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★映画鑑賞note:「2人のローマ教皇」(2019)


「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」に続き、昨年1月に映画館で2回見て、主演のジョナサン・プライスの演技に、すっかり魅了されてしまった映画です。Netflix作品で、アカデミー賞候補にもなっていて、あらすじや概略は方々で語られていてよく知られていると思うので、割愛します。(詳しいあらすじはWikipediaをご参照ください)

前から感想を書こうと思っていたのですが、もう一回見てから。。。と思っていたら、Netflixの無料視聴キャンペーンで公開されていて、このお正月休みに、ゆっくり見ることができました:-)  ※このnoteを書く前にもう一度確認しながら見よう、と悠長なことを考えていたら、もう無料視聴からは外れてしまったようです😭(1/12現在)DVD&ブルーレイ化希望!!

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2人のローマ教皇、どちらも心に残る台詞が多くて感心しましたが、特に現教皇のフランシスコの話はグッときました。1970年代、アルゼンチンが軍隊による独裁政権に支配されて、それに反対する人々が拷問を受けて殺されていた頃に、貧しい人々のための施設を開いていた友人の牧師たちや、拘束されてしまった娘を取り戻すために、抗議デモに参加して逮捕されてしまった元上司を救えなかったと、苦悩する場面や、それをベネディクト16世に告白する場面が特に印象的でした。

対するベネディクト16世も、バチカンのスキャンダル(司祭による児童性的虐待事件)に関することで、罪を犯した聖職者を裁くことなく、赦しを与えてしまったことに対しての後悔を告白し、2人がお互いに赦しを与えます。教皇といえども苦悩するし後悔することもある、confession(告解)とabsolution(赦し)の物語。

上記のフランシスコの回想シーンなど、シリアスなシーンもありますが、全体的にはユーモアたっぷり、2人の名優の会話劇を楽しむ感じです。脇役の教皇のアシスタント(?)を務める男性たちや、シスターたちも、穏やかでいい感じの人々で、見た後ほっこり暖かい気分になります。フィクションとしてのキャラクターでしょうが、教皇たちが、ファンタ飲んでピザを食べたり、ビール片手にテレビでワールドカップの観戦をしたり、タンゴ踊ったり、普通の人と何ら変わりないことをしている場面が素敵でした。(ピアノを弾いてる場面は、アンソニー・ホプキンスが実際に弾いているようで、あのシーンの自然で楽しげな感じに納得)

英語、スペイン語、イタリア語、ラテン語が飛び交ってて、英語以外のラテン系の言葉の響きが新鮮でした。(フランシスコのスペイン語は吹き替えだそうですが)ウェールズ人俳優2人が話すイタリア語が何だか気に入ってしまいました。特にフランシスコのバチカンでの最初の演説のシーンの、「ボナセーラ」(こんばんは)が可愛かったです。

映像もとても美しく、バチカンからの許可が下りなかったため、セットで再現されたというシスティーナ礼拝堂や、若きベルゴリオ(フランシスコ)が、風が吹き荒れるごつごつした山の上で遠くを眺めるシーン、冒頭のベネディクトが滞在するガンドルフ城の庭園など、なかなか圧巻です。自然の音(鳥の鳴き声や雨の音、雷の音など)が効果的に使われていて、ABBAやBeatlesの曲をクラシカルにアレンジした軽快なBGMと共に、粋な演出だと思いました。教会の内部や、コンクラーヴェでの枢機卿たちの鮮やかな赤と白の衣装など、キリスト教の儀式にあまり馴染みのない日本人としては、いろいろと興味津々でした。


★映画を見ながら書き出そうと思っていた、印象に残った台詞がこちら。シンプルで力強い言葉たち。(IMDbのQuatesを参考に、書き出してみました。カッコ内は拙訳):

・"It is our weakness that calls forth the grace of God. You show your weakness, He gives us strength." (私たちの弱さが神のご加護をもたらす。あなたが弱さを示したなら、神はあなたに力を与えてくれる)
・"Confession cleans the sinner's soul, it doesn't help the victim.” (告解は罪人の魂を洗い流してくれるが、犠牲者は助からない)
・"Sin is a wound, not a stain. It needs to be treated, healed. Forgiveness is not enough." (罪は染みではなく、傷である。手当てして、治療しないといけない。「赦し」だけでは不十分だ)
・"We need bridges, not walls." (私たちは壁を作るのではなく、橋を架ける必要がある)
・"Remind you that truth may be vital, but without love, it is unbearable" <ベネディクトの著書の言葉>(真実は極めて重要だが、愛なしでは耐えがたいということを、心に留めておきなさい)

👼

2人の教皇の言葉の力もあって、見た後、ポジティヴな気持ちになれる映画です。悩んだり落ち込んでいるときに見ると、いろいろ力を与えてくれる作品。(そして無性にピザが食べたくなります/笑)アカデミー賞は逃してしまって残念でしたが、もっともっと多くの人に見てもらいたいです。