戦略的モラトリアム【大学生活編④】

日付 6月某日 梅雨はどこへ?

常夏の楽園ベイベー


東北では感じたことのないような暑さが僕を襲った。ジリジリと照りつける太陽とネトッと絡み付く湿気。そして、時折やって来るゲリラ豪雨。

大学の初体験の他にもこんなにも未体験があったとは……。それはそれで楽しいことなのだが。ごった返すような大人数の講義、教室移動で軽い運動と、耳にはお気に入りの音楽で毎日を埋めていった。そして、こんな社会不適合の自分にも仲間のようなものができた。同じゼミのメンバーだ。

大野さん
→社会人をしてから入学したにもかかわらず、留年していて二回目の一年生。どことなく無気力で遠い目で軽い絶望を感じながら生きているような印象。一番年上の21歳で、一番自分と話が合う。そりゃバカみたいなハシャギはできない落ち着きで、ある程度冷めた目で講義に出ていた。思慮深い訳ではないが、自分のことを興味の対象として見ていた。


まぁ、高校中退で、大検取得からの専門学校。そして大学進学なんて、そうそう経験できるものじゃないし、一般人からしたら希少種だろう。
地元だとこんな人間は珍獣を見るかのごとく、檻の中に入れられ、陰口の対象になっていたのに。
ここでは一人の人として興味を持たれている。

それが素直にとても嬉しい。

大野さんは授業の手の抜きかたや、楽に単位が取れる講義を教えてくれた。

対照的に自分は興味のある講義を片っ端から履修していたため、授業が楽だとか辛いとか、そんなことを考える余裕はなく、毎日忙しなく頭を動かしていた。何百年も前にタイムスリップをしたり、世界中を飛び回ったり。自分の頭は毎日いろんな所に行っていた。

ただ、そんな毎日がとてつもなく楽しかった。

ある日、大野さんが自分に話しかけてきた。
「そんなに授業詰め込んで辛くないか?」

少し考え込むと、自分は半笑いで

「大変だけど楽しいですよ。今までの分、もっと頭を動かした方が自分にはいいんです。興味のあることなら何でもやってみる4年間にしたいと思ってます。少なくとも自分は大野さんより社会に揉まれてないから、少しくらい辛いめにあったって、覚悟してますよ」

「そんな奴見たことないわ。すげぇな」

「別に努力家とか良い子ちゃんしたいわけじゃなくて、本当に今が楽しいだけなんだよ。たぶん変わってるんだろうけど」

「本当に変わってるよお前w」

「自分もそう思いますw」


そんな調子で、お互いに関心をもつようになり、大野さんとはすぐに仲の良い友人になった。

彼は昨年とは違い、講義に真面目に取り組むようになったらしい。

自分につられたのかな?と、少し自惚れに近い気持ちがあったことはいうまでもない。

そして、自分のモラトリアムが少しずつ当初の考えから変化してきていることに僕はまだ気づいていない。

福島県のどこかに住んでいます。 震災後、幾多の出会いと別れを繰り返しながら何とか生きています。最近、震災直後のことを文字として残しておこうと考えました。あのとき決して報道されることのなかった真実の出来事を。 愛読書《about a boy》