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終末期の迎え方 点滴は必要? 

90代後半の男性患者さん、家族からはとても大事にされているおじいちゃんでした。急性期病院では治療が必要なくなり慢性期病院の当院へ転院されてきました。
食事は何とか取れるものの言語聴覚士【ST】さんからは嚥下障害があるため
誤嚥の危険が高いと判断されていました。
家族は何とか口から食べさせることを希望されたため、刻み食にし誤嚥に注意しながら食事介助していました。
本人はあまり食事を欲しがらずなかなか口をあけてくれないことも多く、食事は半分食べられれば良いほうでした。
そのうちやはり誤嚥したのか発熱し、食事は中止になりました。

家族は食事ができないなら点滴をしてほしいと希望しました。
最初は血管から点滴をしていましたが、だんだん点滴のできる血管はなくなり血管からの点滴はできなくなりました。
それでも点滴はしてほしいと家族が希望されたため皮下注射に変更。
1日500mlの点滴を皮下からやっていました。

皮下点滴に変更して1か月半。どんどん痩せて骨と皮だけになって行く姿をみているとこれで良いのだろうか、本人はこれを望んでいるのだろうかと思ってしまいました。現にほとんど言葉を発しなくなっていたのに点滴の時に一度だけ「もうやめてくれ。」と言ったのです。

終末期の患者さんでも家族が希望して点滴をすることはよくあります。
でも終末期の点滴は悲惨です。確かに1~2か月は生き延びることができますが骨と皮になり顔つきもかわります。それを見ている家族も辛くなります。たぶん家族はそんなつもりではなく、点滴ぐらいはしてあげたほうが良いのではと良かれと思ってしていることなんです。

動物は食べられなくなったら寿命です。人間も動物。
昔は食べられるだけのもので過ごして寿命を迎えるのが自然でした。
昭和中期くらいまでは家で看取ることも多く、私の祖父母はみんな自宅で家族に看取られました。間際まで話すことができて静かに逝きました。

現代はほとんどの人が病院で死を迎え医療が介入しています。
そして自然な死を迎えることが困難になっています。
本当は治療方針は医療者側と患者家族がきちんと信頼を築いたうえで説明し、理解していただいて決めていくことが必要なんだと思います。
でも今の医療業界でここまでしている医師は少ない。そして食べれなかったら点滴をするのがあたりまえと思っている看護師も多いです。

だから医者から言われたからとか、みんなやっているからで治療をきめるのは危険。どうしたいかを決めるのは患者側です。そのためには日頃から自分の頭で考える、情報を取ることが必要だと思っています。

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