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倉敷とガブリエルと

先週末、倉敷の美観地区を見てきたのですが、なんだかんだバタバタとしてそのままに。

でも忘れてしまうのはもったいないので、おぼろげな記憶ながら書いてみます。

その日は、昼には倉敷を後にする予定だったので、ホテルをとっととチェックアウトして、朝から散策に行きました。

いざ美観地区へ。

はじめに出迎えてくれたのは、街の偉い重鎮、とかではなく、

白鳥でした。

川をスイスイ泳ぐ白鳥

白鳥、久しぶりに見ましたが、やはり美しいものですね。同じ白い鳥といっても、家の近所にいるサギたちとは一味違います。

いや、もちろんサギもかわいらしくていいんですよ。でも、白い肌(羽ではなく敢えて肌といいたい)の艶感と、澄み切った純白の美しさは、白鳥独特なのです。

白鳥たちによって、その空間ぜんぶが清められているような感じがしました。

さて、次に迎えてくれたのは、ひとでした。笑

人力車のお兄さんで、"道案内だけでもしますんで"と押し切られ、とりあえず話は聞いてみることに。

観光王道コースを教えてくれた後、
"よかったらそのコース走るんで(人力車で)"
と詰めてくるお兄さん。

そんな彼に取り急ぎお礼を伝え、
私の方が走って逃げました笑

そうこうしていると、道に迷ってしまい、
うろうろしてると大原美術館につきました。

これは著名な主に西洋絵画がたくさん飾られている、有名なところです。

入場料は高かったですが折角なので入ってみることに。

昔は、というか、ほんの少し前まで、美術館に来てもどうやって絵を楽しんだらいいのか、イマイチ掴めてなかったのですが、肩の力を抜いて自由に思いをめぐらせてみたら案外楽しいものなんだなと、最近はそういう境地に至っています。

"このりんご意外と小さいな"とか"この瓶はお酒かな"かなとか大分どうでもいいことを考えてるうちに、ふと核心的な疑問に行き当たったりします。

それをまた気負わず考えているうちに、突如自分のなかにひらめきが降りてきて、そういうことか、とその作品が愛おしくなったり楽しくなったりするものです。

まあ、大抵は、どうでもいい疑問のままで終わるんですけどね笑

さて、いちばんのお気に入りは、エル・グレコの「受胎告知」でした。


後で売店でポストカードを購入しました。


例にもれず、この絵についても、妄想しながら鑑賞してみました。

調べたところ、この絵は
神の使いの大天使ガブリエルが、聖書を読んでいるマリアに、彼女が神の子を身ごもったことを告げる
場面を描いたものらしい。

だがキリスト教信者でない私には別様に見えてならない。

まず、ガブリエルは、商魂たくましいセールスマンで、健康食品か何かをマリアのもとに売りつけにきたのだ。

マリアは、たまの日曜日、大好きな購読雑誌でも読んで、穏やかでスウィートな昼下がり、となる予定だったのに、予期しない来客に水を差されてしまった。

だから、ちょっと不機嫌に、
"いや、私、こう見えても、健康食品とか頼らないタイプなんで"
と冷たくあしらうマリア。

ガブリエルもやり手のセールスマンとして、
負けるわけにはいかない。
"こちらはですね、90%以上のお客様にリピートされており、昨年の品評会で、健康食品部門において最優秀賞を受賞した、効果が認定された商品になっております。店頭では欠品状態が続いているほどご好評をいただいております。まずは1週間のお試しパックでその効果をご確認ください。"
とガブリエル。

"へえ、そんな大人気で入手困難な商品にお目にかかれるなんて、今日の私はとても幸運ですね"
と睨むマリア。

"もちろんです。この商品を使えば、そんな幸運なあなたに、より一層の幸運が舞い込んでくるでしょう。"
とニコニコのガブリエル。

そんな風に妄想をはじめたら、もはやそうとしか見えてこない。マリアとガブリエルとのやり取りに潜む不穏さは、絵画の醸し出すドラマチック感と符合するではないか。

マリアにはどうか押し切り型訪問販売に屈してほしくないし、とは言えガブリエルにも図々しく粘って欲しいものだ。だから双方それぞれエールを送ったところで、私はひとりほくそ笑んだ。こんなくだらない想像をしているのはこの場に何人いるだろう。ふと周り見渡せば真剣な顔つきで絵をじっと見つめる人ばかりだった。

ひとしきり楽しんだところで美観地区の観光再開。
柳の垂れる澄んだ川。それに沿って立ち並ぶ風情あるたくさんのお店。景色を楽しみながら存分に買い物ができました。

柳の垂れる川




大分楽しんだところで、ある人に声をかけられました。
普段着にリュックを背負ったおじさまで、この地区の主的な様相を漂わせていました。

おじさまはちょっと押しの強い感じで、
"観光するなら歴史もちゃんと学んでから来なさい"
とか
"倉敷〇〇って書かれたお店で買い物して観光した気になるな"
とか多々貴重なお叱りを頂きました。笑

こういう方々に出会うのも旅の醍醐味です。

おじさまには、また
"観光するならまずは街を上から見渡してみなさい"
とのアドバイスをいただいたので、

それから山の上の神社まで登り、
街を見渡してみました。

見晴らしがよくてとてもよかったのですが、
なにせ方向音痴なのでそれ以上の感慨を抱けないのが、恨めしいところです。

街へと下っていくと、またそのおじさまに遭遇し、
おじさまは人生の苦労について滔々と語ってくれました。そして最後にこう言い残しました。

"男は手のひらで転がすものだぞ"

"どういう去り際やねん"と心密かにツッコミ、
親切なおじさまに別れを告げました。

あ、そうそう、そのおじさまは、リュックの肩紐がぐるぐるしていたので、"リュックぐるくるおじさん"と命名したのは、ここだけの秘密でお願いします。

それから、店の並びに桃太郎のからくり博物館という場所があったのですが、時間的に立ち寄れなかったのが心の残りです。

でもその分、どんな展示があったんだろうな、と想像して楽しめるので、これはこれでよかったのかもしれません。

桃太郎のからくり博物館


そんなこんなで、倉敷の美観地区の旅行記でした。

また行きたいなー。






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