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ナオコについて

中学のときの同級生にナオコという女の子がいました。モデルのように美人で、中1とは思えないほど飛び抜けて大人びていて、最後のほうに学校を休んでいた時期がありました。妊娠していたと噂されました。

私とは別次元の美しい女の子。髪は透き通るような薄めの茶色でサラサラのストレートボブでした。近くを通るだけでいい匂いがしそうなくらい魅力的な髪でした。

私が中学くらいのときは不良はいっぱいいました。不良がいるのは当たり前の時代でした。ナオコは不良にグループ分けされる子でした。普通は不良は怖いのであまり近寄ったことはありません。近寄られたらビクビクしていました。

100円とかカツアゲされたこともあります。「なぁ、貸して。返すから」と言われて渡しましたが「返して」なんて言えるはずはないからあれはカツアゲです。

でもナオコはなんていうか、普通の子供ではなかったです。誰かに嫌がらせとかするようなこともなく、周りの子とは明らかに違う空気を醸し出していました。いつも一人で、同級生からは少し遠巻きに見られ、一目置かれ、軽やかに踊るように歩いていた印象です。

そのナオコについてこんな噂がありました。

〇〇(都会の街の名前)でナオコって名前を出せば、誰でも知ってるらしい。

〇〇は電車で40分くらいの場所でしたが、当時の私からするとよくわからない怖そうな遠くの街でした。ヤクザとかもいっぱいいるイメージ。

そんなところでナオコの名前を誰もが知っている。ナオコのヤバさを感じました。やっぱりナオコは違う。私たちとは住む世界が違う。そう思ったものです。

生きている世界が小さかったなぁと思います。その時代の中学生ってちょっとかわいらしいです。今はネット社会なのでいろんな情報が入ってきて、中学生にもなると、そんなまさかの噂を信じないように思います。でもあの頃は本気でナオコって都会でも有名人だと思っていましたね。

ナオコとは大人になってから地元のレストランで会ったことがあります。おそらくお母さんと、ご自分のお子さんと3人で来ていました。

すぐに「あ、ナオコだ」と気付きました。

あちらは私のことをたぶん、知らないでしょう。不良は目立つけど、一般人は不良からは認識もされていない場合が多いです。

ナオコは変わらず美しくて、とても大人になっていました。お母さんもモデルのように美人らしいと聞いていましたが、やはりきれいな方でした。

中学のときはね、ナオコに話しかける勇気なんてなかったけど、今なら同窓会とかがあれば話しかけてみたいです。

ナオコってどんな子なんだろうね。


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