「寝る」
(……眠い)
机にノートを広げ、肩肘をつきながらとろんとした目で黒板を眺める。先生が何か説明しているようだが、頭半分、いや三分の一で聞いている私には到底理解できない話だ。
本日の一限は数学。普段なら例え前日何時に寝ようとも授業が始まると、だんだん頭がさえてくる。得意教科である数学の授業となればなおさらだ。なのに今日はまったくそうならなかった。
(おかしいな……昨日十一時には寝たのに)
何とか一限は乗り切ったが、二限である英語の授業では――
「では次の人」
「ちょっと! 次だよ、起きて!」
「え? あ、寝てた! 今どこ!?」
……という事態となってしまった。
「まずい、これはまずい」
「なにがー?」
「いや、実は……」
お昼を食べているとやってきた友達に今日のいきさつを話す。
「え、普通じゃない? ボーっとしちゃうことくらい」
「……そうだよね! 良かった。体調悪いのかと思った」
「あはは、大げさだよ」
「そうだ、朝もらったクッキー、美味しかったよ」
「喜んでもらえたなら良かった。もう一ついる?」
「じゃあもらう。ありがとう」
クッキーを受け取り、そのまま口に含む。
「あれ?」
なんか急に眠く……。
先程話していた彼女の声がかすかに聞こえた。
「これ食べて眠くならない方がおかしいよ」
(!?)
それってどういう――
疑問は言葉にならず、考える頭も停止する。
「おやすみ。しばらく寝ていてもらうわ」
瞼が急激に重くなり、暗闇に落ちて……。
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