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「君の声が聴きたい」

ネットだけで繋がったあなたに何度もそう言われた。

世界中につながるネットの世界、ほつれた糸のように人と人が絡みあった世界。毎日ネットのどこかで誰かと誰かが出会っている。

あなたと繋がったのも、その糸のどこかの一点だったんだろう。

ほどけないようにと互いに丁寧に温めてきた。言葉を尽くして気持ちを語り、文章でだけ囁きあった。もろくて細い糸を手繰りよせながら二人の時間を確かめあった。


「君の声が聴きたい」

そう言われて、私は戸惑う。

私はこうやって文章で語りあう時間が好きだしあなたの声を求めるつもりはない。「このままでいようよ」と思っているのに、あなたはここで会うと必ず私に言うんだ。

「君の声が聴きたい」

「私の声なんて、そんなに美しくないよ」って言ってみたり、「私の声は海の魔物に奪われました」とかごまかしてみたり、そんなふうにあなたの願いをゆるりとかわしているけれど、あなたの「君の声が聴きたい」はやまない。


ねぇ、きれいなままでいようよ。

文章だけの世界で私たちは愛しあったんだから、生身の二人はいらないんだよ。柔らかく私たちを覆うぼやけた光の中で、文字で愛を語りあおうよ。


私はね、

あなたの私への愛を信じてないんだよ。

私はね、

あなたのすべてを愛せる自信があるんだけどね。


あなたの「君の声が聴きたい」に心が疼く。

私も本当は、

「あなたの声が聴きたい」

でも言えないよ。だって私があなたの声を手に入れたら、私は代わりにあなたに私の声を差し出さなきゃいけないから。


人は誰かを愛してしまうと「もっと」を求めてしまう。

私が文字の次にあなたに声を差し出したら、あなたは次にまた何かを求めるだろう。

私はいつも夢見るんだよ。

新しい何かを差し出したときに、ふとあなたの表情が曇るのを。あなたが描く私と違う何かをあなたが私の中に見つけてしまう瞬間を。

それが怖いんだ。

ごめんね。弱虫で。

だけど今日も抱きしめて。

思いつく限りのあまく優しい言葉で私を抱きしめてね。



お気持ち嬉しいです。ありがとうございます✨