令:
 「あなたに受けてもらう依頼は陸王の領地だったと思われる場所の調査よ。」

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